「吉田麻也は“神様”」カタールW杯で日本代表を支えたシェフらが明かした大会の裏側と、敗退後の選手たちの知られざる行動

スポーツ

日本中が盛り上がったFIFAワールドカップカタール2022。

この大会でベスト16に入った日本代表、その選手たちを陰で支えたチームスタッフからこの2人に話を聞いた。チームの厨房の主、西芳照シェフ。そしてユニフォームや練習道具などを管理し、選手を迎え入れるロッカールームの番人、山根威信キットマネージャーの2人だ。


“食”の勝利のルーティーンや、勝利直後、敗退直後の選手たちの知られざる行動など、日本代表選手たちのテレビでは伝えられなかったW杯秘話を2人が明かした。

「充実した」「やりやすい」それぞれが感じた今大会

2006年に行われたW杯ドイツ大会予選からサッカー日本代表に帯同し、チームの“食”という面でサポートを続けてきた西芳照シェフ。カタール大会は今までになくコンパクトな大会で充実していたという。


――西さんはW杯を何回も経験されていますが、このカタールW杯はどんな大会でしたか?
西芳照シェフ:
今回5大会目でしたが、今まではベースキャンプ地があって、移動があって、試合会場へ行って食事作って、試合が終わったらまたチャーター機で戻って帰ってという感じでした。今大会はそういう移動が無く、ホテルからスタジアムへ行って帰ってきてという。今までない、初めてほとんど全食、朝昼晩と選手の皆さんに提供できたというので、充実した大会でした。

――選手たちの喜怒哀楽を目の当たりにする時間も長かったと思います。
西シェフ:

ドイツ戦、試合が終わって帰って来て…そんなに喜んでいる雰囲気がない。選手の皆さん、もっともっと上を目指していたっていうのが、今までの大会と違うところですかね。


日本代表が使用する用具を管理するスタッフで、選手やスタッフが着用するウェアの準備、トレーニングで使用するボールの管理、試合前のユニホームの用意などを担う山根威信キットマネージャーも同様に5大会目だ。

――この大会、何か今までと違うところはありましたか?
山根威信キットマネージャー:

コンパクトな大会だったので移動が無く、キットマーネージャーの立場からしたらすごくやりやすい大会で、選手も移動は結構ストレスになりますが、そういう意味でも選手の負担が無い大会だったので、大会としては選手にとっても良かったのかなと思っています。

試合前3日間の夕食メニューは“勝利のルーティーン”

西シェフが管轄する代表の食。同じメニューが出ないように工夫をしていたという。


「まず3日前に通常ですとハンバーグ。2日前、銀ダラの西京焼きで、試合の前日はうなぎのかば焼きと。そういう風に決まっていました。
だからそのルーテーィンで『試合の何日目だな』っていうようなのが分かるところもあります」

――なぜこの順番なんですか?
西シェフ:
まず一番は、選手に炭水化物をたくさん取ってもらう。試合の3日前は炭水化物をたくさん取って脂質をなるべく取らない。ハンバーグをおかずにしてご飯をたくさん食べてもらう。(うなぎの)かば焼きもそうですし、あとは銀ダラの西京焼きを5、6切れ持っていく人も。

――(銀ダラの西京焼きは)すごい取り合いになって、売り切れになってしまうと聞きました。西シェフ:
そうですね。今回銀ダラ(の西京焼き)は売り切れになりましたね(笑)。

山根キットマネージャー:
僕らスタッフは選手が食べた後に取りに行くんですけど、結構品薄な時がありました(笑)。


西シェフ:
早い者勝ちですから。最初出した時は長友選手がお皿に7、8枚くらい持っていっていました。最後の方に、選手の皆さんの銀ダラが無くなると、他の選手が長友選手のところに行って「お前取り過ぎだろ」と言って、長友選手が隠したりして。

――逆に作ったレシピに対して、例えば「これを抜いて欲しい」とかグルテンフリーにされる方とかは?
西シェフ:

ありますね、そういうのは。そういうことはなるべく選手の皆さんの言うことを聞くようにしています。「ラムアレルギーだから」という選手もいましたし、「つみれ美味しいからまたお願いします」とか。長友選手とかはDHA、EPAを摂取して血液の流れを良くして栄養を送るという意味でも青魚を(取る)。そういう選手もいらっしゃいました。青魚は他の選手の皆さんにも人気でしたね。

ベスト16を決めたスペイン戦の後に西シェフが涙

――スペイン戦の後、ベスト16を決めた日本代表が宿舎に戻って食事をする際の映像では(西さんが)涙をふいているような場面も見えました。
西シェフ:

