【若手刑務官が暴行】サンダルで尻を叩き、顔にスプレー噴射 なぜ続く?20年前にも死亡事件…元受刑者が名古屋刑務所の内情語る

社会

1月12日、ある問題を巡って都内で会見が行われた。

海渡雄一弁護士:
今、名古屋刑務所におけるたくさんの暴行事件が明らかになって、大きな問題となってきているわけですが…。

(1月12日)
(1月12日)

名古屋刑務所で明らかとなった、刑務官による暴行問題だ。

受刑者遺族:
兄の死の真相を知りたいです。そうじゃないと兄は浮かばれません。

会見で胸の内を明かしたのは、2022年3月、名古屋刑務所で服役中に死亡した受刑者の遺族。対面した遺体には不審な点がいくつもあったという。

2022年3月、服役中の兄が死亡「死の真相を知りたい。そうじゃないと浮かばれません」
2022年3月、服役中の兄が死亡「死の真相を知りたい。そうじゃないと浮かばれません」

受刑者遺族:
兄の体を見たんです。そしたら体全身、傷だらけで。これは間違いなく、兄も体罰を受けたんだと。

名古屋刑務所内で何が起きていたのか?

FNNは2022年まで服役していた元受刑者と接触。語られた名古屋刑務所での生活とは…。刑務官と受刑者の実態を取材した。

刑務官22人が関与 法相「理解できない」

斎藤健法相は、2021年11月から2022年年8月までに、名古屋刑務所で刑務官による受刑者への暴行などがあったという調査結果を発表した。


斎藤法相(2022年12月9日):
改善更生に向けて尽力すべき立場にある刑務官が、このような行為に及んでいたことは断じて許されず、極めて遺憾。



サンダルで尻を叩く、アルコールスプレーを顔にかける。

顔や手を叩くなどの行為も
顔や手を叩くなどの行為も

他にも顔や手を叩くなど、40代から60代の3人の受刑者に対し、独居房で一対一になった際に繰り返していたという。


関わった刑務官は22人。いずれも受刑者の生活全般の指導・監督などを担当していた。

「なぜ今回このようなこととなったか。私自身、正直理解できない」と苦言
「なぜ今回このようなこととなったか。私自身、正直理解できない」と苦言

斎藤法相は、さらに「あれだけの大きな事件を起こしておきながら、なぜ今回このようなこととなったか。私自身、正直理解できない」と苦言を呈した。


実は約20年前にも、名古屋刑務所で暴行事件が相次いだのだ。


2001年、男性受刑者が刑務官から、消防用のホースで下半身に放水を受けて死亡。


2002年には、男性受刑者2人が腹を革手錠付きのベルトで締めつけられ、1人が死亡、1人が重傷を負った。

7人は執行猶予付きの有罪判決、1人は無罪となった
7人は執行猶予付きの有罪判決、1人は無罪となった

一連の事件で、刑務官8人が特別公務員暴行陵虐致死傷の罪などで起訴。その後、無罪となった1人を除く7人に、執行猶予付きの有罪判決が確定した。

第三者委が意見も暴行続く 今回の問題は「氷山の一角」

この事件をきっかけに、刑務所の運営をチェックするための、弁護士や医師ら第三者でつくる「刑事施設視察委員会」の設置などが定められた。


しかし、受刑者の支援活動を行う海渡雄一弁護士(NPO法人 監獄人権センター代表)は、こう指摘する。


海渡雄一弁護士:
二度と起きないようにするために監獄法の改正というものが行われて、いろんな改革をしたはずなんですけど、それが十分機能していなかった。

法務省が公表した報告書
法務省が公表した報告書

法務省が公表した報告書によれば、視察委員会は2022年3月、「職員の言動や応対などに対する不満が相当数みられた」と、名古屋刑務所側に意見。


これに対し、刑務所側は「職員の不当な言動や対応はなかった」と回答した。

視察委員会と名古屋刑務所のがあった時期に、受刑者らへの暴行が続いていた
視察委員会と名古屋刑務所のがあった時期に、受刑者らへの暴行が続いていた

しかし、実はこのやり取りがあった時期には、今回発表された3人への暴行などが続いていたのだ。

今回の暴行問題は「氷山の一角ではないかと思う」
今回の暴行問題は「氷山の一角ではないかと思う」

海渡雄一弁護士:
きちんと調査すれば、少なくとも3月の段階で明らかにできたはず。22人もの人が、3人の受刑者に対して(暴行を)繰り返していたと言っていますけど、これは氷山の一角ではないかと思います。

