水素の地産地消 被災地で未来の町づくり 「震災12年」

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取材中に立ち寄ったガソリンスタンド。
一見、普通のガソリンスタンドに見えるが...「水素はこちらへ」?

さらに、普段目にするガソリンの価格表の向こうには「水素1kg 1,650円」!

ほかにも、いたるところに「水素」、「水素」、また「水素」。
これはいったい...?

福島・田村市にある、トヨタ自動車グループのデンソー福島工場。

広大な敷地を埋め尽くしているのは、およそ4,400枚の太陽光パネル。
風力発電のための風車も設置されている。

この工場で、3月から本格的に始まるのが「水素の地産地消」。
工場敷地内で太陽光や風力発電を利用して水素を作り、それを工場内で使用する仕組みだ。

ところで、なぜ「福島で水素」なのか。

トヨタ自動車 水素事業領域・濱村芳彦統括部長「災害に遭われてから10年目の2年前、何かこの被災地で、われわれの技術で貢献できないか。(福島県の)内堀知事に話しに行った時に、“福島に新しいプライドを作りたい”と聞いた時、われわれのイメージは明確になりました。カーボンニュートラルに資する日本のモデルの町を、どうしても福島に作りたい」

復興への道を歩む福島の“新たな誇り”になるような町づくり。
そこで白羽の矢がたったのが、トヨタが燃料電池車「MIRAI」などで長年培ってきたクリーンで安全なエネルギー、「水素」。

今回、工場で稼働を始めるのが、水を電気分解して水素を作る装置。

中はとても複雑に見えるが、実は、およそ9割が「MIRAI」の技術を応用したもの。

既存のノウハウをフルに生かしている。

ここで作られた水素は、パイプを通って工場の中へ。

部品の製造工程の熱処理を水素で賄うことで、脱炭素化をはかる。
まさに、水素を作って使う“地産地消”だ。

郡山市内にあるガソリンスタンドの一角にあるのが、水素を補給できる水素ステーション。

福島は、水素カーの普及台数が、愛知に次ぐ全国2位。
この水素ステーションには、1日におよそ15台が利用しに来るという。

こうした定置式のステーションは、いわき市にも設置されていて、水素が少しずつだが、身近になってきている。

さらに2022年からは、海沿いの双葉町と浪江町で、燃料電池車を活用した移動販売もスタート。
水素の活用とともに、復興への手助けも担っている。

利用者「お店が、小売りが一店もないので、移動販売に来ていただけるだけで、ありがたいこと」

販売員「今からの人たちに害のないように、良い方向に向かって行ってくれればという思いはあります」

このほかにも、再生可能エネルギーを活用した世界最大級の水素製造施設や、道の駅での水素の活用など、自治体と民間企業、そして地元の人が一体となって取り組む町づくり。

トヨタ自動車 水素事業領域・濱村統括部長「われわれは、できるだけそのカーボンニュートラル工場が変わっていく様を、福島の皆さん、あるいは、県外の皆さんと共有していきたいと考えています。ぜひ県に興味を持っていただいて、われわれの取り組みにも興味を持っていただいて、ほかの町でも広げていただけたらと思います」

世界に誇れる、水素タウン・福島へ。
その歩みは一歩一歩、未来へと進んでいる。

(FNNプライムオンライン3月11日掲載。元記事はこちら

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