1歳は「あー、うー」4歳までに「2つの世界を認識」。0歳から中1までの“発達段階”を知って子どもの問題にいち早く気づく方法
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昨今、急増しているのが、心の問題を抱える児童たち。
学校ではその対応に迫られる一方で、こうした問題を抱える児童への対応に慣れていない教職員も少なくない。
親や教員といった周囲の大人たちが「子どもの発達段階」を理解しておくことで、子どもたちの課題を察知できる可能性は高まる。
『普通にできない子を医療で助ける マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち5』(扶桑社)の著者で立命館大学教授、児童精神科医の宮口幸治先生に、子どもの発達段階について聞いた。
0歳から3歳に至るまでの発達段階とは?
子どもの発達には個人差がありますが、年齢によって標準的な指標がある。長年、多くの児童を診てきた宮口先生は、年齢による子どもの発達段階についてこう説明する。
「まず、0歳から幼児の身体的な発達は、『首のすわり(3~4カ月)』『寝返り(4~6カ月)』『おすわり(5~7カ月)』『ハイハイ(7~10カ月)』『初歩(1歳前後)』という段階があります」
一方、言語の発達については、1歳ごろまでに「あーあー」「うー」などの喃語(なんご)を話すのが目安のひとつ。
1~1歳半までには、「パパ」「ママ」「まんま」などの一語文を、1歳半から2歳くらいまでには、「これ、ちょうだい」などの二語文を話し、2歳から2歳半くらいまでに「パパしごと いくの?」などの三語文を話すようになるのだという。
1歳半、4歳、7歳、9歳…「発達の節(ふし)」とは?
幼児期から小学生頃には、育つ過程で「質的転換期」と呼ばれる変化が起こる。
大きく1歳半、4歳、7歳、9歳頃までに起こる転換期を経ながら、子どもの発達は大きく進展するとされる。それが、竹が成長するたびに節が増えていく様子に似ているため、「発達の節(ふし)」と呼ばれることもある。
「いくつかの発達モデルがありますが、分かりやすいのは『節』の考え方です。それによると最初に訪れるのが『1歳半の節』です。この節のポイントは、受動から主体への変化です。『“無目的な方向”から“目的に向かって歩く”ようになる』『目的のために道具を使う』『“大人から働きかけられ応える”から“自分から大人へ働きかける”』などの現象が起こるとされます」
続いて、「4歳の節」。こちらは、「2つの世界がわかるようになる」ことが大きな特徴です。
「この頃までには『大小や長短、軽重などの2つの概念』、『自分と人は違う』こと、『自分と他人の違い』などを理解するようになります。また、円を描かせると、はじまりと終わりが閉じる円を描けるようになるとされます」
「中間」を覚える7歳と「自立心」を抱く9歳
小学校に上がる頃までに訪れる「7歳の節」では、「中間」という概念が発達し、3つの世界を理解できるようになるようです。
「たとえば『昨日、今日、明日』などの概念がわかる、『小さい、中くらい、大きい』などの変化を理解する、積み木で『低い、中、高い』などの高低差のある階段が作れる、などが特徴とされます」
そして、発達段階のなかで大きな変化を生むのが「9歳の節」。この節を越えたかどうかで、様子も大きく変わるのだとか。
「『自転車と三輪車の似ているところは?』などの質問を受けたときに、『車輪』以外に『乗り物』と返答したりと、目に見えないものを想像できるようになったり、大人たちとの縦の関係から友人関係など横の関係を大事にするようになったり。
また、他人の気持ちを理解したり、自分はどうしたいかといった自立心も出てきたりします。さらに、『1カ月のお小遣いが300円なら1日にいくら使えるか』といった計画性と見通しができるようになるとされます。なお、この節は女子のほうが早く越える傾向がありますね」
子どもの心が大きく変化する「中1ギャップ」
小学校卒業後も、子どもの発達はまだまだ続いていく。
なかでも、子どもたちの心身ともに大きな変化が訪れるのは、中学入学後に起こる「中1ギャップ」だ。
中1は子どもにとって心身ともに大きな変化になる(画像:イメージ)
「中学に入ると、性機能の成熟、体型や顔立ちの変化、異性への興味のほか、成績による評価や部活動などで先輩後輩の関係ができるなど、ストレスのある環境に晒されるもの。
そうしたストレスによって、中学に入ってから子どもたちにはさまざまな変化が起こります。これを『中1ギャップ』と呼ぶこともあります」
また中学生になって、体力が同性の親より優れるようになると、親への態度にも変化が生じます。そのほか、大人が思っている以上に身体的コンプレックスや、身体への歪んだ認知から摂食障害などが生まれることもあるので注意が必要とのこと。
「もちろんすべての子どもがこの通りに成長するわけではありませんし、個人差はありますので、これらはあくまでも目安にすぎません。
ただ、子どもの標準的な発達段階を大人が知っておくことで、成長過程で起こる変化を冷静に受け入れられますし、一方で異変を察知する手がかりにもなるはずです」
年齢による「子どもの発達段階」。これらを意識することで、親や周囲の大人たちは子どもの小さな変化にも気づけるきっかけになるだろう。
『普通にできない子を医療で助ける マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち5』(扶桑社)宮口幸治著・佐々木昭后作画
宮口幸治
立命館大学教授。(一社)日本COG-TR学会代表理事。京都大学工学部を卒業後、建設コンサルタント会社に勤務。その後、神戸大学医学部を卒業し、児童精神科医として精神科病院や医療少年院、女子少年院などに勤務。医学博士、臨床心理士。2016年より現職。著書に2020年度の新書部門ベストセラーとなった『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)などがある。
『マンガでわかる 境界知能とグレーゾーンの子どもたち』(扶桑社)宮口幸治著・佐々木昭后作画
(FNNプライムオンライン3月10日掲載。元記事はこちら)
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