北京に溢れる人 コロナ禍から「驚異の回復」も 予測不能な今年の中国

国際・海外

2022年年末の中国・北京には人が溢れかえっていた。


池に張った氷の上では所狭しと人が遊び、人気のある通りには老若男女が楽しげに歩き、笑う姿があった。コロナなどなかったかのような活気には唖然とするしかなかった。

大晦日の人出は驚くほどの多さだった
大晦日の人出は驚くほどの多さだった

火葬場に行列が出来たのも現実だが、すでに陽性を経験した「陽過」「陽康」という新たな言葉が定着し、人々が日常を取り戻しつつあるのも現実である。朝夕の渋滞は以前よりも激しくなった印象すらある。

車の往来もかなり増えてきた
車の往来もかなり増えてきた

日本をはるかに凌ぐスピードで変わっていく中国の今年を考える。

“異質な中国”を知る市民

北京の冬は寒い。防寒は必須だ
北京の冬は寒い。防寒は必須だ

コロナ対策への不満がデモに繋がったように、中国市民の権利意識、特に生活に直結する問題への関心は今後もさらに高まるだろう。

ネットやSNSの普及で人々は諸外国の実情を簡単に知ることが出来るようになった。中国の体制やルールが異質であることに、すでに多くの人が気づいている。海外旅行なども通じて自国と全く違う環境を体験する中、中国国内の限られた自由や権利を当局がさらに押さえつければ反発するのは当然である。

隔離に向かうバス内では不満が噴出した
隔離に向かうバス内では不満が噴出した

北京で最後の隔離生活を送った12月中旬、あまりの拘束時間の長さにバスの中で乗客が「もうフラフラだ!」と一斉に不満を口にする一幕があった。市民の不満は思いがけないところで噴出するものだと感じた瞬間だった。

このような隔離措置はなくなるのか
このような隔離措置はなくなるのか

去年12月のデモでは、習近平体制への批判も出る一方で「国の政策を実行しない地方政府、現場レベルへの不満もあった」(日本大使館筋)との分析もあり、体制批判は大きなうねりにはなっていないようだ。少なくとも北京市民は感染するリスクよりも各種の制限がなくなり、自由を享受出来ることに充実を感じているように見える。北京の感染増加が続く中で起きたデモだっただけに、複数の関係者が「(デモは)ゼロコロナを緩和するには渡りに船だった」と指摘している。

PCR検査場も閉鎖・撤去される所が多い
PCR検査場も閉鎖・撤去される所が多い

医療体制が脆弱な地方や、高齢者への影響についても「すでに地方もピークアウトしはじめている」(外交筋)との見方も出るほどで、今のところその影響は限定的なようだ。政策の急激な変更に粛々と応じる市民には、政治に参画できない割り切りのようなものが感じられるが、ひとたびその不満と先行き不安の高まりが表面化すれば、国内はたちまち混迷の度を増すことになるだろう。

経済が最大の懸案

一方の国を治める共産党政権側にとってはどうか。

去年秋の党大会で最高指導部を自らの側近で固め「誰もチャレンジできない体制」(外交筋)を確立した習近平国家主席にとって、政権基盤はさらに安定した。ただ、このコロナ禍で影響を受けた経済をどう立て直すかは喫緊かつ最重要な課題だ。中国入国者への隔離措置がすぐに撤廃されたのはその表れにほかならない。

大晦日、国民に語りかけた習近平国家主席
大晦日、国民に語りかけた習近平国家主席

アメリカをはじめとする諸外国と渡り合うには経済の強さが武器になる。また、それがもたらす豊かな生活は国民の支持にも繋がり、選挙を経ない共産党政権の正当性を内外にアピールできるからでもある。コロナの感染拡大が非常に早いこと、重症化しなければ1週間程度で回復することから「対策緩和による経済への影響はそれほど深刻ではないのでは」(外交筋)という見方もあるが、まさに市民生活に直結する問題だけに、指導部も慎重に対応するだろう。大晦日に習主席はコロナ問題について「対策は新たな段階に入った」と述べて、いっそうの努力と団結を呼びかけたが、一方で「皆が耐えながら努力をしている」と国民への配慮も忘れなかった。

その習主席は3月5日に始まる全人代=全国人民代表大会で、李克強首相の後任など新たな政府の体制をスタートさせる。コロナの影響はもとより、高齢化社会と労働人口の減少、不動産市場の悪化、就職難と高い失業率、都市と地方の格差など、中国を取り巻く環境が厳しさを増す中、どのような政策を打ち出すかが注目される。中国経済の浮沈は世界経済の行方にも関わるだけに、日本にとっても決して他人事ではない。

日本との関係は・・

習主席は党総書記として3期目のスタートを切った後、G20、APECなどの国際会議でアメリカや日本と、対面では初めてとなる首脳会談を行った。岸田首相に満面の笑みを浮かべた習主席は融和的な対応に終始したように見えるが、額面通り受け取る向きは少ない。「中国の本質は全く変わっていない」(外交筋)との指摘があるように、習主席の笑顔は国益を確保する手段に過ぎず、その強かな姿勢は今後も続くと見るのが自然だろう。

日中首脳会談(去年11月)
日中首脳会談(去年11月)

岸田首相も国交正常化50年の節目での首脳会談を成果として強調した一方、ゼロコロナ政策の崩壊を受けて中国への新たな入国規制を発表した。政策的判断ではなく、保守派に配慮した政治判断という側面が見られる。「日本政府は中国の反応を気にしている」(政府筋)との話が北京にも伝わり「気にするならやらなければ良かった」という評価すら聞かれる。日本の外交官拘束事件への対応をはじめ、北京の日本大使館は東京よりも強い態度で、時に対立を辞さない覚悟で当局と向き合っているが、実態としては官邸が譲歩、ないし妥協する形で中国との交渉に舵を切っているようだ。

だからといって日中関係が今後順調に推移するかはわからない。最大のポイントは今年広島で行われるG7サミットだ。避けて通れない中国問題について日本が議長国としてどのようなメッセージを発するのか。その中身によっては中国の反発が日本に向かう可能性もある。「まさにこれからが大変だ」(大使館幹部)というように、日中関係は予断を許さない状況が続く。


もはや日中関係は好き嫌いや良好か否かではなく、安定しているかどうか、率直に話し合える場を持てるか、ウィンウィンの関係を築けるかどうかが第一義に問われる次元に来ている。日本の覚悟が今年も問われることになる。

(FNN北京支局長 山崎文博)

(FNNプライムオンライン1月2日掲載。元記事はこちら

https://www.fnn.jp/

[© Fuji News Network, Inc. All rights reserved.]

FNNニュース