書籍80万冊、文具20万品目超!大苦境の書店業界で北海道発企業・コーチャンフォーが生き抜く“リアル店舗”の強み

経済・ビジネス

家具・インテリアのニトリホールディングス、ドラッグストアのツルハホールディングスなど、北海道出身の企業の躍進は昨今、とどまることを知らない。

日本経済新聞の白鳥和生氏は、北海道の「小売」“ノーザンリテーラー”は、厳しい自然や経済環境で鍛えられ、企業経営者の多くはかつて北海道に渡った先祖のように「アンビシャス」の志を持っている人が多いと語る。

人口減少、少子高齢化など北海道にはさまざまな課題がある。その中でどんな逆境でも生き抜く強さを持ち、市場の拡大を続ける“ノーザンリテーラー”が、どのように立ち向かってきたのかを記した著書『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』(プレジデント社)から一部抜粋・再編集して紹介する。

リアル店舗だからこその「プラスα」

アマゾンなどのネット通販が拡大する中でもリアルな店舗にこだわる書店がある。北海道釧路市(くしろし)に本社を置き、書籍・文具販売を中核とする大型複合店「コーチャンフォー」を展開するリラィアブルだ。

5000平方メートルを超える広さの売り場を構えた、圧倒的な品ぞろえが最大の武器。さらに「プラスα」の機能提供で顧客を引きつける。

高齢者や子どもでも歩きやすいようにと配慮したワンフロアでの郊外出店が特徴で、コーチャンフォーを道内中心に8店舗を展開する。札幌市北区にある同社最大の「コーチャンフォー新川通り店」の売り場は約1万平方メートルもある。

書籍は約80万冊、文具は約20万品目超を店内で販売している。しかし、全国的に地域の書店は廃業が相次いでいる。

この現状に「欲しい本を指名買いするネット通販に対し、店頭でおもしろそうな本に出合ってもらう。店で商品を買うわくわく感を味わえるようにしたい」と佐藤暁哉社長は話す。

ネットの攻勢を逆手に取り、店に来ないと味わえないリアルならではの魅力アップを急いできた。

話題の作家のサイン会など大型書店で開催することが多いイベントはもちろん、リラィアブルが独自に売り場の魅力を発信し続ける取り組みの一つが、販売実績のランキングに基づいた書籍の陳列だ。

ジャンルごとに100位を超えるランキングを集計している(『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』より)
ジャンルごとに100位を超えるランキングを集計している(『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』より)

大型書店ではよくあるが、そのランキングは優に100位を超えるきめ細かさ。文庫、新書、コミック、雑誌など、店員が前週の販売を基にランキングを集計し、各ジャンルで区分けした棚を毎週月曜に入れ替える。

店名のコーチャンフォーは4頭立ての馬車を指す。書籍、文具、音楽CD、飲食店の4業態を同じ店内で手掛けることからそう名付けた。書籍をはじめ主要4業態に次ぐ新ジャンルに位置づけているのが、2018年春に始めた食品販売だ。

「コーチャンフォーマルシェ」と銘打ち、売り場一角の70〜130平方メートルのスペースに専門コーナーを設置。

成城石井から仕入れたワインをはじめドレッシングやジャム、菓子類などのほか、佐藤社長を筆頭に各店舗の担当者ら約10人で組織した「マルシェ開発チーム」が道内企業とコラボしたオリジナル商品も並べている。

2022年3月期の売上高は141億3600万円。日経MJ専門店調査によると、書店業界14位に付ける。2022年10月には茨城県つくば市に「コーチャンフォーつくば店」を開業した。

関東では若葉台店(東京都稲城市)に次ぐ2店舗目。本を売るだけという従来の枠にとらわれず、書店の可能性を追い続けている。

地元愛が強い北海道の人々

北海道の人たちは「北海道愛」が強い。民間の調査会社ブランド総合研究所の「第3回地域版SDGs調査2021」によると、47都道府県のうちで地元への愛着度が最も高かったのは3年連続で北海道だった。

居住者に対し「愛着がありますか」と聞いたところ、66.5%が「とても愛着がある」、19.9%が「やや愛着がある」と答えるなど、86.4%が北海道に愛着があると答えた。

一方、「全く愛着がない」は2.0%、「あまり愛着がない」は2.0%と、愛着がないと回答した人は4%という結果だった。

厳しい冬場の環境だが、豊かな自然に育まれ、海山ともに新鮮な食べ物がすぐに手に入る。野球の北海道日本ハムファイターズやサッカーの北海道コンサドーレ札幌といったプロスポーツ球団を持ち、道民が一丸となって応援できるステージも用意されている。

北海道在住者の所得に当たる道民所得は1人当たり283万2000円と全国平均(317万6000円)から34万円余り差がある。

(画像:イメージ)
(画像:イメージ)

しかし、開拓期からの互助の精神(例えば結婚式は会費制)が脈々と受け継がれ、北海道愛は揺るがない。

コンビニエンスストアのセイコーマートが道内首位のシェアを保っているのも北海道愛からかもしれない。実は北海道は全国の中で10万人当たりのコンビニの数が最も多い。

日本経済新聞社や帝国データバンクなどの調べ(2019年)によると、全国平均は44.6店に対して北海道は56.6店にのぼる。2位は山梨県の56.1店、3位は東京都の51.9店舗。

山梨県は県内のコンビニ店舗数が461店で全国36位だが、県人口が全国42位のため、10万人当たり店舗数が多くなった。3位の東京都は店舗数が7137店で首位だが、人口も1372万人と突出しているため、10万人当たりでは3位にとどまった。

もちろん北海道にはセイコーマート以外のコンビニもある。しかし、北海道内におけるセコマの店舗数シェアは36.2%とセブン‐イレブンを上回っている。地域のライフラインとしての役割を自認するとともに、道産原料へのこだわりなどが北海道民のセコマに対する支持につながっているはずだ。

ブランド総合研究所の別の調査「都道府県別魅力度ランキング」でも北海道は13年連続の1位(2021年)。9割近くの回答者が北海道を「魅力的」と答えた。知名度の高い地元産品が多く、訪れてみたい「観光意欲度」でも首位だった。

こうした外から見た北海道への憧れや支持が道民の誇りにもつながっているはずだ。

『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』(プレジデント社)白鳥和生著
『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』(プレジデント社)白鳥和生著

白鳥和生
日本経済新聞社編集総合編集センター調査グループ調査担当部長。小売、外食、卸、食品メーカー、流通政策を長く取材。2003年消費生活アドバイザー取得、2020年日本大学大学院総合社会情報研究科博士後期課程修了、博士(総合社会文化)。國學院大学および日本大学大学院の非常勤講師も務める。著書に『即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術』(CCCメディアハウス)などがある


 

(FNNプライムオンライン1月22日掲載。元記事はこちら

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