すすむ“牛乳離れ” 酪農家は廃業の危機 「日本の牛乳が消えてしまう」【福岡発】

経済・ビジネス

学校給食などで当たり前のように登場し、子どもの頃から身近な存在の牛乳。しかし、いま“牛乳離れ”が叫ばれ、消費の落ち込みが進行している。さらに、それに追い打ちをかける深刻な問題も。
牛乳の生産現場で一体何が?

“牛乳値上がり” 背景に一体何が

オーブンの中でグツグツと焼かれるホワイトソース。完成したのは大きなハンバーグが上に乗ったグラタン。寒い季節にピッタリのひと皿だ。


この熱々グラタンを提供しているのは、西鉄久留米駅近くに2021年にオープンした「ノンノカフェ」。

テレビ西日本・赤木希アナウンサー:
うわぁー!チーズもたっぷり伸びてとってもおいしそうな熱々グラタン。いただきます…。すごく濃厚でクリーミーでおいしい!ハンバーグにまろやかなホワイトソースが合っていて、全体のバランス抜群です

「ノンノカフェ」のグラタンをいただく赤木アナ
「ノンノカフェ」のグラタンをいただく赤木アナ

完売する日もあるという人気メニューだが、こちらのグラタンにも物価高騰の波が押し寄せている。
中でも一番影響を受けているというのが…。

ノンノカフェ・氷室紀夫さん:
グラタンに牛乳を結構使うので、最近牛乳が結構値上がりしたのが痛いなと


一番の痛手となっていたのが、グラタンの命とも言える牛乳の値上げなのだ。こちらの店では1リットルの牛乳を1日に10本ほど使うという。

ノンノカフェ・氷室紀夫さん:
値上がりは30円くらいですかね、1本当たり

2カ月ほど前は1本180円だった牛乳が、現在は210円に値上がりしている。


しかし、人気の「スパゲティグラタン」の価格は、1,155円から1,210円に変更と55円の値上げにとどめるなど、客に配慮した努力を続けている。
私たちの食卓に欠かせない「牛乳」にいま何が起きているのか。

酪農家を苦しめる「コストの上昇」

午前7時、久留米市の永田ブルースカイファーム。

テレビ西日本・川崎健太キャスター:
久留米市の牧場にやってきました。酪農家の朝は早いですよ。牛さん、ずらっと並んでます。朝7時なんですけど、すでに搾乳、乳搾りが始まっています


約60年続く牧場、永田ブルースカイファーム。全体で300頭ほどの乳牛を飼育している県内でも有数の規模の牧場だ。酪農一家で育った永田さんは、これまでにない「危機感」を感じているという。


永田ブルースカイファーム・永田弘さん:
私も40年やっているが、経験したことない激震に見舞われていると思う

テレビ西日本・川崎健太キャスター:
いま、どういうことが課題?

永田ブルースカイファーム・永田弘さん:
海外に依存している輸入牧草や穀物が、コロナ前から少しずつ自給が世界的にひっ迫している状況。1番は配合飼料。北米のトウモロコシ、南米の小麦、そこに昔はウクライナの小麦も入っていたんだろうと。その辺が全面ストップになっているので


テレビ西日本・川崎健太キャスター:
いくらぐらいコスト上がっている?

永田ブルースカイファーム・永田弘さん:
年間5,000万円アップ。エサ代だけで

テレビ西日本・川崎健太キャスター:
年間5,000万円!?

牧場の経営を圧迫しているのは、ウクライナ戦争や円安を背景にした「世界的な飼料危機」と、それにともなう「コストの高騰」。1年間にかかるエサ代は5,000万円増えて1億5,000万円に上昇。それに加えて電気代や燃料費の高騰も追い打ちをかけている。


コスト分をある程度牛乳価格に転嫁させたいところだが、実は牛乳のもとになる生乳の買い取り価格は生産者が自分たちで決められる仕組みでなく、乳業メーカーと農協の話し合いで決定されるのでコスト分がなかなか反映されにくい。


牛乳の小売価格は2018年1月が1リットル209円で、その後ほぼ変わっていない。2022年11月に数%上がって235円となったが、この程度では苦しい経営状況は変わらないという。つまり、搾れば搾るほど赤字で借金が膨らみ続けているところも多いのだ。

永田ブルースカイファーム・永田弘さん:
高くなったからといって、エサを与えないわけにはいかない。自分たちのご飯を削ってでも牛に食べさせないと


「自分たちの身を削る」牛乳生産者の苦悩は、すでに限界を超えているという。

永田ブルースカイファーム・永田弘さん:
この半年で日本の酪農家戸数は400軒ぐらいが見切りをつけられていて、廃業が進んでいくのかなと。赤字じゃやっている意味はないし

「日本の牛乳が消えてしまう」…迫る酪農業の崩壊

急速に進んでいる「酪農家の廃業」。ピーク時には41万戸以上いた日本の酪農家は現在わずか1万3,000戸ほど。60年前と比べ30分の1にまで減少している。酪農経営が高騰するコストに見合わなくなってきたことから、廃業を選択する生産者が増え続けているという。全国の乳牛の酪農家はコロナ前から約1,700戸減少し、全体の1割以上が廃業している。


永田ブルースカイファーム・永田弘さん:
いままでは後継者がいなくて、ある程度の年齢になった人たちが引退という形で廃業。ここ1年ぐらいは中堅・若手が早めに見切りをつけて、ほかの道を選択している。この波が収まったときに、周りを見た時に、誰が残っているんだという状況になるのでは


まさに酪農業が崩壊するピンチに陥っている。

永田ブルースカイファーム・永田弘さん:
現在の酪農家の多くは借金して続けるか、辞めるか、という崖っぷちに立たされている。
エサの国産化を進めつつ、行政支援をもっと強化してもらわないと日本の牛乳が消えてしまう

国産の牛乳が手軽に飲める環境というのは酪農家が作ってきた「日本の文化」とも言えるが、牛乳の消費を増やしていかない限り、この文化は消えてしまうかもしれない。

(テレビ西日本)

(FNNプライムオンライン1月16日掲載。元記事はこちら

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