ウクライナ侵攻10カ月 戦争はいつ、どうすれば終わるのか 軍事専門家が「2~3年で終われば早い方」とみるその理由は【大阪発】

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2月に始まった、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻。こう着状態に陥った現在、ウクライナはインフラ施設などへの攻撃を受け、家庭への電力供給が滞ったまま厳しい冬を迎えている。

ウクライナに生きる人々が平穏な暮らしを取り戻すのはいつになるのか、防衛省防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄氏と読み解く。

戦争はいつ終わる?

戦争がいつ終わるのかについて、高橋室長を含む3人の専門家に聞いた。

高橋室長は「2~3年で終われば早い方」、ロシアの専門家の慶應義塾大学・廣瀬陽子教授は「一番可能性が高いのは、だらだら続いてしまうこと」、ウクライナの専門家の神戸学院大学・岡部芳彦教授は、「エンドレスの恐れ」と、3人とも長期化するという見方だ。


(Q:「2~3年で終われば早い方」というのは、なぜですか?)
高橋杉雄
室長:
ウクライナは日本の1.5倍、朝鮮半島の3倍の大きさがあり、戦場が広いんです。また、参加兵力が100万人を超えていて、冷戦終結後どころか、第二次世界大戦終結後最大の戦争になっています。それだけの戦争が簡単に終わるわけがない。朝鮮戦争でも3年続いていますので、一つの目安としてそれぐらいは考える必要があると思います


停戦の“線引き”は

この戦争の「終わり」というのは何を意味するのか。2月~12月までの戦況を振り返ると、ロシア軍は一時キーウ付近まで侵攻したものの、ウクライナ軍が押し返した。9月には、ロシアが東部4州の併合を一方的に宣言している。

(Q:ウクライナは「東部4州の奪還」と2014年からロシアに実効支配されている「クリミア半島の奪還」、どちらを停戦の線引きとすると考えられますか?)
高橋杉雄室長:
ロシアが占領したほぼすべての街で戦争犯罪が起こっているので、ウクライナとしては「全土奪還」を諦めるとは思えない。ただ問題は、ウクライナが全土を奪還したとして、それでロシアが戦争をやめるのかということです。奪還するまでがすごく大変ですけど、奪還したとして、ロシアが変わらない限り戦争が終わらない可能性が高い


(Q:クリミア半島までウクライナが取り返したとしても、プーチン大統領が「戦争をやめない」と言えば延々続いてしまうと?)
高橋杉雄室長:
そうですね。クリミア半島はまた別の問題と、政治・軍事的にいろいろな判断をする必要がありますが。奪還したとしても、それでプーチン大統領が戦争を諦めるという可能性は、非常に小さいと思います

戦争が長期化する理由

(Q:廣瀬教授は、戦争が「だらだら続いてしまう」理由として、現状はロシア劣勢でも、動員で兵力が増強されるためとみています。現在ロシアは動員数を「30万人」としていますが、増える可能性があるんですか?)
高橋杉雄
室長:
予備役というのは、徴兵などで一度軍役に就いた人間のことです。ロシアの場合は軍役に就いてから5年以内と、比較的レベルの高い予備役が合計で200万人います。ですから現在の30万人というのは、まだまだ動員余力がある状態。ウクライナが戦場で勝てば勝つほど動員が強化されて、そのまま前進が止められてしまう可能性はかなり高いと思います


(Q:戦争が長期化する中で、ロシアにプーチン大統領に代わるリーダーはいるのか、といった話にもなっていますが、その辺りはどうですか?)
高橋杉雄室長:
より強硬派が出てくる可能性も指摘されているので予断は許しませんが、いずれにせよ、ロシアが引き上げさえすれば明日にでも戦争は終わるんです。大統領が代わるというのは、一つのシナリオとして、今の状態よりは戦争が終わる可能性が高くなるのではないかなと思います

(Q:岡部教授は、戦争が「エンドレスの恐れ」の理由として、「西側諸国は援助」の構造が変わらないからとみています。あくまでも後方支援にとどめるという姿勢は変わらないのでしょうか?)
高橋杉雄室長:
ゼレンスキー大統領が訪米した際、会談後に出てきた援助の話で興味深いのが、東側規格、ウクライナが使っている旧ソ連製の兵器に使えるような弾の援助が増えていくと。またその直前に、ウクライナの戦車部隊の訓練を本格化していくというところが打ち出されていて、つまりウクライナ自身の手で土地を取り戻すための能力の強化をしているということです。NATOの軍事介入はほぼ考えられないんですけど、万一軍事介入した場合でも、それで戦争は終わらないんです。ロシア軍を2月23日のラインより後ろに戻したとしても、恐らくプーチン大統領は戦争をやめない。NATOの軍事介入が戦争を終わらせるなら検討すべき価値があると思うんですけど、終わらない


(Q:戦力的には、NATOにはロシアを自国領土まで下げられる能力があるけど、それで終わるかどうかはプーチン大統領次第ということですか?)
高橋杉雄室長:
そういうことです。そういった意味でも、軍事介入はオプションにはならないということです

(Q:プーチン大統領次第ということですが、彼はこの戦争をどうみているんでしょうか。失敗だけど引くに引けないのか、まだ勝ち筋があるとみているのか…)
高橋杉雄室長:
プーチン大統領の内心はよく分かりませんが、現状のいろいろな情報を考えると、もう一度ベラルーシ方面から攻勢をかけてキーウを狙う、あるいは西側からの援助物資のルートを断つことで、戦場で有利に立とうとしているように思われます。だとすれば、それを勝ち筋とみている可能性があります

(関西テレビ「報道ランナー」2022年12月26日放送)

(FNNプライムオンライン1月8日掲載。元記事はこちら

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