小山薫堂が語る 気付きのきっかけを作る 「湯道」を通しての日本文化の継承とは

文化


映画「おくりびと」の脚本や、「くまモン」の生みの親である小山薫堂さん。

脚本家・小山薫堂さん「気付きのきっかけを作りたいなと、いつも思って。エンターテインメントって、そうでないといけない」

地方の古びた銭湯を舞台に、目まぐるしくアップデートが繰り返される社会で、本当に大切なものは何かを見つめ直す。

銭湯を舞台に、さまざまな人間模様を描く作品「湯道」。
亡き父から銭湯を引き継いだ弟と建築家の兄が、営業を続けるか閉店すべきかで衝突を繰り返し、銭湯という場所の存在意義を問い直す作品。

企画・脚本を担当した小山さんは、日本の「銭湯文化」の魅力をあらためて発信したい狙いが。

「湯道」企画・脚本 小山さん「色んな銭湯の方と話をした時に、継がせたくないと言う人がすごく多かった。今の時代に合っていない商売だから継がせたくないという話を聞いて。お風呂をきっかけにして、人々の日常の中にある幸せを再発見してほしいなという。自分がその物をどう思うかによって、その価値はいくらでも無限に広がる」

銭湯という場所の意味合いに多様性を出すため、さまざまな登場人物の視点から、お湯にまつわるエピソードを引き出している。

常連客や経営者の高齢化、施設の老朽化などで、年々数が減少する銭湯。

小山さんはこれまでも、映画「おくりびと」の脚本では納棺師を通して、日本人の死生観を見つめ直す機会を。

くまモンをプロデュースした際には、地域の魅力の再発見というテーマで、多くの人に気付きの機会を作り出してきた。

そんな小山さんがこの作品を通して、日本文化の魅力を次の世代に伝える機会、“気付き”が大切であると考えている。

小山さん「幸せのきっかけになるのかや、人生を豊かにする気付きみたいなものがあったら本当に最高だなと。社会性というか、そういうものを育む場所でもありますし、一緒にお湯につかることで、不思議と絆が深まったり。人を集めるための風呂、あるいは自分自身を見つめ直すための風呂。入浴は一つの文化だと思いますし、これが道になったら、海外の人に発信できるんじゃないかなと。ただ体をきれいにしている、ただ気持ちがいいというお風呂よりは、お風呂の価値がそこで生まれるんじゃないかな。『お風呂いいよね』というだけではない、その先のメッセージがあるとすれば、自分の身近なところにある幸せに気付いてほしい」

日常生活にある、ささいな幸せの瞬間を切り取る「湯道」。

企画・脚本を立ち上げるうえで意識していることを聞いていくと、番組ディレクターと、こんな共通点が...。

ディレクター「大学が日芸の...」

小山さん「映画学科出身ですよね?」

ディレクター「はい、映画学科出身で。小山さんは放送学科ですよね。今の若い世代が企画・脚本を立ち上げる際に大事にしてほしいことは何かありますか?」

小山さん「今って、常にほしいと思った情報が、検索すれば手に入れられる時代じゃないですか。だから、必要以上の情報は入れなくてもいいと思う人が多い。予期せぬところから、自分のひらめきであるとか気づきが生まれるので、より多くの情報に触れていた方がいい。やはり、自分の興味のないものしか見ない、そこにしか触れなかったら、きっとどんどん視野が狭くなって、思いがけない、こぼれ幸いみたいなものを手にできなくなる気がする。そういう意味では、無駄なことにも積極的に接触するというか、無駄こそが、余白こそが、新しい生きがいにつながったりすると思う」

(FNNプライムオンライン3月3日掲載。元記事はこちら

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