奪われた息子の命「12年間愛され生きてきた」 “交通事故撲滅”を訴え続けて【福井発】

社会

かつて、最愛の息子を交通事故で亡くした一人の女性。この女性は交通事故の撲滅を訴え、12年間にわたって講演を続けている。「自分たちのようなつらい思いをしてほしくない」。その言葉に込められた思いに迫った。

いつも見慣れた交差点で…

2022年、福井県内の交通事故死亡者数は27人(12月22日現在)だ。10万人あたりでは全国ワースト4位と、高い水準になっている。

宮地美貴子さん 当時12歳の息子を事故で亡くした
宮地美貴子さん 当時12歳の息子を事故で亡くした

仏壇の前で静かに手を合わせるのは、福井市に住む宮地美貴子さん。20年前、当時12歳の長男、貴弘君を交通事故で亡くした。


貴弘君が事故に遭ったのは2002年9月18日。小学校から家に帰り、算数のノートを買うため、自転車で近所のスーパーに出掛けた時だった。家から約400メートル、いつも見慣れた交差点で事故が起きた。


宮地美貴子さん:
自転車で走ってきていったんこのへんで止まって、渡ろうとした時に車にはねられた。このへんで倒れていた。現場に着いたときには意識がない状態で、呼び掛けても何の反応もなかった

亡くなった貴弘君
亡くなった貴弘君

貴弘君は脳死状態となり、人工呼吸器を装着。回復を待っていたが、5カ月後に亡くなった。12歳の誕生日の4日後のことだった、事故から20年たった今も、宮地さんの自宅には、貴弘くんが当時使っていた机や荷物がそのまま残されている。


宮地美貴子さん:
絵を描いたり、折り紙したり、ゲームをしたりするのが好きだった。処分することなんかできない。私が生きている限りは残っていると思う

宮地さんの訴えで信号機が設置された
宮地さんの訴えで信号機が設置された

以前にも、何度か事故が起きていたというこの交差点。宮地さんは危険な事故が起きないよう、信号機をつけてほしいと自治体や交通安全協会、地区の交番などに頼み込んだ。そして事故から2年後、ようやく信号機が設置された。「使っている人を見ると、設置できて良かったと思う」と宮地さんはほほえむ。

12年間で講演250回

息子を亡くした悲しみを長年抱えつつも、宮地さんは「事故撲滅」へと一歩を踏み出した。自らの経験を直接語り掛ける講演を始めたのだ。事故から8年目のことだった。


宮地美貴子さん:
もうこの世にいないし、死んでしまったという現実をなかなか受け入れられることができませんでした。いつかまた、ひょっこりと現れるのではないか。「ただいま」って家に帰ってくるのではと思うこともありました

講演するのは学校や交通安全の大会などで、その回数は12年間で約250回にのぼる。県内だけでなく県外にも出て、自らの思いをゆっくりと丁寧に語る。

宮地美貴子さん:
これ以上私たちのようなつらい思いをする人を増やしたくありません。思いやりのある優しい社会になっていくことを私は心から願っております。それが今という未来を生きるはずだった亡き息子からのメッセージではないかと思っています

講演に参加した女性
講演に参加した女性

講演を聞いた女性:
命の重さがすごく伝わってきて心に刻まれた。一時停止があったら、必ず手前でストップして渡ろうと思う

「“かわいそうな男の子”で終わらせたくない」

宮地さんは、全国の交通事故被害者の等身大パネルなどを展示する「生命のメッセージ展」にも参加している。貴弘君のパネルには生前、貴弘君自身が残した標語が記されている。それは「世の中を明るくする第一歩は思いやり」という言葉だ。


宮地美貴子さん:
息子が「交通事故で亡くなったかわいそうな男の子」で終わらせたくないのが一番の思い。12年間だったが、たくさんの人に愛され大切にされて一生懸命生きてきた男の子がいたことを知ってもらい、心の中で生かせてもらえたらいいと思う

(福井テレビ)

(FNNプライムオンライン1月6日掲載。元記事はこちら

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