ニュースで振り返る2019年の日本

社会

新天皇即位と「令和」のスタート、ラグビーW杯の成功、相次いだ台風被害、カジノを含むIR誘致での汚職事件捜査――、2019年の日本をニュースで振り返る。

政治

安倍首相の在職日数、歴代最長に

安倍晋三首相は、「1強体制」の中で2019年も堅実な政権運営を進めた。11月20日には第1次政権からの通算在職日数が2887日と、歴代最長となった。7月の参院選で自民、公明両党は改選124議席の過半数を上回る71議席を確保。9月に内閣改造を行い、小泉進次郎氏の環境相など13人が初入閣した。

辺野古移設巡り沖縄県民投票

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設の是非を問う県民投票が2月25日行われ、反対票が投票総数の7割超を占めた。玉城デニー知事は辺野古埋め立て工事の中止を訴えたが、政府は土砂投入を続行。防衛省は12月、工事は大幅な地盤改良が必要で、設計を見直したと発表。普天間の返還時期は2030年代と大幅にずれ込む見通しとなった。

「桜を見る会」で内閣支持率急落

毎年春に新宿御苑で開かれる首相主催の「桜を見る会」の運営方法が、11月の参院での質疑をきっかけに政治問題化。安倍首相の後援会関係者が多数招かれているとして、野党は「税金の私物化」などと追及した。政府は11月13日、2020年度は同会を中止すると決定。しかし、12月実施の世論調査では、政府の説明に「納得できない」との声が大半で、内閣支持率が軒並み低下した。

IR汚職事件で政界捜査

東京地検特捜部は12月25日、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐり、参入を目指した中国企業から現金300万円などを受領したとして、収賄容疑でIR担当の内閣府副大臣だった自民党の衆院議員、秋元司容疑者(48)=東京15区=を逮捕。中国企業「500ドットコム」の日本法人元役員など3人を贈賄容疑で逮捕した。

外交

韓国

日本政府は7月1日、韓国向けの半導体材料の輸出管理を強化すると発表。8月には輸出管理上の優遇措置を適用する「ホワイト国」から韓国を除外した。韓国政府は8月22日、防衛当局間で軍事機密のやりとりを可能にする軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄すると発表。日韓関係はかつてないレベルまで悪化した。韓国はGSOMIA失効直前の11月22日に破棄通告を停止。両国は12月に入り、輸出規制強化措置を巡り局長級の対話を再開したほか、安倍首相と文在寅大統領が中国・成都で会談した。

米国

トランプ米大統領が5月、国賓として来日。皇居で天皇、皇后両陛下と会見したほか、国技館で相撲を観戦した。日米貿易協定は8月に基本合意に達し、9月に安倍首相とトランプ大統領が最終合意を確認した共同声明に署名した。日本は農産品の市場開放を環太平洋連携協定(TPP)水準内に抑える一方、米国がTPPで約束した自動車の関税撤廃は見送られた。

中国

安倍首相は6月に大阪で開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせ、中国の習近平国家主席と会談。首相は「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」とし、20年春に習氏の国賓としての日本訪問を要請した。両首脳は12月の日中韓首脳会談(中国・成都)の際にも2人で会談し、友好ムードを演出した。

ロシア

北方領土問題を含む平和条約締結交渉をめぐる動きは、2019年は全くと言っていいほど進展がなかった。安倍首相とロシアのプーチン大統領は1月、6月、9月に会談したが、北方領土をめぐる双方の歴史認識や主権問題で対立が続いている。両政府による共同経済活動の一環で、日本人向けの北方領土への観光ツアーが10、11月に初めて試験的に行われた。9月に就任した茂木敏充外相は12月に訪ロし、ラブロフ外相と会談した。

イラン

米トランプ政権がイランへの強硬姿勢を強める中、安倍首相は6月にイランを訪問。最高指導者ハメネイ師と会談し、中東地域の緊張緩和に向けて協議した。安倍首相は9月の国連総会出席の折にもイランのロウハニ大統領と会談。12月にはロウハニ大統領が日本を訪問するなど、日本は欧米とイランとの「橋渡し」外交に奮闘した。

経済

勤労統計で不正

厚生労働省が公表している「毎月勤労統計調査」が誤った方法で長年行われ、雇用保険や労災保険などで支払い不足が発生していると、根本匠厚労相が1月に明らかにした。密かに行った数値の補正で2018年から賃金の伸びが高くなり、アベノミクスの成果が出たかのように見える「訂正」もあり、問題視された。

