「不妊治療」保険適用で体外受精など“3割負担”になるもかさむ医療費…複雑な制度の落とし穴【広島発】

社会 暮らし

カップルの5.5組に1組は不妊治療に取り組んでいると言われる中、2022年4月から不妊治療への公的医療保険の適用範囲が拡大され半年以上が過ぎた。3割負担で治療が受けられる人がいる傍ら、全額自己負担になる人も。見えてきた課題とは…。

若年層が不妊治療を始めやすく

2022年10月、広島県は、県内の不妊治療を行う医療機関にアンケートを行った。それによると人工授精や体外受精なども保険の適用対象になった2022年度は、2021年度に比べ、約1割受診する人が増えたことが明らかになった。


広島県 子供未来応援課・梅田真紀 課長:
20代・30代前半の若い方が早めに不妊治療・不妊検査を始めることが多くなっています


県は4月に妊活サイトをリニューアルオープン。アクセス数はリニューアル前の4倍に増え、35歳未満の若年層が8ポイントアップして57%を占めている。

広島県が情報を発信する「ふたりの妊活全力応援サイト」
広島県が情報を発信する「ふたりの妊活全力応援サイト」

広島県 子供未来応援課・梅田真紀 課長:
なかなか踏み出せない人もいたと思うが、保険適用によって3割負担で不妊治療ができるようになり、それならやってみようという人が多くなったのではないかと思います

 

 

不妊治療は「一般不妊治療」と「生殖補助医療」に分かれ、排卵のタイミングに合わせる「タイミング法」、精液を注入器で直接子宮に注入する「人工授精」、精子と卵子を採取した上で体外で授精させる「体外受精」、さらに高度な「顕微授精」などと段階がある。料金は病院によって異なり、「人工授精」で約3万円、「体外受精」で約50万円など高額な費用が治療する人の負担となってきた。


今や「体外受精」や「顕微授精」などの生殖補助医療で生まれる赤ちゃんは約14人に1人となる中、2022年4月から保険の適用範囲が拡大され、年齢制限や回数制限はあるものの3割負担で治療が受けられたり、高額療養費制度でさらに負担が軽減される人も出てきた。


医療費「減った」4割、「増えた」3割

6年間の不妊治療を経験し、現在は不妊治療の啓発活動を行う女性に話を聞いた。

NPO法人 Fine・野曽原誉枝 理事長:
以前より不妊治療に対する理解や周知が広まり、不妊治療をしやすくなったという声をいただいています


野曽原さんたちが行った調査では65%の人が保険適用で良くなったと感じることがあり、「経済的に治療が進めやすくなった」「支払う医療費が少なくなった」「心理的に治療が始めやすくなった」と経済的負担が軽減したという声が上がっている。


一方で「悪くなった」と感じることがある人は73%とさらに多く「医療機関の待ち時間が増えた」「保険適用の範囲がわかりづらい」という意見とともに、逆に「経済的負担が大きくなった」という声も。


保険適用後の医療費を問う調査でも、「減った」と答えた人が4割いる一方で、「増えた」と答えた人も3割いた。これはいったいどういうことなのか?


NPO法人 Fine・野曽原誉枝 理事長:
今の段階では保険適用の範囲が狭い。保険適用内で妊娠が難しい人は、自由診療もしくは先進医療で治療せざるを得ない。そうすると100%自己負担になってしまう。経済的な負担が増えた人がいるのも事実です

複雑な制度と混合診療の”落とし穴”

混合診療ができない日本では、保険適用外の治療を受けると”通常なら保険適用される治療まで自己負担に変わる”というケースが出てくる。


NPO法人 Fine・野曽原誉枝 理事長:
年齢、回数制限、ちょっとした薬剤の量で「保険適用になる・ならない」と2つに分かれる状況が発生しているのは私たちとしてもとても残念です


この状況に専門医は?

広島HARTクリニック・向田哲規 院長:
ご主人が出張などのために体外受精の日に精子を採れない場合は、前もって精子を凍結しておかないといけないが、その1項目のためにすべてが自費になる。妊娠しにくい人全員にあてはまる保険制度になっていないという点は問題だと思います


さらに、同じ治療を受けていても医療機関が必要な基準を満たしているかどうかで保険が適用されるか全額自己負担になるか分かれることもあるなど、制度がかなり複雑になっている。

広島県 子供未来応援課・梅田真紀 課長:
県内の医療機関では半分ぐらいしかその施設基準を満たしているところがない状態。受診している医療機関によって、同じ技術を使っても保険が使える場合と使えない場合がある。情報を確認してから、通う医療機関を選ぶことが必要になります


2年に1回の改定がある保険制度。次の改定は2024年4月。

広島HARTクリニック・向田哲規 院長:
不妊治療の一番の問題は、年齢がいってしまうとなかなかできにくくなるという点。制度が完全にできてからとなると、もう妊娠できる年齢を過ぎてしまう。そういう人のためにも、より良いシステムをより早く整えるべきではないか


一部の人には、負担が重くなっている不妊治療の保険適用。少子化対策に向け改善の余地が浮き彫りとなっている。

(テレビ新広島)

(FNNプライムオンライン1月6日掲載。元記事はこちら

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