ニュースで振り返る2021年の日本

社会

前年に続き、新型コロナウイルスの感染拡大が社会に暗い影を落とした2021年の日本。東京五輪・パラリンピックは無観客開催となり、支持率低下に悩んだ菅義偉首相が退陣した。

【新型コロナウイルスをめぐる動向】

感染拡大は2020年12月から3月までの「第3波」、4月から6月までの「第4波」、7月から9月の「第5波」と3つのピークがあった。「第5波」は、1日の新規感染者数が最大2万人を超え、重症者数が一時2000人以上となった。東京五輪、パラリンピックの開催時期とも重なり、両大会はいずれも原則無観客で行われるなど日本社会に大きな影を落とした。12月末までの国内の新型コロナ感染者数は累計で約173万人余り、死亡者は約1万8000人。

新型コロナウイルス感染拡大に対応するための特別措置法、感染症法、検疫法の改正法が2月に国会で可決、成立。「まん延防止等重点措置」を新設したほか、都道府県知事は緊急事態宣言下で事業者に休業や時短を「命令」できるようになった。

2月に医療従事者へのワクチン接種がスタート。5月には高齢者、その後職域、一般と対象が拡大した。政府は、12月28日現在、全体の77.9%が2回接種を完了したとしている。

9月に入って感染者は大きく減少し、政府は10月1日に、19都道府県に発出していた緊急事態宣言と8県のまん延防止等重点措置を全面解除した。

11月29日 政府は、新たな変異株「オミクロン株」が確認され、世界各地で感染が拡大していることを受け、全世界からの外国人の新規入国禁止に踏み切ると発表した。

新型コロナ影響の支援策など新たな経済対策を盛り込んだ、一般会計の総額が35兆9800億円余りとなる過去最大の2021年度補正予算が12月20日、国会で可決・成立した。

【政治】

総務省幹部が、放送関連会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男らから接待を受けていたことが2月に問題化し、同省は谷脇康彦総務審議官ら幹部を含む職員11人を処分。3月には谷脇氏と山田真貴子内閣広報官が相次ぎ辞職した。

菅首相は9月3日、自民党総裁選に不出馬を表明。8月の横浜市長選で首相が支援する小此木八郎・元国家公安委員長が落選し、求心力が急激に低下した。9月29日の総裁選では岸田文雄政調会長が勝利。10月4日の臨時国会で首相に指名された。岸田首相は8日の所信表明演説で、「成長と分配の好循環」の実現に向けて成長・分配戦略を掲げ、中国を念頭に経済安全保障政策を推進する法案策定を明言した。

総裁選出後に開催された両院議員総会で、改めて自民党の新総裁に選出されたことを発表される岸田文雄氏(中央左)=2021年9月29日、東京都港区(時事) 
総裁選出後に開催された両院議員総会で、改めて自民党の新総裁に選出されたことを発表される岸田文雄氏(中央左)=2021年9月29日、東京都港区(時事) 

第49回衆院選が10月31日投開票され、自民党は15議席減の261議席を獲得し、公明党と合わせて連立与党は293議席となった。小選挙区で落選、比例復活した甘利明氏が党幹事長を辞し、茂木敏充外相が後任の幹事長に。11月10日発足した第2次内閣で、林芳正氏が外相に就任した。

衆院選の結果を受け、立憲民主党の枝野幸男代表が辞任。代表選挙が11月30日に行われ、泉健太政調会長(47)が新代表に選出された。

【デジタル関連の動き】

対話アプリのLINEは3月、利用者の個人情報が、システム開発を担う中国の子会社から閲覧可能な状態になっていたと発表。政府の個人情報保護委員会は個人情報保護法に基づき、LINEと親会社のZホールディングスの2社に立ち入り検査し、4月にはLINEに体制の見直しを求める行政指導をした。

デジタル庁新設を柱とするデジタル改革関連6法が5月に国会で可決、成立。デジタル庁が9月1日に発足した。

経済協力開発機構(OECD)は10月、多国籍企業による租税逃れを防ぐ国際課税の新ルールについて、世界共通の法人税の最低税率を15%とし、米IT大手などを対象とする「デジタル課税」を導入することで最終合意したと発表した。。

【外交】

日米両政府は3月16日、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を東京都内で開き、中国海警法の施行に「深刻な懸念」と共同文書に明記した。4月16日には菅義偉首相がバイデン米大統領とホワイトハウスで初の首脳会談。中国が軍事的圧力を強める中で「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」との共同声明を発表した。

北朝鮮は3月、9月、10月の3回にわたり、それぞれ弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射。日米韓の3カ国は5月に外相会談。11月に次官級協議を行い、北朝鮮の完全な非核化に向けて緊密に連携することを確認した。

菅首相は4月、2030年度の温室効果ガス削減目標を現行の「13年度比26%減」から「同46%減」に大幅に引き上げる方針を表明。5月には2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を明記した改正地球温暖化対策推進法が国会で可決、成立した。

【経済】

2021年の景気は新型コロナウイルスの感染の波に影響され、浮き沈みを繰り返した。1~3月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動を除いた実質で前期比1.0%減、年率換算では3.9%減。4~6月期の改定値は同0.5%増、年率1.9%増。7~9月期改定値は前期比0.9%減、年率換算で3.6%減だった。7~9月期は感染拡大の影響で個人消費が振るわず、自動車の減産で輸出も伸び悩んだ。

