82歳で始めたミシンで“がま口バッグ”が大バズリ 生死さまよい…「神様のご褒美や」

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三重県四日市市の工房で作られている「がま口バッグ」が、2020年にSNSでバズって依頼、予約が殺到し、今では1年半待ちの状態になっている。バッグを作っているのは、波乱の人生を送っている84歳の男性とその妻だ。

「がま口バッグ」でバズった84歳男性の波乱の人生


慣れた手つきでミシンを使う、斎藤勝さん(84)。


三重県四日市市で1年半待ちのバッグを作っている。


大ヒットした「がま口バッグ」(1万円前後 ※材料価格により変動)。


布製で軽く、外側にはポケットが2つあり、カギやスマホも入れることができる。


内側にも両サイドにポケットがあり、小物を持ち歩くことが多い女性に大人気だ。


「G3sewing(じーさんソーイング)」というネーミングでネット販売を始め、SNSに投稿したところ、約15万件の「いいね!」がつき、大きな評判を呼んだ。


斎藤さんがミシンを始めたのは、3年前の2019年、82歳の時だ。年齢を重ねてからのスタートだったが、腕前は日に日に上達した。


今では手際よくパーツを縫い合わせていく。


裏地の縫い付けが終わったら…。

斎藤勝さん:
これでひっくり返すんですね。ひっくり返すのは僕は手が痛いので、いつも家内に…。(妻の陽子さんに)ちょっとひっくり返して

妻の斎藤陽子さん:
ハハハ、はい

陽子さんは、B3と書いて「ばーさん」が愛称。いつも齋藤さんを傍で支えている。


生地をひっくり返してもらったら、いよいよ仕上げ。ストラップを縫い付け、最後に金具を取り付けていく。


斎藤勝さん:
大変です。誰も教えてくれる人おらん、何回でも失敗して、がま口はめるようになるまで半年くらいかかった

バッグ作りの技術は、すべて82歳からの独学だ。


2022年8月には自伝本「80代で見つけた 生きる幸せ(G3sewing)」まで出版されたが、ここまで注目されるようになったのは、バッグの魅力もさることながら、斎藤さんの人生がユーザーの共感を集めたからだ。

「本当に死にたかったね…」手術や入院を繰り返し引きこもった過去


今はとても元気な斎藤さんだが、これまでは大きな苦労の連続だったという。もともとは腕利きの電気工で、順風満帆だった、斎藤さん。


しかし68歳の頃、人生最大の危機を迎えた。


斎藤勝さん:
一番はじめは大腸に穴が開いて大出血して、もう助からんと言ってみんな葬式の準備をしていた…

さらに、大動脈解離で生死をさまよい、手術や入院を繰り返した。次々と重い病に襲われ、ほとんど家にひきこもったままの生活に。治療費もかさんで、どん底の日々が10年以上続いたという。


妻の斎藤陽子さん:
すごく大変やった

三女の畑中千里さん:
薬代と病院代で蓄えは常に無かったよね

斎藤陽子さん:
ほんで借金したり、もうとにかくきりきり舞いでした。思い出したくない


斎藤勝さん:
だからもう、死んだほうがええなって、そんなことばっかしか考えなかったね。涙出てくる、考えると。本当に死にたかったね


そんな時、娘の千里さんが1台のミシンの修理を斎藤さんに頼んだことが、転機になった。

娘のミシン修理が“職人魂”に火をつける…「世紀の大発見」も?


畑中千里さん:
たまたま私のミシンが壊れたから、修理を頼んだら布団から出てきて、「修理してくれるかな、その時だけでも せめて腕まくりして直してくれたらな」という思いだけで持っていきました。それではじめてミシンに出会った感じですね

壊れたミシンを動かしているうちに、眠っていた職人魂に火がついた。


斎藤勝さん:
例えばこういう布をね、(縫って)こうやったら、うまいこと縫えとるなって思って、それが興味わいたわけやね。これやったら何かできるなと思って

畑中千里さん:
そしたら、私が大きな「がま口バック」を作ってくれたらうれしいなと思って。私が持ちたいし、好きだから

82歳で始めたミシンだったが、元々電気工で手先が器用だったこともあり、その魅力にのめり込んだ。

斎藤勝さん:
(数本のネクタイ生地を)つなぎ合わせて、一枚の生地にしたんやわ。ほめてくれるかと思ったら、こんなんは昔からあると…


畑中千里さん:
パッチワーク…(笑)。世紀の大発見をしたかのように、すごく威張ってきて

斎藤勝さん:
僕は世紀の大発見だと思ったわね。自慢しとったら、こんなんはあるって。そんでこの中はね、防水のために何か無いかなと思って、家内の自転車カバーを使ってえらい怒られてね


斎藤陽子さん:
朝起きたら、自転車カバーが無かった(笑)

ツイッターでバズって注文殺到 ユーザーからは励ましの手紙も


独学でブックカバーやポーチなどを次から次へと作り始めた斎藤さん。


孫の助言で自慢の「がま口バッグ」の写真をツイッターにアップしたところ、バズって注文が殺到。


「1年半以上もの待ち」となった。


斎藤勝さん:
びっくりしたさ、いっぺんに何百って注文が来てさ。アメリカンドリームや!


斎藤勝さん:
励ましのお手紙が来るでしょう。私が「ラブレターが来た!」って喜んどる

ユーザーから手紙も届いた。


<ユーザーからの手紙>
「素敵ながま口バッグと巡り合わせていただき、ありがとうございました。」
「大切に使わせていただきます!」

すべて、斎藤さんの宝物だ。


斎藤勝さん:
うちの母ちゃんが一生懸命磨いてくれてさ

斎藤さんは、バッグが売れたお金で陽子さんに指輪をプレゼントした。


斎藤陽子さん:
もう感謝やわね。嬉しさと、みんなに(指輪を)見せ歩いた

斎藤勝さん:
歳なんて関係ないよ。そんなもん、僕は82歳ではじめたなんて気にしてないもん。やっとる時は若いつもりでやっとるもん


「ミシンは神様からの授かりもの、褒美やと思っとる」と話す斎藤さん。今日もミシンを走らせる。

(東海テレビ)

(FNNプライムオンライン1月13日掲載。元記事はこちら

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