嬉しかったですね、本当に。

スペイン戦が終わった後の食事会場の雰囲気は、今までになかったです。会場から帰って来てあんなに喜び合うっていうのは。
普通はスタジアムから出る時、ロッカールームで「うわ~勝ったぞ!」みたいな形で、アドレナリン出して。そこでだんだん落ち着かせて、ホテルに戻ってくる時は「あれ試合あったのかな?」という感じなんですけど、スペイン戦の時だけはみんな喜び合っていました。


山根キットマネージャー:
キャプテンの吉田選手が、試合が終わって勝ってロッカーに戻ってきて「そう言えばさ、渋谷のスクランブル交差点盛り上がっているのかな?」「定点カメラみたいの何か出せる?」って言って。

やっぱり選手も意外と日本中の反応っていうのは気にはなっていて。やっぱり自分たちが活躍してプレーして、それが日本でどういうふうに影響を与えているかみたいなことは凄く気にしているので、それが一番わかるのが渋谷のスクランブル交差点の映像で。

警察の方が交通整理して、人がいるっていうのを見て、「俺たち、やったぞ」と、ロッカールームの中は盛り上がっていました。

吉田選手から西シェフへ「1日お休み」のプレゼント

大会の中で西シェフは1日だけプレゼントとしての“お休み”があったという。滅多に無い大会中のお休みをくれたのは、チームのキャプテンだった。

西シェフ:
ドイツ戦の翌日の朝、朝食を終わった後に吉田さんがスタッフの人に「西さんに今日これ終わったら休んでいただきたいんですけど、休みあげることってできますか?」と言われました。「えっ本当に?」って。普通は監督の許可をもらわないとダメなんでしょうけど、そこにいる人たちで「いっか」、みたいなね。

――意外とラフに決まったんですね。
西シェフ:

僕が疲れているからっていうのを見てくれて。吉田さん神様。

――ちなみに西さん、そのお休みは、どんな時間の使い方をしたんですか?
西シェフ:
その時はコックコートをちょっと部屋で洗濯して。洗濯をして終わった。

山根キットマネージャー:
(西シェフは)一番大変でしたよ。本当にそれこそ、僕たちは食事している時しか会わないんですけど、その前と後の準備と片付けがどう見てもあるんで。本当に朝食の準備から夕食終わった後まで働き通しだろうなと思うので。

大変でもやりがいのあった「選手の家族のケア」

山根キットマネージャー:
今回移動がなかったっていうこともあって、選手の家族がホテルの近い別棟に応援に来てくれていたんですね。

(今までは)試合の間に選手の家族に会えるっていうことがあまりなかったんですけど、今回は本当に選手の気持ちにプラスに働いたんじゃないかなと思っています。練習に行く時も、家族がフロントにいれば「行ってらっしゃい」と見送りもしてくれていたし、そういう意味で言ったら本当に一番の応援団が近くにいたというのはプラスに働いていたかと思うんです。


――コロナ禍で検査も大変だったんじゃないですか?
山根キットマネージャー:

そうですね、会う前に家族に検査してもらって、陰性を確認してから会いに行くという形でしっかりケアしていました。

――新しい取り組みでいい結果が出たのであれば、今後も続けていけるといいですよね。
山根キットマネージャー:

そうですね。これは選手にとって一ついいプラス材料かなと思うので、これは今後も継続していく方向になるんじゃないかなとは思います。

ベスト8をかけたクロアチア戦で惜しくも敗退。その夜、選手たちは…

山根キットマネージャー:
チームサロンって言って選手がちょっと集まって話せるような部屋があるんですけど、そこにもう15、6人ぐらいかな。選手たちはちょっとお酒も飲みながら今回の大会の話だったり、もう次の大会に向けての話だったり、どうステップアップしていこうかみたいな話はすごく熱く語っていたなっていうのは覚えています。

――その中にどういう選手が?
山根キットマネージャー:
年長者の長友選手、川島選手、吉田選手…。

西シェフ:
南野選手、柴崎選手、ほとんどみんないましたよね。

山根キットマネージャー:
そうですね、円になって。

西シェフ:
椅子が足りなかった。

山根キットマネージャー:
終わってちょっとお酒を飲んでいたんで、片付け整理しているスタッフにも「やっているから来てよ」みたいな形で選手も声を掛けてくれるんですよね。

――隅々までチームワークが一致団結している様子が垣間見える瞬間がたくさんありますね。
山根キットマネージャー:

選手もそうですけど、監督も部屋帰る時とかに用具部屋とかで僕らが作業をしていると、「お疲れ、まだやっているの?」みたいな声掛けてくれるし、選手もそういう形で「大丈夫?疲れてない?」とかって。「いやいや、逆だから、こっちが聞くほうだから」みたいな。すごく気にかけてくれましたね。

聞き手:渡辺和洋アナウンサー、新美有加アナウンサー

(FNNプライムオンライン1月21日掲載。元記事はこちら

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