有明海のノリが記録的不作…「経験のない異常事態」 対応策は漁場に“カキ”【福岡発】

経済・ビジネス 社会

日本の食卓に欠かせないノリが、いま記録的な不作の危機にさらされている。産地の有明海で一体、何が起きているのか?現場を取材した。

“恵方巻き”に試練

2月3日は邪気を払い、無病息災を願う節分。福岡市博多区にある和食店「松月亭・博多中洲店」では、節分の定番となりつつある恵方巻きの予約が開始されている。

1年の福を呼び込むとされる「恵方巻き」。その年に縁起が良いとされる方角を向きながら、太い巻きずしを丸かじり。2023年、良いとされる方角は「南南東の“やや南”」だ。


記者:
おいしいですか?

番組スタッフ:
…(無言)

願い事を心の中で唱えながら無言で食べるのが恵方巻きの作法。「話す」と福を「離す」とのことだ。


そんな恵方巻きにも試練が…。

「松月亭 博多中洲店」石松卓矢料理長:
お米、卵、お酢、値上がりは続いている

ーー価格に転嫁?

「松月亭 博多中洲店」石松卓矢料理長:
ことしまでは去年と同価格、同量で頑張らせていただこうと思っている

福岡のブランド卵に長崎・対馬のアナゴなど九州産の食材を中心に7つの具材を使用。毎年160本売れるという人気のひと品は、利益を削り、価格据え置きで予約を受け付けている。

「松月亭 博多中洲店」石松卓矢料理長:
お酢は、赤酢を使用した、すし酢なので、少し色味がかかったシャリ。あと、こだわっているのは、有明産のノリ


一番のこだわりは、香りと口どけが良いという有明産のノリ。ノリは、現時点では値上げの影響を受けていないそうだが、石松料理長には不安なことがあった。

「松月亭 博多中洲店」石松卓矢料理長:
ことしは例年にないほどの不作という話を聞くので、今後どういう影響が出るのか心配。恵方巻きは、カットせずに食べるものなので、型崩れしないように形をとどめておく。(そのため)質の良いノリは重要


心配されているのノリの不作。日本の食卓に欠かせないノリに一体、何が起きているのか。

ノリが色落ちで「黄色」に…不作の原因は

国武雄太ディレクター:
福岡県柳川市に来ています。目の前には有明海が広がっていて、沖ではノリが養殖されているのですが、ことし、記録的な不作になっているそうです

ノリの一大産地、有明海に面する柳川市。


有明海でノリの養殖に携わって35年、ノリ漁業者の田中智幸さん。田中さんは、経験したことのない「異常事態」だと話す。

ノリ養殖者・田中智幸さん:
本来、真っ黒のノリが採れる有明海なんですけど、黄色くなっているというか、色素が段ボールみたいな色になっているんです。不作というか、大凶作ですね


ノリの養殖現場では何が起こっているのか。船に同乗して養殖網を見せてもらうと…。

ノリ​養殖者・田中智幸さん:
(ノリを採って)こんな感じ。黄色なんですよね


ーー色付きは何パーセント?

ノリ養殖者・田中智幸さん:
もうゼロに近い。これを収穫してもノリとしての価値はほとんどない。これを乾燥させて板ノリにすると、もっと黄色くなる


摘み取ったノリの加工所を訪ねてみると…。キャリア60年以上の女性スタッフも驚きを隠せない。

ノリ加工歴60年の女性スタッフ:
こんな色のノリは初めて。ちょっと何と言ったらいいか分からない


一見すると普通のノリのようにも見えるが、昨シーズンのノリと比べてみると、その差は一目瞭然。昨シーズンのノリは黒々としているが、今シーズンのノリは、金色に近い色をしていて、色の違いははっきりとしている。


本来であれば、いまが一番いいノリが採れるベストシーズン。宝の海である有明海でなぜ、ノリの記録的不作が起こっているのか。

ノリ養殖者・田中智幸さん:
雨が少なくて、晴天が続いたことで、プランクトンが異常発生したのが原因

ノリ不作の一番の原因とされているのが降水量不足。養殖シーズンである11月、12月の柳川市の降水量をみると、前年と比べて半分程度と雨が少ない状況が続いていた。


晴天が続いたことにより、ノリの生育に必要な栄養を“食べてしまう”植物プランクトンが大量発生。ノリの栄養が不足し、色付きが悪くなっているほか、最も重要な「味」にも影響を及ぼしていた。


ノリ養殖者・田中智幸さん:
海の栄養素を含んだノリでないと、どんなに一番最初に刈り取る柔らかいものでも、やっぱり食べてもおいしくない。売り上げは、うちでいうと7~8割減。6,000万円ぐらいの減になると思う


そして田中さんは海面を見つめてこう語った。

ノリ養殖者・田中智幸さん:
海自体に栄養素がないときは、なすすべがない。天気や自然に任せるしかない。悔しいですよね。せっかく育ててきているのに

ノリの一大産地を襲っている記録的不作の危機。

海の栄養素を復活させるための対応策

佐賀県・山口祥義知事:
できることは何でもやっていこうと


こうした事態に驚きの緊急対策を発表したのが、有明産の高級ノリで有名な佐賀県。「カキ20トン」を漁場に投入するという。

実は、カキは、プランクトンを食べる。大量のカキを水中につるして捕食させ、プランクトンの数を減らしていく。その結果、ノリが栄養分を吸収できるという作戦なのだ。過去の試験では実績もある作戦だが、広範囲、大規模で行う場合にどこまで効果が出るかは未知数だという。

ノリ生産者が待ち望むのは雨。この先1カ月は、平年並みの降水量となる見込みなので、今後、海の栄養分が潤うことを期待したい。

(テレビ西日本)

(FNNプライムオンライン1月23日掲載。元記事はこちら

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