3月に成立した21年度政府予算は、一般会計総額が106兆6097億円と過去最大。新型コロナ対応の予備費5兆円を計上し、9年連続で過去最大を更新した。新規国債の発行額は7年ぶりに40兆円を超えた。

東京株式市場は、日経平均が年明け2万7000円台の水準で始まり、2月13日には1990年8月以来、30年6カ月ぶりに3万円台を回復。9月14日には3万795円78銭まで上昇したが、オミクロン変異株への不安などから11月下旬に急落。12月には2万8000円台前後で推移した。

年初は1ドル=103~105円台で取引された外国為替市場の円相場は、次第に円安が進み、11月23日には米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長再任方針を受けて一時1ドル=115円台に下落した。2017年3月以来の円安水準。

東芝は11月12日、中期経営計画を公表。会社を主な事業ごとに3社に分割する方針を発表した。発電設備や交通システムなどのインフラ部門、半導体製造装置などのデバイス部門をそれぞれ独立させ、現在の東芝はキオクシアホールディングスと東芝テックの株式を所有し存続する。

みずほ銀行が2月から9月にかけ8回にわたりシステム障害を起こし、金融庁と財務省は11月26日、業務改善命令などの行政処分を下した。みずほフィナンシャルグループ(FG)は2022年4月1日付で、坂井辰史社長と藤原弘治みずほ銀頭取が引責辞任すると発表した。

原油価格の高騰を受け、政府は11月24日、初めてとなる国家備蓄石油の放出を正式決定した。備蓄されている国内消費量145日分のうち数日分を放出するとした。

日本経団連の中西宏明会長(75)=日立製作所会長=は病気を理由に6月1日付で退任し、後任に住友化学の十倉雅和会長(70)が就任した。中西氏は同27日に死去した。労働組合の中央組織、連合は10月の定期大会で、神津里季生会長の後任に芳野友子副会長を選出した。女性の会長就任は初めて。

【社会】

2019年参院選をめぐり公選法違反(買収、事前運動)罪に問われた参院議員、河井案里被告(47)、衆院議員の元法相、河井克行被告(57)の判決がそれぞれ1月、6月に東京地裁であり、案里被告に懲役1年4月、執行猶予5年(求刑懲役1年6月)、克行被告に懲役3年、追徴金130万円(求刑懲役4年、追徴金150万円)が言い渡された。2人はいずれも議員辞職した。

3月11日に東日本大震災から10年の節目を迎え、政府主催の最後の追悼式が国立劇場で営まれた。

東日本大震災の発生から10年を迎えた陸前高田市の「奇跡の一本松」(中央左)と震災遺構「陸前高田ユースホステル」(同右)=2021年3月11日、岩手県陸前高田市(時事)
東日本大震災の発生から10年を迎えた陸前高田市の「奇跡の一本松」(中央左)と震災遺構「陸前高田ユースホステル」(同右)=2021年3月11日、岩手県陸前高田市(時事)

東京地検特捜部は10月、日本大学板橋病院の建設工事関連契約をめぐり、大学関係者が大学側に損害を与えた背任容疑で日大理事ら2人を逮捕。11月29日には所得税約5300万円を脱税したとして、所得税法違反容疑で同大理事長の田中英寿容疑者(74)を逮捕した。

10月26日、秋篠宮家の長女眞子さまが米国弁護士事務所勤務の小室圭さんと結婚。儀式などは一切行われず、2人は11月に渡米した。天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが12月1日に20歳の誕生日を迎えられ、成年皇族の一員となった。

岸田文雄首相ら三権の長から祝辞を受けられる天皇、皇后両陛下と長女愛子さま=2021年12月5日午後、皇居・宮殿「梅の間」(時事)
岸田文雄首相ら三権の長から祝辞を受けられる天皇、皇后両陛下と長女愛子さま=2021年12月5日午後、皇居・宮殿「梅の間」(時事)

将棋の藤井聡太三冠(19)が11月13日、第34期竜王戦で豊島将之竜王(31)を4連勝で破り、四冠を達成した。19歳3カ月での四冠達成は、史上最年少。年初は王位、棋聖の2タイトルを保持していたが、7月に棋聖を防衛して10代で初めて九段に昇段。9月には叡王戦を制した。

12月17日、大阪市北区の繁華街ビルで火災があり、25人が死亡した。火元は4階にある心療内科のクリニック。大阪府警は容疑者の男性(61)=火災で重篤な状態=がガソリンをまいて火をつけた放火事件とみて捜査中。

【科学・技術】

政府は4月13日、東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む処理水を、2年後をめどに希釈して海洋放出する方針を正式決定した。

関西電力は6月23日、運転開始から40年を超える美浜原発3号機(福井県美浜町)を再稼働させた。東京電力福島第1原発事故後、原則40年とされた運転期間を超える原発が再稼働するのは初めて。(その後、10月23日に再び運転を停止)

10月5日、2021年のノーベル物理学賞に、コンピューターを使った地球温暖化などの予測手法を確立した米プリンストン大の真鍋淑郎上席研究員(90)ら3氏が決まった。

【文化】

7月26日 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産登録を決めた。同27日には三内丸山遺跡(青森市)など「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産登録を決めた。

バナー写真:日本郵政グループの新型コロナウイルスワクチン接種会場を視察する菅義偉首相(奥中央左)=2021年6月21日、東京都千代田区(時事)

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