「免疫が落ちてきている」第8波懸念される中、専門家組織・脇田座長が語る“いまやるべきこと”とは?

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「いわゆる第8波の可能性もある」

加藤厚労相は17日、厚労省に対策を助言する専門家組織「アドバイザリーボード」との会合で冒頭、こう指摘。更に脇田座長も「年内にも流行のピークが来る可能性がある」と述べ、ピーク後も感染者の下げ止まりが続き、医療への負担が高まる事態に懸念を示した。

アドバイザリーボードでの加藤厚労相と脇田所長(17日)
アドバイザリーボードでの加藤厚労相と脇田所長(17日)

いつになったら平穏な日常が戻ってくるのか。

現在、国立感染症研究所のトップであり「アドバイザリーボード」の座長として、これまで国の感染拡大抑止の第一線で活躍されている、脇田隆字所長にこれまで抱いてきたコロナに関する疑問を率直に聞いた。

前編では、脇田所長が“第8波”についてやインフルとの同時流行の可能性、10月から始まった乳幼児向けのワクチンなどについて答える。

“第8波”懸念も「年中行事」「免疫力低下」

16日午後、全国の感染者数が2日連続10万人を超えたこと受け、日本医師会は「第8波に入った」とし、危機感を示した。専門家からも再び感染流行の発言が相次ぐ中、現在の状況はどのような段階にあるのだろうか。

「非常に難しい段階にあると思います。これまではそうは言っても、人の接触はかなり抑えられていました。夜間の滞留人口で見ると、2019年(コロナ前)と比べると、東京でも9月10月で4割くらい夜間の人出が少ない。

2020年の夏頃に、やはり繁華街の接触はクラスター感染を起こしやすいということが認識され、夜飲みに行く回数を減らしたり、そういった控える行動に繋がっていたと思います。

ただ、それが今ここにきて、当然のことですが、やっぱり動きたい、旅行にも行きたいと。さらに旅先では色々な活動をしたいわけです。しかし、そうすることで、人と人の接触は増えてきてリスクになる。

そして、普段会わないような人と接触する機会が増える“年中行事”というのがやはり重要なポイントになります。人の接触という意味では非常に制御が難しいのです」

さらに、“非常に難しい段階”という背景にはある事情が関係しているという。

(イメージ)
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「実は免疫に関しては、今すごく落ちてきているという情報があります。ですので、ここはワクチン接種を進めて免疫を高めていかないといけない。

新型コロナウイルス感染症の場合、ワクチンでも自然感染でも、得られた免疫が時間とともに低下していくことがわかっています。

日本でワクチン接種が重要な理由は、世界、特に欧米と比べるとこれまで感染が少ないのです。欧米だと、7割8割、少なくとも5割以上の国民がすでに感染しているという状況なので、自然に感染して、免疫ができている。

一方で、日本はまだ2割とか3割。そんな中、どうやって免疫をつけますかと言えば、ワクチン接種を進めることが重要になってくるということです」

オミクロン株でも「免疫がなければ重症度はそれほど下がっていない」

オミクロン株になってから感染力は強まった一方、病原性が低くなった印象を受ける。ただ、脇田所長はワクチンの重要さとともに、警戒を呼び掛ける。

「ワクチン接種の重要性を示す例として、オミクロン株が流行した香港では、日本と異なるワクチン接種行動をしているのです。

日本と違いお年寄りがあまりワクチンを打っていない。その結果、オミクロン株に感染して非常に多くの方が亡くなっているという現実があります。

ですから、オミクロン株で『重症度が減る、低くなった』という風に思われている方は多いと思いますが、実は免疫のない状態で感染するとそこまで重症度は下がっていないことがわかっています。

これまで感染したことがなく、またワクチン未接種で感染するとオミクロン株の重症度はデルタ株の半分程度とも言われていますけど、感染力が圧倒的に高いので、流行が拡大して感染者が増えれば、当然亡くなる方、重症になる方も増えていくということになります」

インフルとの同時流行懸念も

さらに今年の冬は「インフルエンザとコロナの同時流行」も懸念されている。

「今これだけ国際的な交流であったり、国内の移動というのが増えてきた中で、毎年冬にはどうしてもインフルエンザが流行します。従って“コロナとの同時流行の可能性”というのも指摘されていて、我々は懸念しているところです。ただインフルが本当に流行するのかを予測するのは非常に難しいです」

