“地獄”パワーで異国情緒体験 変わる雲仙温泉街 星野リゾート流おもてなしの舞台裏に密着【長崎発】

地域 旅と暮らし

雲仙温泉街の一角に、長崎県初進出の星野リゾートが展開する温泉旅館「界雲仙」が、2022年11月25日に開業した。コンセプトは「地獄パワーにふれる異国情緒の宿」。新型コロナで宿泊者が減り、新たな温泉地のあり方を模索する雲仙温泉街に、一味違ったスタイルを持ち込もうとしている星野流のおもてなしに密着した。

星野リゾート「界」ブランドの緻密な戦略

開業の3週間前。雲仙地獄に、界雲仙のスタッフの姿があった。

雲仙観光局・瀬戸正志さん:
湯煙が出ているところがある。(地熱で)ここはかなり熱い。ここでヨガとかするといいと思う


この日は宿泊客が楽しむアクティビティを作るための勉強会。担当は、入社3年目の永原さんだ。

界雲仙・永原柾喜さん:
五感がすごくポイントになってくると思うので、そういったものを要素として生かせたらいいと思う


星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」は全国に22ある。魅力の1つは「青森の津軽三味線」や「石川の加賀獅子舞」など、その土地ならではの体験の提供だ。


界雲仙も独自のアクティビティを作ろうとしていた。この日は、スタッフがアイデアを出し合った。


スタッフ:
何ですか?鬼の散歩体験って

スタッフ:
宿泊客は色んなところから来るので、キャッチーな方がいいと思う。鬼を連想させた散歩


スタッフ:
何かしらパワーを感じられるような、元気になれるようなアクティビティがあるといい

スタッフ:
地獄だから、ハードに体を動かすのもいい


星野流のおもてなしを支えるのは緻密な戦略だ。施設ごとに「ペルソナ」と呼ばれるメインの客層の人物像を設定しサービスに落とし込んでいる。


界雲仙のペルソナは福岡市在住の35歳の女性で、名前は「島原いづみ」。温和で、旅行は下調べを重視、上品より上質を求める、など性格を作りこんでいる。


界雲仙・山根凪紗総支配人:
例えば「かわいいもの好き」など、心情まで細かく設定したので客室のしつらえ一つにしても、入浴と休息を繰り返すためのアイテムを追加した方がいいのではないか…など、それはひとえに、人物像をしっかり決めたから発展してきたもの


迎えた試泊の日「ペルソナ」想定し用意したのは…

開業1週間前、全国各地のスタッフが宿泊客として訪れる「試泊」の日だ。準備してきたサービスや運営を試す。

界雲仙に試泊にきた夫婦の客室係・川口詩菜さん:
お待たせしました。本日は507号室を用意しています

「食が好きで関心が高い」というペルソナを参考に、客室係が用意したのは…。

界雲仙に試泊にきた夫婦の客室係・川口詩菜さん:
こちらは和紅茶。部屋菓子のカステラとともに召し上がってください


界雲仙に試泊にきた夫婦の客室係・川口詩菜さん:
結婚記念のお祝いでしたか、おめでとうございます。大切な日に当館を選んでいただき、ありがとうございます


界雲仙に試泊にきた夫婦の客室係・川口詩菜さん:
一番大きかったのは、結婚記念という旅行の目的のところに丸をしていた。お客様の目的や要望にあった対応ができるように引き継ぎをしていく

「ご当地楽」と呼ばれる地元体験には、長崎が伝来の地であることから「活版」による絵葉書作りが選ばれた。「活版印刷」とは、金属や樹脂でできた活字(文字)を組み合わせて文章になる版を作り、版にインクをつけて紙に押し付けて印刷する手法のこと。


活版印刷を体験した宿泊客:
宿に来て紹介してもらって、びっくりしたけどすごく楽しかった

「ペルソナ」を想定し用意したのが和華蘭柄の4種の封筒。「旅先で出会う一点ものが好き」という好みから着想を得た。


リニューアル相次ぐ雲仙エリア 増える個人旅行対応の宿

界雲仙のサービススタッフの永原さんが考案したアクティビティは、翌日の朝に控えていた。「雲仙地獄パワーウォーク」。地獄から「鬼」を連想し杖を金棒に見立てた体操を加えた。


最後に訪れたのは、「旧八万地獄」。地熱を全身で感じながらのストレッチは「新しいことへの好奇心が強い」というペルソナをもとに考案した、雲仙でしかできない体験だ。満足度の高いサービスを作り改善していくことが、星野流のおもてなしの土台となっている。

宿泊客:
地獄のような体験でした(笑)。最後にここでしたのが、自然のホットヨガみたいですごく温まった


アクティビティを担当した界雲仙・永原柾喜さん:
体験してもらいたい魅力がたくさんあるので、お客様に雲仙の魅力を伝えられるように、私たちができることを探し続けて形にしていきたいと思っている

雲仙エリアは、ここ数年施設のリニューアルが相次いでいて、ゆとりある個人旅行に対応できる宿が増えている。


2018年に「雲仙九州ホテル」、2022年3月には「雲仙温泉青雲荘」リニューアル、そして12月には「雲仙宮崎旅館」が新装開業する予定だ。雲仙市の宿泊者数が年間30万人を下回る中、新たな温泉地のあり方を予感させる流れだ。

雲仙観光局・林田真明統括事業部長:
(部屋数を減らした分)宿泊者の数は少なくなっていくと思うが、その分「客単価(の向上)」でリカバリーされる

全国的な知名度と発信力を持つ星野リゾートの参入が、雲仙温泉街の変化を加速させそうだ。

(テレビ長崎)

(FNNプライムオンライン12月2日掲載。元記事はこちら

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