4代世襲か…核ミサイルだけではない金正恩総書記の狙い【2023年の北朝鮮】

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核ミサイル開発の陰で進む偶像化

北朝鮮は2022年、ミサイル発射を繰り返し、その回数は過去最多となった。同年末に開催された朝鮮労働党中央委員会全員会議拡大会議でも、核・ミサイル能力のさらなる強化を鮮明にし、米国、韓国、日本への対決姿勢を露わにした。

党の全員会議(2022年12月26~31日)で報告する金正恩総書記
党の全員会議(2022年12月26~31日)で報告する金正恩総書記

「我々の核武力は戦争抑止と平和安定守護を第一の任務と見なすが、抑止失敗時は第二の使命も決行する(中略)第2の使命は明らかに防御ではない他のものだ」

「迅速な核反撃能力を基本使命とする、もう一つの大陸間弾道ミサイルシステム(ICBM)を開発する」

「(韓国が北朝鮮を敵と定めたことを受け)戦術核兵器多量生産の重要性と必要性を浮き彫りにし、核爆弾保有量を幾何級数的に増やす」

「国家宇宙開発局は、最短期間で(北)朝鮮初の軍事衛星を発射する」

全員会議で北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は2022年を総括しつつ、核による先制攻撃や固体燃料式のICBMの開発、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権を戦術核で抑止する姿勢を鮮明にした。

2023年も核・ミサイルによる武力挑発を前面に打ち出している。

一方で、北朝鮮内部に気になる動きが出ている。金総書記を偶像化する動きが徐々に本格化する兆しを見せているのだ。

2022年10月、金総書記の姿を描いた巨大なモザイク壁画が初めて公開された。10月11日の朝鮮中央テレビは、金総書記も参加して10日に開催された農場の完工式のニュースでこの壁画を放映した。

壁画には、金総書記が咸鏡南道に建設された「連浦(ヨンポ)温室農場」の着工式に臨み、数人の幹部と共に現場に鍬入れする様子が描かれている。ニュースでは壁画の映像が3回、計40秒あまり放映されたが、壁画についての説明や言及はなかった。

金正恩総書記のモザイク壁画が2022年10月初めて公開された(朝鮮中央テレビより)
金正恩総書記のモザイク壁画が2022年10月初めて公開された(朝鮮中央テレビより)

北朝鮮ではこれまで、先代指導者の金日成(キム・イルソン)氏・金正日(キム・ジョンイル)氏、金正日氏の母・金正淑(キム・ジョンスク)氏以外にモザイク壁画が製作されたことはなかった。金総書記を題材とするモザイク壁画が北朝鮮メディアに登場したのはこれが初めてとなる。

さらに、12月3日付の労働新聞はこのモザイク壁画について「人民が初めて目にした」「人民の切なる願いがかなった」と報じた。記事は金総書記の壁画を各地に建てることが人民の願いだとしており、今後各地で金総書記のモザイク壁画が建立される布石と見られている。

3度目となる娘の映像を公開

金総書記の偶像化との関連で無視できないのが、娘の公開だ。金総書記は2022年11月18日の新型ICBM「火星(ファソン)17型」試験発射現場に長女キム・ジュエ氏とみられる娘を同行させ、国際社会の注目を集めた。同月26日の「火星17型」試験発射成功を祝う行事にも娘と共に参加している。

さらに、年明けに公開された党全員会議の内容を公開する朝鮮中央テレビのニュース映像にも、娘が登場している。金総書記が2022年を総括し、各種ミサイルの開発に触れた個所で、娘と金総書記がミサイル工場を視察した映像が使われているのだ。

金総書記と娘が組立前の火星12型ミサイルの脇を歩いている(朝鮮中央テレビより)
金総書記と娘が組立前の火星12型ミサイルの脇を歩いている(朝鮮中央テレビより)

「わが党の国益守護、国威高揚の基本原則が立派に貫徹されることで、党の戦略的構想と決断通りに米帝国主義の強権と専横、対朝鮮政策に甚大な打撃を与えました」

米国への対抗意識を煽るナレーションに合わせ、各種ミサイルの映像が次々に紹介された後、金総書記と娘の映像が続く。最初のカットでは、金総書記と娘が中距離弾道ミサイル(IRBM)「火星12型」の脇を歩く場面が映し出される。画面からは20基以上の組立前の火星12が確認できる。

米国の北朝鮮専門サイトNKニュースは、この場所が、平壌の西端、平安南道箴津里(チャムジンリ)に位置する箴津ミサイル工場として知られるテソン機械工場で撮影されたものと推定している。過去にも金総書記が数回、視察に訪れた場所だ。続いて、移動式ミサイル発射台の横を金総書記が娘と手をつないで歩いている場面が登場する。

視察の場所や日時、娘に関する言及はない。だが3回目となる娘の映像の公開で、火星17型発射以外にも金総書記がミサイル関連の視察の際に娘を同行していたことが明らかにされた。

金総書記が娘を軍事視察に同行させている理由については、少なくとも次の3点が指摘できる。

(1)娘を「未来世代」の象徴として前面に出し、未来世代の安全を守るための手段として核兵器保有を正当化するため

(2)未来世代に至るまで核放棄の意思がないことを強調するため

(3)後継者育成、4代世襲に向けた地ならしをするため

もちろん現時点では、金総書記の子弟のうち誰が後継者になるかは予断できない。ただ、金総書記は白頭の血統による「世襲」を早い段階から想定し、そのための環境作りが必要だと認識しているのは間違いない。

2023年は「一当百(一人で百人の敵を倒す)」スローガン提示60周年(2月6日)、朝鮮戦争休戦70周年(7月27日:北朝鮮では祖国解放戦争勝利70年)、「建国」75周年(9月9日)など北朝鮮にとって節目の記念日が続く。核ミサイル実験だけでなく、金総書記や金一家の偶像化をめぐっても新たな動きがありそうだ。

 

(FNNプライムオンライン1月12日掲載。元記事はこちら

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