贈る人の気持ちを形として表現する水引 「加賀水引」として芸術に昇華させた魅力に迫る【石川発】

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結婚祝いや出産祝いなどを贈る際に贈る人の気持ちを形として表現する水引。この水引文化は、金沢で「加賀水引」として大正から昭和にかけて芸術の域にまで高められた。そんな加賀水引の伝統を受け継ぐ、津田水引折型5代目の津田六佑さんを取材した。


気持ちを間接的に伝える水引

竹内章アナウンサー:
加賀水引は県の希少伝統工芸に指定されています。水引の世界は奥が深そうな感じがしますね。


津田水引折型5代目 津田六佑さん:
水引って簡単に言うと日本の伝統的なラッピングなんですよね。


水引と言えば、紐を使った飾り物のイメージが多いが、津田さんは、水引はコミュニケーション文化だと強調する。


津田さん:
水引は品物を「人から人」とか「人から神様」に贈ることによって、こっちの気持ちを相手に間接的に伝えるという、日本人が昔から持っている奥ゆかしいコミュニケーション文化。そこが水引の一番大事なところです。言葉でダイレクトに言うんじゃなくて、水引を見てこちらの思いを感じてもらうものだと思います。


津田さんによると、水引の基本は3つあるそうだ。


1つは和紙で「包む」、そしてもう一つは水引で「結ぶ」。


そして、最後になぜ贈るのか理由や気持ちを文字で添える。これで1つの水引が完成する。


芸術に昇華させた加賀水引

竹内アナ:
水引っていうと僕らはこの部分を連想しちゃうんですが。


津田さん:
全体が水引っていうラッピングの文化。加賀水引って何ですかと言われた時に、紙の使い方を立体的に見せることなんです。
竹内アナ:
立体的って水引の細工の部分ではなくて、包む紙もってことですね。


津田さん:
紙の部分とひもの細工の部分と文字と、この3つの部分を芸術の域に押し上げたスタイルを「加賀水引」と呼んでいます。


津田さん:
これを津田左右吉(そうきち)が、紐の結び方の「あわじ結び」を応用して、例えば、「鶴亀」、「松竹梅」という物も作り始めました。


竹内アナ:
平坦だったものを立体的にしたんですか?


津田さん:
紐の細工で言うと、造形的に作ったものです。


本質をちゃんと見極め「新たな水引の魅力」を

竹内アナ:
今、作っているのは何ですか?
津田さん:
五月人形ですね。
竹内アナ:
凄い立派ですよね。これ全部水引で出来ているんですよね?


津田さん:
水引を組み合わせて形作った感じです。基本全て「あわじ結び」です。
竹内アナ:
「あわじ結び」が基本なんですね。
津田さん:
例えばこの上の小さな”たわ”は「あわじ結び」を応用して作っています。


津田さん:
これが”あわじ結び”になります。魔除けや縁結びなどの願いが込められた結びになります。


水引を解くと…


竹内アナ:
この白いのが和紙?
津田さん:
「こより」になっているんです。


津田さん:
和紙を”こより”にして水のりを引いて固めたひもを略して水引と言っています。


竹内アナ:
外側をグルグル覆っているのは糸ですか?
津田さん:
糸です。


竹内アナ:
色の違いは巻いてある糸の色で作るんですか?
津田さん:
他にも素材や巻き方の違いを組み合わせて、何百種類にもなるんです。


竹内アナ:
希少伝統工芸なので、やっぱり次の世代へっていう使命感はあるんでしょうか?
津田さん:
あんまり無いですね。伝統工芸って言われるのがあんまり好きじゃなくて…。


津田さん:
伝統工芸って守りに入る感じがあって。ただ本質はちゃんと見極めて変えないようにして、変えていい部分と変えてはいけない部分を見極めながらやりたいと思います。



そんな津田さん。Knot(ノット)というブランドを新たに立ち上げた。


「こんなの水引ではない」という敢えて否定的なネーミングを付けたブランド「Knot(ノット)」は水引をあしらったアクセサリーを取りそろえている。


相手を大切に思う気持ちを形にした作品に変わりない。津田さんの活躍にこれからも注目したい。

(石川テレビ)

(FNNプライムオンライン3月10日掲載。元記事はこちら

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