沖縄から国防を見つめる 台湾有事の可能性は?安全保障政策に翻弄された1年【沖縄発】

政治・外交

2022年はロシアのウクライナ侵攻に始まり台湾海峡での緊張の高まりなど、日本周辺の安全保障環境が目まぐるしく変化した。この動きに翻弄された沖縄の1年を振り返る。

軍事演習のミサイル 与那国島近海に着弾

2022年8月5日、日本最西端の国境の島・与那国島。
まだ夜も明けきらぬ漁港は慌ただしくなっていた。

与那国漁協の方:
お願いします。作業中止です


2022年8月4日、中国が台湾周辺で実施した軍事演習で発射した弾道ミサイル5発が、与那国島近海や日本のEEZに初めて着弾。


与那国漁協は操業中の漁船の安否を確認し速やかに港に戻るよう呼びかけていた。

与那国町漁協協同組合 嵩西茂則 組合長:
台湾を横断して着弾したという事なので、非常に危険度が高いと思います。死活問題どころか、人命に関わりますから


中国の軍事演習について国や県からの情報もなく漁師たちは戸惑うばかりだった。

世界・日本周辺の安全保障環境の変化

2022年2月、ロシアがウクライナを侵攻。
世界の、そして日本周辺の安全保障環境がにわかにざわつき始め、「戦争」の二文字が強く意識させられた。


2022年5月に行われた日米首脳会談。

岸田首相:
地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中、バイデン大統領とは日米同盟の抑止力、対処力を早急に強化する必要があることを再確認しました


日米が意識するのは中国が圧力を強める台湾海峡だ。
台湾有事はロシアのウクライナ侵攻で現実味を増したと言われた。

国際政治に詳しい沖縄国際大学の野添文彬准教授はどのように見るのだろうか。

沖縄国際大学 野添文彬 准教授:
アメリカの下院議長が台湾に訪問するっていうこともあったりして、中国の台湾に対する圧力が非常に強くなる中でそれに対してアメリカも台湾周辺で訓練などを激化するなどして、沖縄周辺の安全保障環境って非常に激化したというふうに思いますね


2022年8月のアメリカ下院議長が25年ぶりに台湾訪問。
これに反発した中国は台湾を囲むように大規模な軍事演習を実施した。


この時発射されたのが日本のEEZや与那国島近海に撃ち込まれた弾道ミサイルだった。
アメリカと中国の軍事的緊張が高まれば、そのあおりを沖縄が受けてしまうということを如実に物語る事態だった。

日本の安全保障政策の大転換

こうした安全保障環境の変化で高まる有事に対する国民の不安や危機感を逆手にとる形で政府は安全保障政策の大転換に踏み切る。

岸田首相:
相手に攻撃を思い留まらせる抑止力となる「反撃能力」は今後不可欠となる能力です。専守防衛の堅持、平和国家としての日本の歩みは今後とも不変です


閣議決定されたのは安全保障関連の3文書。
抑止力の維持・向上へ新たに盛り込まれたのが、敵国内に存在するミサイル発射基地などを直接攻撃できる敵基地攻撃能力、いわゆる「反撃能力」の保有だった。


戦後日本が一貫してきた「専守防衛」を逸脱すると反対の声も上がるなか、政府は2023年から5年間の防衛費を現在の水準の1.5倍以上にあたる43兆円とするなど「防衛力強化」を強気に推し進める。


正当性を盾に強行する政府

この中で重要な地域とされているのが沖縄を含めた南西地域だ。
沖縄に配備されている自衛隊の増強に始まり、長距離射程ミサイルの配備、民間の空港や港湾などの公共インフラの利用拡大が今後進められる。


沖縄が本土に復帰して50年、いまだ過重なアメリカ軍基地負担が押し付けられる中、自衛隊の増強が進められることに玉城知事は…

玉城知事:
米軍基地の整理縮小が現実的に進んでいない中で自衛隊配備の増強が重なっていくことについて、多くの県民も不安を抱かざるを得ない。沖縄だけが日米の安全保障を担えばいいという方向性を私は正しい方向性ではない


沖縄における軍事強化の動きはアメリカ軍側でも顕著になっている。

50年一度も実施されなかった訓練

2022年2月、アメリカ海兵隊は那覇軍港で大規模な訓練を実施した。
本土復帰から50年一度も行われてこなかった航空機を使った訓練が繰り返されるようになり、県や那覇市は日米合意に反する運用だと反発を強めている。


こうした動きの一方で、アメリカ軍は嘉手納基地に配備されたF15戦闘機を機体の老朽化を理由に段階的に退役させると発表。

台湾有事における最前線の基地として重要視されてきた嘉手納基地だが、F15戦闘機にかわる恒久的な部隊はいまだ決まらず、F22戦闘機がローテーションで暫定配備されるに留まっている。


この背景には中国のミサイル能力の向上で、いわゆる嘉手納基地が「射程圏内」に納まるため軍事的な戦略の見直しが迫られている事もあり、これは「在沖アメリカ軍基地」の存在意義が揺らいでいるという見方もできる。

与那国島では自衛隊の機動戦闘車が走行

日米統合共同演習アメリカ軍が基地の重要性を疑問視するような動きがある中、自衛隊の役割強化に向けた動きが加速している。

2022年11月自衛隊とアメリカ軍が実施した日米共同統合演習。

台湾にもっとも近い与那国島では105ミリ砲を搭載した自衛隊の機動戦闘車が県内の公道を初めて走行し、島が戦場となり得る有事の足音が迫っているとの印象を与えた。


与那国町民:
遺憾だよ。大変だよ。子供たちに戦争が始まるよというのを見せるような格好だよ。基地があるということは狙われるんだよ。どこからでも。ということは住民も被害にあうんだよ


与那国町民:
今戦争が始まったら与那国島はミサイル1つで終わりじゃないですか。守ってくれるのはありがたいことではあるんですよ。だから私は賛成派です


日本全体で安全保障政策の議論を

南西諸島の自衛隊増強の理由としてあげられる台湾有事、叫ばれる危機感に対し、いま現実に起こる可能性はあるのだろうか。

沖縄国際大学 野添文彬 准教授:
もし中国が台湾侵攻に失敗した場合は、台湾の体制そのものが崩壊するようなそういうリスクも中国側には当然あるわけですね、可能性は高まっているかもしれないけれども、それをあまりにも過剰に強調しすぎると、かえって危機を煽ってしまうっていう可能性があると思うんですね


沖縄国際大学 野添文彬 准教授:
日本側もそういう危機を煽りすぎないで、いかに戦争を回避するかっていうそういう対話のパイプっていうのも維持したまま外交をやっていくということが大事だと思いますね

 

 

野添准教授は本土復帰から50年が経っても変わらない沖縄の現状について、日本全体で関心を持ちそれを踏まえて安全保障政策を考えてほしいと話す。

沖縄国際大学 野添文彬 准教授:
やはり沖縄はいざというときに戦争になりかねない場所ですので、しかもそれをかつて経験してる、そういう戦争のリアルっていうのは日本全国でも共有して、やっぱりその基地負担であったり安全保障の負担を沖縄だけに押し付けるという状況は、やっぱ見直されるべきだと思いますね


基地のない島を願って本土に復帰してから2022年で50年、沖縄はいまだ基地があるが故の葛藤に苛まれ、翻弄され続けている。

(FNNプライムオンライン1月16日掲載。元記事はこちら

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