長野・富士見町の女性大工 地元の御柱祭で「冠落し」大役担う

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斧係の先輩が見守る中、一之御柱と同じモミの木で冠落しの練習をする野武美乃里さん=2日夜、富士見町木之間
斧係の先輩が見守る中、一之御柱と同じモミの木で冠落しの練習をする野武美乃里さん=2日夜、富士見町木之間

女性大工として腕を磨く長野県富士見町木之間の野武美乃里さん(42)が、斧係の一員として木之間区の大山祇宮御柱祭に参加している。千葉県出身で移住者の野武さん。地元の実行委員会や斧衆が、地域に溶け込んでいる姿や仕事に対する姿勢、腕前を見て抜てきした。「地域への感謝を込めて精いっぱい務めたい」。9日に行われる里曳き・建て御柱に向け、御柱の先端を四角すいにする冠落しの練習に熱を入れている。

木造建築が好きで、大工を志して埼玉県内の訓練校へ通った。職人技術や在来工法を大切にする地方での仕事を考え始め、20代の時に町内の別の集落に移住して工務店に勤務。その後、首都圏に戻って10年間バスの運転手として働いたが、6年前に木之間区へ移り住んだ。

Iターン者であり、Uターン者でもある野武さん。現在は一人親方として引き受けた仕事に取り組んでいる。

斧係の役目は区内の大工が担ってきたが、加齢で引退する人も出てきており、人材の確保が課題になっていた。そうした中、大工歴40年で、今回斧長を務める樋口勇二郎さん(67)が、同じ現場で仕事をすることもある野武さんを推薦。「まだまだ修業が必要だが、経験して腕を上げていけばいい」と、厳しくも温かいまなざしを向ける。

木之間御柱祭実行委員会の樋口富成会長によると、同区は町内で高齢化率が高い集落の一つ。「伝統を守ることは大切」としながら、持続可能な小宮祭に向けて「間口を広げていくことも必要だ」と強調。「女性の支えがあって御柱祭がある。支えるだけでなく大いに活躍してもらい、皆でやっていく小宮祭にしていきたい」と決意を示す。

山出しを終えたばかりの2日夜も斧と手斧を持ち、練習を繰り返した野武さん。「選ばれて光栄です。感謝の思いと熱さを持って一生懸命務めたい」と抱負を語り、「大工も少なくなっている。自分を見て、少しでも志す子たちが増えてくれたらうれしい」と話した。

冠落しは午後0時30分ごろから。野武さんは和太鼓も特訓中で、当日、区内の女性たちと一緒に境内で演奏を披露する予定だ。

(長野日報社 全国12新聞社加盟 全国郷土紙連合。元記事はこちら

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