“100年前の縫い方”で「美しいジーンズ」作る“ボーズ” 「救ってくれたのが家庭用ミシン」【石川発】

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日本海に突き出た能登半島。そこに、二足のわらじをはく珍しいお坊さんがいる。そのうちの1つがデニムを縫うことだというから驚きだ。僧侶とジーンズ職人、何故二刀流の道に進んだのか取材した。

”ボーズ”が”ソーイング” なぜ?


遍照寺 僧侶 前野真慶さん:
曼荼羅~


石川県能登町にある真言宗の寺「遍照寺(へんじょうじ)」。この寺の僧侶、前野真慶(まえのしんけい)さん(38)は、ある「二刀流」の使い手だ。


前野さん:
私ここの副住職をしながらデニムを縫っています。二足のわらじを履いております。


お坊さんがジーンズ職人!?


僧侶とジーンズ職人、二足のわらじをはく前野さんに注目した。


石川県能登町白丸(しろまる)にある遍照寺(へんじょうじ)。


その隣にあるのが…「ボーズソーイング」。前野さんの工房だ。



工房の中には年季の入ったミシンに…。


完成したジーンズ…。


しかし、なぜボーズがソーイングしているのだろうか?


前野さん:
大学卒業してフリーターをしていてそのころに激やせしてしまって。お金がないので着れる服が買えなかった。そこで家庭用ミシンを買ってジーパンを始めたんです。


二刀流になるターニングポイント

大学卒業後、1カ月でマイナス20キロ。それがターニングポイントとなった。


前野さん:
絶望の淵やったんですよ。激やせして着れる服ない、お金ない、その時に僕を救ってくれたのが家庭用ミシンやったんです。


ミシンにはまった前野さん。その後、岐阜の縫製工場で5年ほど勤務したが…。


前野さん:
父からお寺を手伝ってくれないかと。


住職である父のすすめで和歌山県の高野山にあるお坊さん養成学校で1年間の修行。その後、能登に帰ってきた。


しかし…

前野さん:
お寺の状況、会計の方が思ったよりも良くなくて。


前野さんの寺は檀家を持たない祈祷寺(きとうでら)。


このため財政的に厳しかった。そこで、2020年、ボーズソーイングを立ち上げたと言う。


前野さん:
自分の好きな物を手に入れた時ってすごく満足すると思うんです。お坊さんのすることって、誰かの心を満たすこと。この2つがリンクするので、よしミシンを始めましょうと。

 


ジーンズは一般的に約10台ほどのミシンを使って縫い進める。


しかし前野さんが使うのはたった3台だ。


前野さん:
お坊さんが物作りをするということで、いかにお坊さんの思想を挟んでいくか。


前野さん:
お坊さんの簡素に生きるっていう思想と、ミシンも簡素化して物を作るというところがリンクするんじゃないかなと。


100年前の「手のかかる縫い方」

そんな前野さんが作るジーンズ。最大の特徴はその縫い方だ。


前野さん:
ウエストオーバーオール時代に使われていた方法で、折って布端をくるんでここにステッチをかける、この折れたのを伏せていく。ここにステッチをかけてこれで折伏せ。



100年以上前に使われていた本縫い折伏せ。2本針のミシンなら一度ですむ作業も2倍の手間をかけて1本の針で縫う地道な作業だ。


前野さん:
その手間いる?ってめっちゃ言われるんですけど、(縫い目を)きれいに見せるには、それしかなかった。



生産性や効率化とは真逆。


昔ながら、手作業ならではの温かさが前野さんが縫うジーンズの魅力だ。


そして…

前野さん:
できました!


約3時間かけてジーンズが完成。


2本針で縫った物と比べると裏の縫い目の細かさと美しさが分かる。


この美しいジーンズを求めて今では県外からわざわざ買いに来るお客さんもいるそうだ。


前野さん:
誰かが喜んでくれる物を作って、それで喜んでくれて、それで僕も喜ぶを突き詰めていければいいなと思います。


寺で人々の心の安定を説き…


ジーンズで人々の心を満たしたい…


お坊さんの2足のわらじにはそんな思いが込められている。

(石川テレビ)

(FNNプライムオンライン1月21日掲載。元記事はこちら

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