ゴーン被告が保釈、捜査終結

2018年11月に東京地検に逮捕された日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告は、19年3月6日、逮捕から108日目に保釈された。その後、4月に会社法違反(特別背任)の疑いで再逮捕されたが、再び保釈されて検察の捜査はほぼ終結。公判は21年春にも始まる見通し。弁護側は捜査の端緒となった司法取引の違法性を主張し、「全面対決」の構えだ。

保釈され、東京拘置所から出る日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(左から3人目)=2019年3月6日、東京都葛飾区(時事) 
保釈され、東京拘置所から出る日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(左から3人目)=2019年3月6日、東京都葛飾区(時事)

かんぽ生命が不正販売

かんぽ生命と日本郵便が、生命保険契約の乗り換えの際などに顧客が不利益になる不正な販売事例が多数あることが発覚。7月に両社が記者会見して謝罪した。特別調査委員会が12月18日に発表した調査報告書によると、2018年度までの5年間で法令や社内規定に違反した疑いのある契約は1万2800件余り。違反は高齢者女性との契約が多かった。金融庁は12月27日、管理体制に重大な問題があったとして、両社に新規の保険販売業務を3カ月間停止するよう命じる行政処分を出した。

消費税率アップ

10月1日 消費税率が、8%から10%に引き上げられた。今回から軽減税率、キャッシュレス決済でのポイント還元による負担軽減策が初めて導入された。

関西電力幹部が多額金品受領

関西電力は9月27日、八木誠会長や岩根茂樹社長ら経営幹部20人が、私的に計3億2000万円分の金品を受け取っていたことを明らかにした。提供者は福井県高浜町の元助役(死亡)とされる。同社はその後、常務執行役員と元副社長がそれぞれ1億円を超える金品を受領していたなどとする調査報告書を公表。10月9日には八木会長と岩根社長の辞任を発表した。

社会

新天皇陛下が即位、「令和」に改元

5月1日に新天皇陛下が即位し、元号が「令和」に改まった。新元号は政府が4月1日に決定し、事前に発表した。10月22日には「即位礼正殿の儀」が、11月10日にはパレード「祝賀御列(おんれつ)の儀」が行われた。

京都アニメーション放火

7月18日、京都市伏見区にあるアニメ制作会社「京都アニメーション」のスタジオで、放火による爆発火災が発生し、36人が死亡した。京都府警は殺人や現住建造物等放火などの疑いで、身柄を確保した青葉真司容疑者=当時(41)=の逮捕状を取っているが、同容疑者も全身やけどで入院しており、回復を待って逮捕する。

台風で甚大な被害

9月9日、千葉市付近に上陸した台風15号による記録的な暴風で、千葉県や神奈川県を中心に、最大約93万戸が停電。千葉県内の停電は完全復旧までに2週間以上かかるなど大きな被害が出た。10月12日から13日にかけて東日本を縦断した台風19号では、記録的な大雨による河川の氾濫、土砂崩れで、福島県、宮城県、長野県などで80人以上が死亡した。

ハンセン病家族に国が賠償

6月28日、ハンセン病の元患者の家族561人が損害賠償と謝罪を求めた判決で、熊本地裁は患者の隔離政策が家族への差別も助長したと認め、541人に総額3億7675万円を支払うよう国に命じた。家族の被害を認定する判決は初めて。政府は控訴を見送り、安倍首相が7月24日に患者・元患者の家族に直接謝罪。11月にはハンセン病隔離政策で差別を受けた元患者家族に最大180万円を支給する補償法、また名誉回復を図る改正ハンセン病問題基本法が国会で可決、成立した。

首里城が焼失

10月31日未明、那覇市の世界遺産、首里城跡に建つ首里城で、木造3階建ての正殿から出火し、正殿と北殿、南殿など6棟と奉神門が焼失した。

火災が発生した首里城=2019年10月31日午前、那覇市(時事)
火災が発生した首里城=2019年10月31日午前、那覇市(時事)

中村哲医師が銃撃され死亡

12月4日、アフガニスタンで人道支援活動を続けるNGO「ペシャワール会」(福岡市)の現地代表、中村哲医師(73)が4日、ジャララバード近郊を車で移動中に銃撃を受け、死亡した。中村医師は1984年からパキスタン、アフガニスタンで医療活動に従事し、2003年にマグサイサイ賞を受賞。医療だけでなく、現地の人々には水と豊かな農地が必要だとして用水路建設、かんがい事業を手掛けていた。

