菅義偉前首相の豹変は岸田おろしの始まりか、それとも首相再登板への狼煙か

政治・外交

菅さんが元気だ!

菅義偉前首相は18日のラジオ番組で、防衛力強化に伴う増税について、「例えば行政改革でいくらとか、いろんなことを示した上で、できない部分は増税させてほしい、とかそういう議論がなさ過ぎた」と述べ、岸田文雄首相のやり方に異議を唱えた。

ベトナムを訪問先し、チン首相と会談した菅前首相(9日)
ベトナムを訪問先し、チン首相と会談した菅前首相(9日)

その1週間ほど前、菅氏は訪問先のベトナムで、「政治家は派閥の意向を優先するような事はすべきではない。歴代首相の多くは派閥を出て務めていた」と述べて、宏池会(岸田派)会長を続けている岸田氏を批判した。

また、岸田政権が打ち出した「異次元の少子化対策」の財源として消費増税が取りざたされていることについて「少子化対策は極めて重要だと思うが、消費税を増税してやるということは全く考えていない」と述べて、岸田政権の「増税指向」をけん制した。

安倍元首相の国葬で弔辞を読む菅前首相(2022年9月27日)
安倍元首相の国葬で弔辞を読む菅前首相(2022年9月27日)

昨年9月に菅氏は安倍晋三元首相の国葬で感動的な弔辞を読み、会場では葬儀では異例の拍手の波が広がった。その頃、菅氏の話を聞く機会があったのだが、やや元気がないように見えたのが気になっていた。菅氏は今回復活したのだろうか。

岸田おろしと菅再登板の可能性

今の自民党内の勢力分布は、主流3派の岸田氏、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長による3頭政治と言われるが、実は萩生田光一政調会長や世耕弘成参院幹事長ら多くの実力者を要する最大派閥の安倍派も事実上の主流派だ。これに対し総裁選で河野太郎氏を担いだ菅グループや二階派は反主流派ということになっている。

総裁選で河野太郎氏を担いだ菅グループは“反主流派”
総裁選で河野太郎氏を担いだ菅グループは“反主流派”

だから菅氏が岸田批判をすれば、干されている反主流派からは歓声が上がる。主流派の「ふり」をしている?安倍派内にも保守系を中心に岸田首相を面白く思ってない人がいる。今の構図だと岸田氏の後継は茂木氏になる可能性があるのだが、菅氏周辺には菅再登板を願う声も強い。

だが岸田おろしも菅再登板も今の時点では100%ない。それは安倍氏が長い期間をかけてデザインしてきた日本の防衛力強化の総仕上げを岸田氏が後を継いで着実に実現しようとしているからだ。実は1兆円程度の増税は全体のスキームを見れば大した話ではない。だからこの動きを止めることは主流派はもちろん、安倍派も、そして菅氏自身も望んでないだろう。

菅さんと岸田さんは仲良しではない

ただ菅氏はもともと岸田氏をあまり評価していなかった。安倍政権時代に4人組(安倍、菅、麻生、甘利明元幹事長)が会って、後継に岸田氏の名前が出ると、残りの3人はそうでもないのに菅氏だけが猛反対したという。

菅氏は岸田氏をあまり評価していなかった…
菅氏は岸田氏をあまり評価していなかった…

菅退陣も岸田氏による「二階おろし」に動揺した菅氏が自滅した形だった。岸田内閣の改造では人を通して副総理を打診されたが菅氏は断った。つまりこの2人は「仲良し」というわけではない。

菅氏は岸田氏を追い落としたりはしない。それは亡き安倍氏への仁義だ。ただ岸田氏が突然退陣に追い込まれたり、あるいは安倍氏の遺産をきちんと引き継がなかったりしたら菅氏にもスイッチが入るかもしれない。やはり岸田氏にとって菅氏は最も手強い人であることは間違いないのだ。

【執筆:フジテレビ上席解説委員 平井文夫】

(FNNプライムオンライン1月20日掲載。元記事はこちら

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