上海の病院に突然の「通達」 オミクロン派生型「XBB」を“コントロール”したい中国…コロナ累計感染者は9億人に

国際・海外

中国の衛生当局は1月14日、中国政府が厳格に運用してきたゼロコロナ政策が緩和された直後の2022年12月8日から今月12日にかけて、新型コロナに関連する医療機関での死者が5万9938人だったと発表した。

この数字は1日あたり約1600人以上が死んでいる数字となり、中国がこれまで発表してきた1日あたり数人の死者数とは大きく異なっていた。

突然ともいえる今回の発表は、「中国政府の発表は実態を正確に反映していない」という国際社会の批判に対し、一転して多くの死者が出ていることを認めた形になる。

北京市では2022年12月上旬から中旬にかけて感染拡大
北京市では2022年12月上旬から中旬にかけて感染拡大

これに先立ち、北京大学の研究チームが、1月11日までの新型コロナの感染者(中国全土)は累計で約9億人いるという報告書をまとめた。

相次いで新型コロナに関連する数字を大きく訂正してきた中国で、今、何が起きているのか。

パークウェイ医療 友成暁子医師
パークウェイ医療 友成暁子医師

上海の国際病院「パークウェイ医療」に勤務する友成曉子医師は、「中国は新たに派生したオミクロン株の派生型『XBB』が第2波を作ることを懸念している」と指摘する。

衛生当局から突然の“通達”

――どんな通達が来たのでしょうか?

1月13日の夜遅くに、私たちの方に「7日以内の渡航歴があるコロナ患者は限定された発熱指定病院のみで診るように」という通達が来ました。以前はどのようなコロナ陽性者でも、どの病院で診察、治療をしても良かったのですが、この通達によって急に方針が変わり、患者の渡航歴を必ず確認し、7日以内に海外への渡航歴がある患者は自分たちの病院で診られないことになりました。

病院の発熱外来にやってくる市民(※上海市の別の病院)
病院の発熱外来にやってくる市民(※上海市の別の病院)

――突然来た通達の理由は?

公式の発表はないので、あくまでも推測になりますが、急にこのような通達があるというのは、中国側がオミクロン株から派生したXBBを懸念しているのだと思います。実際、通達の中にも「XBB」という単語が入っていて、XBBを限定した病院で取り囲めるように発熱指定病院に送るようにという言葉が入っていました。

今、XBBは明らかに上海市内で増えています。中国政府は、海外からの入国者がXBBを中国に持ち込み、それにより第2波がやってくるのを懸念しているのだと思います。

――XBBによる懸念とは?

XBBは日本やアメリカ、欧米諸国などで接種しているmRNAワクチンをきちんと打っていても、ウイルスがすり抜けてしまい、効果が少ないという報告もあると聞いています。ただ、中国ではそもそもmRNAワクチンを接種していないので、再び大きな感染拡大になるのかなど、予測が立たないというのが正直なところです。

中国人は累計で9億人がコロナに感染したと言われていて、直近でオミクロン株に対する感染後に免疫ができている時に、XBBに感染するのか、また感染した際にどのくらいの重症度が出るのかなど、これは諸外国と中国は違う状況にあります。XBBに感染して第2波が起きるかもしれないし、逆にXBBが中国に入ってきたけれど、感染拡大にはならなかったということもあり得ます。これは本当に分からないので、今後のトレンドをきちんと見ていくことが大切です。

北京市で中国製ワクチンを接種する筆者
北京市で中国製ワクチンを接種する筆者

中国はXBBを管理し囲い込もうとしている」

――今後、どのような対応になる?

渡航歴のある陽性者は、「三級甲等医院」と呼ばれる最高ランクに位置づけられる病院の発熱外来などで受け入れられるのだと思います。上海では非常に早く政策の転換がされたので、あとはこれに対してどのくらいの厳しさでやっていくのかが決まるのだと思います。

中国はこういったやり方でXBBを持っている海外からの帰国者をできるだけ管理して囲い込んでコントロールし、第2波をくい止めようとしているのが推測されます。

取材に応じる友成医師(2023年1月14日)
取材に応じる友成医師(2023年1月14日)

衛生当局から通達された、渡航歴ありのコロナ患者の囲い込み方法は次のようになります。

1. コロナ陽性が診断された時点で渡航歴を聴取すること。7日以内の海外渡航歴があるものは指定の公立発熱病院に行くこと。

2. 渡航歴あり、コロナ陽性の患者は鼻の奥からPCR検査をすること。

3. このPCR検査で強陽性が出た場合は、速やかに遺伝子配列検査に検体を提出すること。

PCR検査にはCt値と言う値があり、これは低ければ低いほどウイルス量が高いとされています。中国の国立感染症対策センターの規定ではCt値が37だと陽性、30以下だと感染力を持った患者ということになっています。また、検査方法に「鼻の奥から」と指定されているところに、中国側がきちんと正確なXBBの陽性者数を把握したいという意志を感じます。

ベッド満床のためロビーに収容される患者ら(※上海市の別の病院)
ベッド満床のためロビーに収容される患者ら(※上海市の別の病院)

――中国の市民はXBBをどのように捉えている?

市民の間では「今後、第2波、第3波がやってくるのでは」と懸念されている人は多く、その前に解熱剤などの薬を購入し備蓄しておくという人が多いと聞いています。

また、今後心配な点は、中国に新型コロナの第2波が早い段階でやってきて中等症患者が増え入院となった場合、第1波の対応にあたり疲弊している医療従事者や、補充されていない薬などがある中で危機的な状況を招いてしまう可能性があります。

天津市の国際空港で再会を喜ぶ中国人の家族(2023年1月8日)
天津市の国際空港で再会を喜ぶ中国人の家族(2023年1月8日)

中国の水際対策に影響を与える可能性も

中国で長く続いたゼロコロナ政策が緩和され、1月8日からは入国の際の隔離も撤廃された。今、中国から外国に出たいと考えているのは、中国人よりも中国で長く働いている外国人などが、春節休みを利用して母国に帰りたい、家族に会いたいというのが圧倒的に多いと思われる。

しかし、現在、アメリカで急速に広がっているとされるオミクロン株の派生型「XBB.1.5」が、海外からの帰国者を通して中国で広がり重症化するような事が起きれば、今後、中国に入国する際の水際対策に影響を与える可能性もあるだろう。

ゼロコロナ政策で打撃を受けた経済を回復させるために、中国政府が半ば強制的に動かした「人の往来」によって、果たして第2波はやってくるのか。

中国ではまもなく延べ20億人以上が移動する大型連休の春節が始まる。

(インタビューは1月14日に実施 聞き手:FNN北京支局 河村忠徳)

(FNNプライムオンライン1月16日掲載。元記事はこちら

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