農業の“救世主”再生リン 下水から回収・肥料化し高騰するコストを抑制【福岡発】

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農作物の成長に大きく関わる栄養素「リン酸」。円安などの問題で価格が高騰し、農家は打撃を受けている。こうした中、下水から回収した「再生リン」の肥料化が注目を集めている。

微生物の力でリンを回収

農業において安定した収穫量を得るために欠かせない化学肥料。その中に含まれる「リン酸」は、農作物の成長に大きく関わる栄養素だ。しかしリン酸は、日本には存在しないリン鉱石が原料であるため輸入に頼る状況となっていて、円安やウクライナ危機などの問題で倍近く価格が高騰し、農家に打撃を与えている。


そんな中、「救世主」として注目されているものがある。

日高真実リポーター:
さらさらで海辺の砂のようです。一体、こちらなんでしょうか?


その正体は、「あるもの」から回収し、生み出された「再生リン」だ。通常、鉱石から採取されるリン酸だが、少し意外なところで回収されている。


和白水処理センター・佐々木友幸所長:
オレンジ色の建物ですね。この施設が、再生リンの回収施設になります

その施設は、福岡市の下水処理場の中にある。実は、生活の中で排水される「下水」には、リン酸がたっぷり含まれているのだ。
なぜ下水に含まれているのかというと、化学肥料に含まれるリン酸は、農作物に栄養分として吸収され、それを食べる人間の体内に入る。その後、リン酸は体内から排出されるため、下水に含まれているのだ。


強い臭いを発する、下水から発生した汚泥。この中にリン酸が含まれているのだが、その抽出を担うのが下水に含まれる微生物だ。

和白水処理センター・佐々木友幸所長:
微生物の力を借りて、リンを採る


酸素を与えるとリン酸を吸収し、酸素を抜くとリン酸を吐き出すという微生物の性質を利用してリン酸を取り出す。そこに水酸化マグネシウムを投入、化学反応を起こし結晶化したものが再生リンとなるのだ。


日高真実リポーター:
先ほどまで強烈な臭いがしていましたが、今は、全く臭いは気にならない

SDGsにもつながる取り組みに

福岡市が下水の中からリン酸の回収を行うようになったのは26年前。通常、下水処理した水は博多湾に放流されるが、下水に含まれるリン酸は栄養価が高く、赤潮の原因になるなどの理由でリン酸の回収事業が始まった。


そのリン酸を資源として再利用できないかと、福岡市が全国に先駆けて取り組んだのが再生リンを使った肥料化なのだ。
初期は、供給量が安定しなかったが、2022年4月に最新の設備を導入したことで、再生リンの回収量は約10倍に増え、年間100トンが見込まれている。


その再生リンを使った肥料が、福岡のJAと共同開発で実現した。

JA筑前あさくら・田中義一課長:
こちらに並んでいるのはイーグリーンシリーズと言いまして、(この肥料は)福岡市の再生リン酸を活用しています。リン酸は全て再生リン酸を活用しています


再生リンを活用した場合、肥料の価格を2割ほど抑えることが可能になるという。実際に再生リンを活用した肥料を使う生産者に話を聞いた。

農家・大楠龍洋さん:
最初は、「えっ」て思いましたけど、従来通りの肥料と変わらず農作物は成長してくれたと思います。最近、肥料などが高騰しているので、コスト面で抑えることができるならいいかなと思います


和白水処理センター・佐々木友幸所長:
私たちのこの事業は、SDGsにもつながる取り組みだと考えています。全国にも広がっていけばと考えております


福岡市から始まった再生リンの肥料化。全国のJAから視察が訪れるなど注目を集めている。

(テレビ西日本)

(FNNプライムオンライン11月21日掲載。元記事はこちら

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