一方で、コロナに関しては、現在の状況ならではの懸念があるという。


「新型コロナに関していえば、流行状況を規定しているのは、主に①免疫、②人々の接触、③どういった変異株か、というところです。この3つの中で、今特に変化してきているのは“免疫の状況”と“接触パターン”です。

“免疫”は、7月8月のオミクロン株BA.5の大流行があって感染による免疫が上がり、更にはワクチン接種も進み、免疫が高まったが、今徐々に落ちてきているような状況にある。

一方で、“接触”に関しては、皆さん出かけるなどして増えてきていると思います。さらに我々がモニタリングしている、繁華街の夜間の滞留人口も上がってきています。今後さらに接触が増えていく可能性が出てきているという状況です

また、これから冬に向かって換気がしにくくなります。換気が悪い屋内でマスクなしの会話はリスクになります」

こうした状況を踏まえ、脇田所長は、「いかにワクチン接種を推進し、免疫をつけていくかということが重要になる」という。ただ、そこには難しい国内の現状がある。

ワクチン3回目接種で、オミクロン株への免疫がつく

実際、高齢者の4回目接種は進んでいるが、若者の3回目が進んでいない。若者の間では、「感染しても風邪程度。軽症で済むからもう打つ必要もないんじゃないか」という声も聞かれる。

「正直、まだ、ただの風邪ではないと思います。もちろん軽く済む人は多いけれども、それはワクチンを2回打っているから軽く済んでいるということも多くて、これまでのデータで言えば、やはり風邪、インフルとは違って後遺症で悩む方もたくさんいます」


また、脇田所長は、これまで打ってきたワクチンは従来株のもののため、2回目までだと、なかなかオミクロン株の感染予防ができないと話す。

「ただ、3回目を打ってもらうことによって、かなりオミクロン株にも対応できる免疫がつくというのはこれまでの研究でわかっています。さらに、従来株とオミクロン株の2つの抗原が入ったワクチンが打てるようになりましたから、これでオミクロン株に対してもしっかりと対応できるようになりました」

乳幼児へのワクチン接種可能に…懸念は?

その一方で、多くの親が悩んでいるのが、子どもへのワクチン接種だ。
10月から、生後6カ月~4歳の乳幼児もワクチンを打てるようになったが、「子どもや赤ちゃんに打つのは心配だ」という声が聞かれる。

「そこは非常に難しい問題ですね。やはりどうしてもワクチン接種は副反応がある。発熱、アレルギー、心筋炎の問題だったり。

ただ、今一番低年齢の6カ月~4歳を対象に打つワクチンは3回打つのですが、臨床試験のデータを見る限り、これまでの新型コロナワクチンより副反応が多いと言うことはなく、安全性に重大な懸念はないとされています」

これまで比較的、“小児は感染をしにくい”ということが言われてきた。しかし、オミクロン株になって感染力が非常に強く、小児の感染も増えてきたという。

「特徴的なのは、感染をして熱を出し、それによって熱性けいれん、脳症であったり、重症化する小児も報告されてきています」

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さらに、こんなデータも。

「今回、国内の20歳未満の新型コロナによる死亡例に関する疫学調査をまとめたのですが、ワクチン接種対象の年齢の多くの小児の死亡例では未接種でした。

やはり感染をするということはウイルスが体に入って増殖するわけですから、体内では色々な悪い反応が起こる可能性がある。その前に免疫をつけておくと、それによって抵抗力ができるので、免疫のない状態で感染を受け止めるよりも、リスクは下がります」

脇田所長は、改めて“ワクチン接種の重要性”について強調する。

「ワクチン接種により自分の感染や重傷化を予防できますが、同時に流行を抑えていく、そして医療を守っていくことに繋がるので、自分一人の問題だけではなくて、家族や自分の周りの仲間、そしてこれからの社会のためでもあるということも、認識していただきたいです」

後編では、なぜ日本ではなかなかマスクが外せないのか、薬の開発状況、そして最も知りたい「コロナはいつ終わるのか?」について聞く。

(FNNプライムオンライン11月21日掲載。元記事はこちら

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