【解説】注目の「卯年」日本経済は「跳ねる」か 物価・金利・賃上げの行方は?

経済・ビジネス

株安・円安が進んだ2022年

2022年の東京市場は、ロシアのウクライナ侵攻に伴って資源・エネルギー価格が上昇し、アメリカやヨーロッパで利上げが加速するなか、株安・円安が進んだ1年だった。

大納会に出席した岸田首相。個人の投資を盛り上げるよう呼びかけた(去年12月30日)
大納会に出席した岸田首相。個人の投資を盛り上げるよう呼びかけた(去年12月30日)

そして、年末には、「長期金利の変動幅拡大」という日銀の政策修正が、市場への「サプライズ」となり、長期金利は急上昇し、株価は急落、円相場は円高方向に振れる展開となった。

2023年のカギ握る 米「利上げ」の行方

2023年は、どういう年になるだろうか。大きなカギを握りそうなのが、アメリカと日本の金融政策だ。アメリカでは、インフレ退治のため、政策金利の急ピッチでの引き上げが続けられてきたが、金融引き締めの継続は、景気を冷やし、経済を後退させる可能性がある。

OECD(経済協力開発機構)は、インフレ対応での利上げなどが成長を阻害するとして、2023年の世界経済の成長率は、2022年の3.1%から、2.2%へと低下すると予測している。

米・FRBパウエル議長
米・FRBパウエル議長

2023年の日本の伸び率の見通しは1.8%で、アメリカとユーロ圏の0.5%を上回ってはいるが、海外経済の悪化による下振れリスクが、マイナス要因として意識されそうだ。こうしたなか、FRB(連邦準備制度理事会)は、2022年末の会合で、利上げ幅を0.5%に縮める一方、2023年の最終的な政策金利の到達点を、それまでの予想より高くする見通しを示した。

FRBによる利上げは、どの時点で一服し、政策転換の兆しは見えてくるのか。アメリカの金融引き締めと景気後退入りの行方が、日本をはじめ世界経済に大きく影響することになりそうだ。

日銀はさらなる方針変更に踏み出すのか

日本では、4月に、日銀の黒田総裁が任期満了を迎え、次期総裁のもとでの新たな体制がスタートする。黒田氏の指揮下で、景気を支えるためとして、大規模な金融緩和を続け、金利を低く抑えてきた日銀は、さまざまな弊害が指摘されつつも、かたくなにこれまでの政策を維持してきたが、市場関係者が予想していなかった「事実上の利上げ」という修正に踏み切った。

債券市場では、長期金利が、日銀が容認した上限の0.5%近くまで一時上昇した。影響は、住宅ローン金利には、すでに「固定金利」の引き上げという形で波及している。今月適用の金利は、大手3行では、10年固定で、12月の水準からの上昇幅が0.18%~0.30%となった。

金融政策決定会合の後、記者会見に臨む日銀・黒田総裁(去年12月20日)
金融政策決定会合の後、記者会見に臨む日銀・黒田総裁(去年12月20日)

企業も、金融機関から融資を受けて設備投資などにまわす際の負担が増えれば、収益が圧迫されることになり、利払い費の増加を心配する声が聞かれる。4月以降注目されるのは、黒田氏からバトンを受け取った新総裁のもとで、日銀がさらなる方針変更に踏み出すのかどうかだ。

一段の利上げがあるのか、日銀当座預金の一部で適用されている「マイナス金利」政策の解除が視野に入ってくるのか、などが関心の的だが、本格的な利上げは、家計の預金金利が増えるなどの恩恵がある反面、企業で広がり始めた賃上げの動きに水を差しかねない側面もある。金融政策の方向性に視線が集まることになる。

2023年度の家計負担 4万円近く増加か

家計を苦しめる物価高はどうなるだろうか。円安による物価上昇は、大規模緩和の副作用として指摘されてきたが、「事実上の利上げ」で円相場が円高方向に傾くことで、 輸入品価格が抑えられる面はある。

ただ、2023年も、食品・飲料で値上げされる予定の品目数は、1月~4月分だけで7152品目に達し、2022年の同じ時期の1.5倍を超えている。最も多い分野は「加工食品」の3798品目で、2023年全体の半数を占め、冷凍食品のほか、小麦製品、水産缶詰・練り製品といった品目で目立つ。

2023年度の家計負担 4万円近く増加か(イメージ)
2023年度の家計負担 4万円近く増加か(イメージ)

調査を行った帝国データバンクでは、再値上げ・再々値上げのケースも増えているとして「コスト上昇圧力は解消しておらず、消費者に近い製品ほど、価格転嫁が十分に進んでいない。2023年も少なくとも1万品目で値上げされる」とみている。

みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミストの試算では、食品やエネルギー価格の上昇に伴い、2022年度の1世帯あたりの家計負担は平均で前年度から9万6368円増加し、2023年度はさらに3万9750円増えることになる。財布に厳しい状況が続きそうだ。

好循環に向け 賃上げの広がりは

2023年の最大の焦点は、春闘で賃上げの動きが広がるかどうかだろう。連合は、2022年まで4%程度としてきた要求水準を引き上げ、「5%程度」を求める方針を決めた。うち、3%程度が基本給を底上げするベースアップ分だ。

経団連の十倉会長は、年頭の報道各社のインタビューに応じ、それぞれの企業が、業績を踏まえたうえで、ベースアップを中心とした賃上げに取り組むことが望ましいとの考えを示している。

経団連・十倉会長は「賃上げは企業の責務」と述べた。
経団連・十倉会長は「賃上げは企業の責務」と述べた。

このところの賃金は、物価変動を反映した実質分が7か月連続でマイナスだ。受け取る賃金が、物価上昇により実質的に目減りする事態が現実化するなか、企業が人への投資に前向きになり、物価の伸びを上回る賃上げが実現されて、消費の活発化につなげられるかが課題になっている。

賃金水準が底上げされ、消費喚起と人材投資が進む好循環に向けた環境づくりを政労使で加速させることができるか、が大きなポイントになる。

「卯年」景気・株価は「跳ねる」?

2023年は「卯年」、相場格言では「跳ねる」だ。卯年の年末の日経平均株価は、戦後でみると、6回中4回、前年を上回っている。

賃上げや生産性向上の広がりを通じて、個人消費や設備投資が伸び、国内景気が上向き軌道を描いて、戦後7戦で5勝という成績をあげられるのか、卯年の景気と株価の「跳ね」具合に注目したい。

(執筆:フジテレビ経済部長兼解説委員 智田裕一)

(FNNプライムオンライン1月3日掲載。元記事はこちら

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