「依存症は孤独の病」コロナ禍を経て変化する依存症の形…治療現場を取材【鹿児島発】

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アルコールやギャンブルなどさまざまな依存症があるが、コロナ禍を経て依存症の形も時代とともに変わりつつあるようだ。依存症治療の現場を取材した。

生活を破壊する「依存症」の恐怖

鹿児島市にある治療施設で暮らすAさん(49)は2017年、この施設を運営する森口病院に入院した。

Aさん(仮名):
元妻と子どもの付き添いで入院した。そのときは自殺願望がすごく強くて


30代前半まで鹿児島市の繁華街・天文館の飲食店で働き、その後は派遣の仕事をしていたというAさん。飲食店時代に先輩から誘われたパチンコをきっかけに、ギャンブルにのめりこむようになった。


Aさん(仮名):
ギャンブルをしてないと落ち着かない自分がいたり、最初はパチンコ・スロットだったが、入院する前は競馬。知人や親などからうそをつきまくって自分の軍資金にしていた


金銭トラブルで警察沙汰になったことがきっかけで入院。診断でギャンブルに加え、アルコール依存症であることも発覚した。

Aさんが診療を受けた鹿児島市の森口病院には、年間延べ3,500人を超える依存症の患者が訪れる。アルコール、ギャンブル、薬物などさまざまな種類がある依存症。院長は、この依存症の正体を次のように話す。

森口病院・田中大三院長:
依存症は意志の弱い病気だと言われるが、明らかに脳の機能障害


人間はアルコールを摂取したりギャンブルをしたりすることで脳内に快楽物質が分泌され、快感を感じる。これが習慣化されると、次第に喜びを感じる中枢神経の機能が低下し、より強い快楽を求めて量や頻度が増えていき、依存症となるのだ。

「コロナ禍」で依存症が再発するケースも

この日、治療に訪れたのはBさん。

森口病院・田中大三院長:
今は断酒継続中?

Bさん(仮名):
断酒継続中です

アルコール依存症と診断され、通院を続けるBさん
アルコール依存症と診断され、通院を続けるBさん

森口病院・田中大三院長:
今どれくらい?

Bさん(仮名):
去年の3月から飲んでいない

Bさんは2022年3月にアルコール依存症と診断された。職場のストレスに加え、Bさんに追い打ちをかけたのは「コロナ禍」という環境だった。

Bさん(仮名):
会社でパワハラがあって鬱(うつ)、孤独になって外に出られない状態になり、部屋にこもって飲むようになった。コロナもあったせいで家で飲むしかなくて


3年に及ぶコロナ禍で、Bさんのように依存症に拍車がかかったり、治療を続けてきた患者の依存症が再発したりするケースもあるそうだ。

森口病院・田中大三院長:
コロナ禍になると人とのつながりないじゃないですか、リモートワークとか。となると、自分の感情を言語化して話すことができない、それが鬱積(うっせき)して感情障害として現れる


約5カ月入院したBさんは、その後会社を辞め、現在も通院治療を続けている。

「息子が依存症だというのは認めたくなかった」

依存症に苦しんでいるのは患者だけではない。
1月14日、霧島市の公民館に集まったのはギャンブル依存症の患者の家族。

全国ギャンブル依存症家族の会 鹿児島・松元英雄代表:
皆さんの経験を分かち合っていこうと思うので


相談会を呼びかけた松元英雄さんは、息子がギャンブル依存症になったことを機に2022年3月、NPO法人を立ち上げた。


参加者はそれぞれ胸に秘めた悩みを打ち明けていく。

「息子から大きなお金を貸してほしいと連絡があり、生活費のためと勝手な思い込みをしていた」

「自分の息子は仕事はできるから、息子が依存症だというのは認めたくなかった」

「こんなこと恥ずかしいし格好悪くて、さすがにこれは言えないということを、ここでは全部言えます」


相談会の狙いは、誰にも言えなかった胸の内を仲間と共有することで自分の“居場所”を見つけることだ。

依存症は“孤独の病”

ギャンブルとアルコール依存症を患い、6年間治療を続けるAさんも今、自分の“居場所”を見つけつつある。
森口病院が管理する農園で、2年前からAさんが励むのは野菜作り。ギャンブル、アルコールに代わる、自分が熱中できることに今、充実感を感じている。

Aさんは野菜作りを通して充実感を感じてる
Aさんは野菜作りを通して充実感を感じてる

Aさん(仮名):
生きているなと自分の中で思うことがあって。野菜を収穫して色んな人に食べてもらい、「おいしかった、ありがとう」と言ってもらえるのが生きがいというか


コロナ禍でアルコール依存症になったBさんに変化をもたらしたのは、同じ境遇にいるほかの患者との出会いだった。

Bさん(仮名):
仲間といろいろ話ができますし、お互い理解しあえて、回復につながっていったと思う


国内にはアルコール依存症が109万人、ギャンブル依存症が70万人いると推計される中、治療を受けているのはごくわずかだ。


森口病院・田中大三院長:
依存症は孤独の病といわれている。依存症かなと思ったら病院に来てもらえればありがたい

依存症になりやすい環境がさらに生まれたコロナ禍の現代社会で、いかに”孤独”を和らげるかが依存症から抜け出す一歩につながるのかもしれない。

(鹿児島テレビ)

(FNNプライムオンライン1月23日掲載。元記事はこちら

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