科学・技術

吉野彰氏にノーベル賞

スマートフォンや電気自動車などに使われるリチウムイオン電池を開発した功績で、吉野彰旭化成名誉フェロー(71)が2019年のノーベル化学賞を受賞した。米国の2科学者との共同受賞。

iPS細胞使った角膜移植

大阪大学は8月29日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った角膜の細胞を世界で初めて患者の目に移植したと発表した。西田幸二教授(眼科学)のチームが7月に臨床研究として手術し、ほぼ見えない状態だった患者の左目の視力が大幅に改善したという。

「はやぶさ2」の小惑星探査

2月22日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、探査機「はやぶさ2」が地球から約3億キロメートル離れた小惑星「りゅうぐう」への着陸に成功したと発表した。4月には銅の塊を打ち込んで人工クレーターを作り、飛び散る砂やチリなどをカメラで撮影。7月には再着陸して、人工クレーター付近の岩石採取に挑戦した。

文化

あいちトリエンナーレで紛糾

8月3日、愛知県で開催した国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の実行委員会は、愛知芸術文化センター(名古屋市)での企画展「表現の不自由展・その後」を中止すると発表した。同展には、従軍慰安婦を象徴する「平和の少女像」を展示。抗議が殺到し、テロ予告もあった。中止の判断を巡って、企画展の実行委員は「検閲」だとの声明を発表。文化庁があいちトリエンナーレへの補助金を交付しないと発表するなど、さまざまな点で論議を呼んだ。

仁徳天皇陵が世界遺産に

7月6日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会は、仁徳天皇陵古墳(大山古墳)を含む「百舌鳥・古市古墳群」(大阪府)を世界文化遺産に登録すると決定した。

スポーツ

イチローが引退

3月21日、米大リーグ・マリナーズのイチロー外野手(45)が、開幕シリーズとなる東京ドームでのアスレチックス戦2試合に出場後、引退を表明した。日米のプロ野球で28シーズンをプレーし、通算4367安打を放った。

引退会見をする米大リーグ・マリナーズのイチロー=2019年3月22日、東京都文京区(時事)
引退会見をする米大リーグ・マリナーズのイチロー=2019年3月22日、東京都文京区(時事)

八村がNBA入り

6月20日、2019年のNBAドラフトで、男子バスケットボール・米ゴンザガ大学の八村塁(21)が1巡目でワシントン・ウィザーズから指名を受けた。日本人のドラフト1巡目指名は初の快挙。

渋野が全英女子ゴルフ制覇

8月4日、ゴルフの全英女子オープンで、初出場の渋野日向子(20)が通算18アンダーで優勝した。日本選手の海外メジャー制覇は、1977年の樋口久子(全米女子プロ)以来42年ぶり2人目。

日本でW杯ラグビー

アジアで初開催となるラグビーの第9回ワールドカップ(W杯)日本大会が9月20日から11月2日まで行われた。日本代表は優勝候補のアイルランドに勝利するなどして、初のベスト8に躍進。日本国内で大きなブームが巻き起こった。大会は決勝で南アフリカがイングランドを破り、12年ぶりの世界一に輝いた。

1次リーグ・日本-スコットランド。後半、山中亮平(左端)がボールを蹴り出してノーサイド。喜びを爆発させる日本代表選手=2019年10月13日、横浜国際総合競技場(時事)
1次リーグ・日本-スコットランド。後半、山中亮平(左端)がボールを蹴り出してノーサイド。喜びを爆発させる日本代表選手=2019年10月13日、横浜国際総合競技場(時事)

五輪マラソンは札幌開催に

10月16日、国際オリンピック委員会(IOC)は、2020年東京五輪のマラソンと競歩について、猛暑下での開催に懸念があるとして、札幌での競技開催を検討すると発表した。11月1日のIOC調整委員会で決着したが、小池百合子都知事は「あえて申し上げるなら合意なき決定だ」と不満の意を示した。

文:ニッポンドットコム編集部

バナー写真:「即位礼正殿の儀」で高御座(たかみくら)の天皇陛下の前で、万歳を三唱する安倍晋三首相=2019年10月22日、皇居・宮殿「松の間」(時事)

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