名古屋刑務所で何が起きていたのか…。FNNは、刑務所内の事情を知る元受刑者を取材した。

「色々あったが信じられない」独居房での生活とは

2022年5月、2年の刑期を終え名古屋刑務所を出所した50代の男性。

愛知県内の運送会社で運転手として働く
愛知県内の運送会社で運転手として働く

現在は愛知県内の運送会社で、運転手として働いている。


元受刑者の男性:
やっぱり(刑務所に)務めていると、色々ありますよ。本当に色々あります。今回2年でしたけど色々ありましたよ、本当に。

「色々あった」と語る男性だが、12月に公表された名古屋刑務所での3人への暴行については、「信じられない」と話す。

受刑者3人への暴行について「信じられない」と話す
受刑者3人への暴行について「信じられない」と話す

元受刑者の男性:
本当にこんなことがあったのかな、というのが第一印象ですね。まず、信じられなかったですね。


男性は、暴行や視察委員会が意見した期間に、他の受刑者らと「雑居房」で生活していた。当時の様子について聞いた。


元受刑者の男性:
人のことはあんまり干渉しないというか。みんなそんな感じで生活しているので。あったとしても聞かないですね、「何があったの」とか。関わりたくないし、自分には関係ないことなので。

「関わりたくないし、自分には関係ないことなので」
「関わりたくないし、自分には関係ないことなので」

取材班:
隣の様子とかは?


元受刑者の男性:
隣はさっぱりわからないです。物音ひとつ聞こえないので、わからないです、全然。

刑務官による暴行ついて、2年の刑期の中で「聞いたことがなかった」という
刑務官による暴行ついて、2年の刑期の中で「聞いたことがなかった」という

施設の構造、それに受刑者同士の独特な関係性。男性は、刑務官による暴行ついて、2年の刑期の中で「聞いたことがなかった」という。

「普通に生活していたら、何の問題も起きない」
「普通に生活していたら、何の問題も起きない」

元受刑者の男性:
もし(暴行が)あったら、もっと上の刑務官の幹部が注意すると思うんですけどね、やった若い刑務官に。普通に生活していたら、何の問題も起きないんですけどね。この刑務官気に食わんなと思ったら、口で吹っ掛ける人もおるし、態度で吹っ掛ける人もおるし。

「この刑務官気に食わんなと思ったら…」
「この刑務官気に食わんなと思ったら…」

一方、男性自身はどう過ごしていたのか。

「我慢するしかないですよね、ああいう所では」
「我慢するしかないですよね、ああいう所では」

元受刑者の男性:
ああいう所で刑務官に逆らっても、何の意味もないですもんね。我慢するしかないですよね、ああいう所では。

刑務官の研修に変化 受刑者による“挑発”も

刑務所という隔絶された施設で、他の受刑者も気づかないうちに繰り返されていた暴行。

なぜ刑務官が暴力を…
なぜ刑務官が暴力を…

なぜ刑務官が暴力を振るうのか。元刑務官でノンフィクション作家の坂本敏夫さんは、原因は「刑務官の研修」方法が変わったためだという。

刑務官の初等科研修がリモートに「肝心なことを教え込まれていないということ」
刑務官の初等科研修がリモートに「肝心なことを教え込まれていないということ」

元刑務官 坂元敏夫さん:
最も大事な初等科研修がリモートということを聞いて、びっくりですね。研修で肝心なことを教え込まれていないということなんで、私はこのリモート研修が諸悪の根源ではないかと思います。


新人の刑務官が、教官や受刑者らと直接対面しながら、対応の仕方などを学ぶ初等科研修。


この他に幹部を対象とした研修などもあるが、法務省によると新型コロナの影響で2020年以降、そのほとんどがリモート形式に変わった。


今回、暴行などをした刑務官22人は、いずれも20代から30代。そのうち16人が採用から3年未満の若手だった。

坂本さんは、刑務所内の特殊な事情から、若手刑務官にとって研修は最も重要なことの一つだと話す。


元刑務官 坂元敏夫さん:
特に若い時は、受刑者の方がはるかに年も上だし、刑務所慣れもしていますし。「若い看守をおちょくってやろう」みたいなことから始まって、馬鹿にしたり。そういう経験はありますね、私にも。(刑務官が)手を出すように挑発してくるケースは十分考えられます。

「そういう経験は私にもあります」
「そういう経験は私にもあります」


法務省は12月27日、名古屋刑務所の暴行問題を巡り、有識者による第三者委員会を設置。今後、再発防止に向けた検討を行う方針だ。

(「イット!」1月18日放送)

(FNNプライムオンライン1月22日掲載。元記事はこちら

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