「ジェラートは科学」石川の酪農家から“世界一”に駆け上ったジェラート職人が発信するふるさとの味【石川発】

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アイスクリームなどの消費額が日本一の石川県金沢市。そんな石川に、世界一のジェラート職人がいる。マルガージェラートの柴野大造さんだ。ジェラート界のトップに上り詰めた柴野さんの食を通して、ジェラートへの思いを辿る。

「社長の肩書きはかっこわるい」〜職人への思い


マルガージェラート 柴野大造さん:
食べた瞬間に元気になるっていうか、心にも健康面にも良い影響を与える。だからジェラートとは魂の食品であると思います。


石川県野々市市に2022年10月にオープンした「マルガーラボ野々市」


ショーケースには色とりどりのジェラートが並び、職人たちが作る様子を見学することもできる。


そのトップが柴野大造さん47歳。


肩書は社長なのか聞くと…

柴野さん:
社長とかいう肩書は、僕、それはかっこ悪いと思っているんですよ、常にかっこ良くいたい。生き方が。だから社長とかって言われるのは嫌ですね。「一職人」でありたいですね。


世界一のジェラート職人へ駆け上がったアイデア「イリュージョン」

シャーベットフェスティバル司会者:
マルガージェラート タイゾーシバノ!

2017年、ジェラートの本場イタリアに「柴野大造」の名が轟いた。


イタリアで開かれた、世界最大のジェラート祭。この大会で、並み居るイタリア人の職人を破り、アジア人として初めて優勝したのだ。


そんな柴野さんが生まれたのは、能登半島の先端にある石川県能登町。


大学を卒業後、家業の牧場を継いだが、順風満帆とは言えなかった。


柴野さん:
今もその状況は変わってませんけれど、酪農家を取り巻く環境は非常に厳しいものだったんです。


牛乳の価格は安く、売れなければ大量に廃棄される毎日。そこで目をつけたのが牛乳を加工したジェラートだった。


柴野さんは、そこにある演出を加える。


液体窒素を使い、音楽と光に合わせてその場でジェラートを作り上げる「ジェラートイリュージョン」。これが大きな転機となった。


柴野さん:
イタリア人のひとりのおじいちゃんが「君なかなか面白い」て言ってラボに呼んでもらって、そこでジェラートとは科学であると。


柴野さん:
最適な水分率、固形分率、空気の含有率この3つが決まっていると。僕の感性にイタリアの理論が加わってタイトルをどんどん獲っていくわけです。


ジェラートは「科学」これに気がついた柴野さん、これをきっかけに様々な、称号を手にすることになる。


そんな柴野さんが毎日やっていること。それは…


柴野さん:
このパウダーを全体の7%配合する、1キロの中に70グラム配合すると、ジェラートのテクスチャー、舌触りが良くなる、甘さの切れ味が良くなると言われて、それを実験します。


ジェラートの実験だ。


柴野さんが最も重視しているのは舌触り。この日はイタリアから送られてきた新しいパウダーを使う。


柴野さん:
あ~へぇ~、超面白い。面白い!なんて言うかな、クリーミーさが加わるんだけど甘さの切れ味があるね。


マルガージェラートにとって生命線であるミルクジェラート。柴野さんは実験を重ね究極のミルクジェラートを目指している。



柴野さん:
すごいね、これみんな好きだと思うよ。

更に、この日はイタリアから新しい材料が届いた。


柴野さん:
こういう新しいものが来たときって、子どもが新しいおもちゃを与えてもらったように、ワクワクするじゃない。そういう心を動かす作業がないと、自分が惰性になったりとか当たり前になった瞬間に既成概念がガチっと固まって、もう魅力ある職人にはなれません。



研究を忘れさせてくれる「ふるさとの味」は「野菜えび」

24時間ジェラートのことを考えているという柴野さん。そんな柴野さんが、昼食に向かった先は、昔ながらの大衆食堂だった。



必ず頼むというメニューがこちら。

まつもと食堂 女将さん:
はい、野菜えびです。


ご飯の上には野菜や豚肉がたっぷり入った中華餡。


さらにエビフライが2本も乗った看板メニューだ。


スイーツを食べると、どんな材料を使っているか、食感はどうなのかなど研究したくなってしまうという柴野さん。でも、この料理は違う。


柴野さん:
安定の味、海外行って帰ってきたら必ず寄る、食べたくなる。


柴野さんにとって食事の時間は唯一、ホッと一息つける時間だ。

柴野さん:
ごちそう様でした、ふるさとの味。日本に戻ってきたなとそう思わせてくれる懐かしい味。お腹も心も満たされます、マルっとマルガー。



ゴールはジェラートの「自然科学研究所」

柴野さんが目指すもの。それはふるさと能登にあるものを造ることだ。

柴野さん:
これが僕のゴールです。これは「ジェラート自然科学研究所」と仮タイトルを付けているんですけれども能登でやります。生徒たちが毎朝牧場のウシの乳搾りをして、その牛乳をこの処理施設に持っていってジェラートに加工したり…。



柴野さん:
有名シェフになったから、世界一になったから東京に満を持して出店…ダッサイと思います。ワンコインで買えるジェラートのために時間とお金をかける価値がある…というのを石川県から発信するのに意味を感じる。


世界一の職人になったからこそ、ふるさと石川からこれからも「世界一のジェラート」を作り続ける。


(石川テレビ)

(FNNプライムオンライン3月3日掲載。元記事はこちら

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