新型コロナウイルス:政府「基本方針」、医療崩壊防止へ国民に協力を求める-全国一斉休校では混乱

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新型コロナウイルスによる感染拡大を止めるため、政府が2月25日に決めた基本方針は、「この2週間が瀬戸際となる」との判断に基づく。多くの人が集まるのは大きな感染リスクがあるため、イベントなどの自粛を要請し、心配だからとむやみに病院に来ないよう呼び掛けた。重症な患者に適正な治療が行える医療体制が崩壊しないよう、国民や社会に自覚と協力を求めている。こうした中、政府が全国の小中高校に一斉休校を要請する事態となった。

受診希望者でいっぱいの病院

北海道、東京、和歌山で相次いで高齢感染者が亡くなり、28日現在、国内の死亡はクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号の乗客を含め11人となった。国内で確認された感染者は20都道府県に及んでいる。

国民は当面の間、病院に対する考えを大きく変えなければならない。もちろん病院は、健康を害した時に診てもらうところである。しかし、今はコロナウイルスを心配した受診希望者でいっぱいの医療機関が多い。

政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が24日に公表した見解に、次のような一節がある。「首都圏を中心とした医療機関の多くの感染症病床は、クルーズ船の対応で既に利用されている。感染を心配した多くの人が医療機関に殺到すると、医療提供体制がさらに混乱する恐れがある。医療機関が感染を拡大させる場所になりかねない」

クルーズ船の感染者は700人を超え、これらの人が分散して入院しているので、ほとんどの医療機関は病床も医療スタッフがぎりぎりの状態になっている。そこに、また新たな感染者が続発したら、大変なことになるのは明らかだ。重症患者が続出しても集中治療などができなくなってしまう。

今回の発生源とされる中国・武漢の病院で廊下に患者であふれる「医療崩壊」の光景が報道されたが、日本は首都圏を含め、その段階ではない。しかし、「今後も大丈夫」などと楽観はできない。

新型コロナウイルス感染を疑い、廊下に列を作る受診希望者=2020年1月25日、中国・武漢の赤十字病院(撮影:Hector Retamal/AFP/アフロ)
新型コロナウイルス感染を疑い、廊下に列を作る受診希望者=2020年1月25日、中国・武漢の赤十字病院(撮影:Hector Retamal/AFP/アフロ)

「医療機関が感染を拡大させる場所になりかねない」

専門家会議の見解で、もう一つ注目すべき指摘がある。「医療機関が感染を拡大させる場所になりかねない」ことだ。もし、少し発熱やせきが出る軽い風邪気味の人が、新型コロナウイルスに感染したのではと心配になり、病院に行って待合室で長時間待たされたら、どうなるか。感染する可能性に、自ら近付いたことになる。

賀来満夫・東北医科薬科大学特任教授(感染症学)は、こう解説する。「今は2週間、患者クラスター(集団)が新たにできないよう、多くの人が集まる状況(マスギャザリング)を避けたい。病院の外来に多くの人が来るのもマスギャザリングで、ましてや多数の健康を害した人が集まれば、感染拡大のリスクがとても高くなる。新型コロナウイルスに感染した可能性が高い人が行く所と考え、今は病院に行くことに慎重であってほしい」。混み合う医療機関が、クラスターを生み、感染拡大の温床になる恐れさえあると警告しているのだ。

自宅での静養・療養が原則に

こうした現状を踏まえて、政府の基本方針には「風邪症状が軽度の場合は、自宅での静養・療養を原則とし…」という内容が入った。また、風邪症状がない高齢者や基礎疾患がある人が持病薬をもらうときは、電話による診察で処方せんを発行するなどして、感染リスクが高い人が来院しなくても済む体制を整える方針も盛り込んでいる。

基本方針にこのほか、患者数が大幅に増えた地域では、一般の医療機関でも感染の疑いがある患者を診察することが加わった。これまでは、各地の相談センターに電話して、専門外来を受診することになっていたが、特定の病院がパンクして医療崩壊とならないよう、方針を変更した。一般の医療機関では、診察時間や動線(感染の可能性のある患者の出入り口など)を通常と区分するよう求めている。

また、医療崩壊を防止するには「患者の増加のスピードを可能な限り抑えることが重要」として、(1)風邪症状がある人の外出の自粛、休暇取得(2)テレワーク(自宅などでの勤務)や時差通勤の推進(3)イベントなどの自粛(4)学校などの臨時休校を適切に実施――などを示した。

政府が小中高校に一斉休校を要請

こうした中で、政府は27日、全国の小中学校、高校、特別支援学校に3月2日から春休みまでの一斉休校を要請することを決めた。

25日に発表した基本方針では、今後、地域で患者が増えた時の感染拡大防止策として「学校などの臨時休校の適切な実施に関して、都道府県などから設置者(自治体や学校法人)に要請する」という内容にとどまっていた。

政府はさらに踏み込んだ方針を打ち出したことになり、教育現場は入試や卒業式がある年度末だけに、突然の一斉休校要請に混乱している。政府の専門家会議のメンバーには、かねて「今回のウイルスは子どもの感染例が少なく、学校閉鎖はあまり意味がない」という見解を明らかにしている人もいる。一方で、各イベントの中止などの動きに連動して、全国の学校休校は感染拡大の防止に役立つと、評価する意見もある。

感染拡大の北海道が「緊急事態宣言」

28日、感染者が新たに12人確認され、計66人となった北海道。感染拡大が目立ってきたため、同日から3月19日まで3週間、「緊急事態宣言」を出し、鈴木知事が「週末の外出を控えるよう」道民に呼びかけた。

世界の新型コロナウイルス感染された国・地域は、すでにアジア、欧州、北・南米、アフリカ、オーストラリアに拡大。7月に迫った東京五輪について、聖火リレーの規模縮小が検討されるほか、国際オリンピック委員会(IOC)委員が開催の延期や中止に言及したことが報じられるなど、動きもあわただしくなってきた。まさにこの2週間が、運命の時かもしれない。

バナー写真:新型コロナウイルス感染症対策本部で発言する安倍晋三首相(左から3人目)=2020年2月25日、首相官邸(時事)

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