プーチン大統領が「核」抑止力言及し威嚇:日本国内で懸念や非難の声相次ぐ

政治・外交

ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻決定時の演説で、同国を「最強の核保有国の一つ」と強調し、2月27日には核戦力を念頭に「抑止力を特別警戒態勢に引き上げる」よう指示したことについて、日本国内では懸念や非難の声が相次いでいる。

岸田文雄首相は、日本時間3月1日未明に行われた米国や欧州連合(EU)首脳らとの電話会談で、「唯一の戦争被爆国、被爆地・広島出身の首相として、核による威嚇も使用もあってはならない」とロシアが核戦力を持ち出して圧力を掛けていることを批判した。その後、記者団にこの発言について説明し、「国際社会が結束して毅然と対応することが重要であることなどを訴えた」と語った。

広島、長崎の被爆者・市民や、核兵器廃絶を目指す平和団体なども相次いで声を挙げた。

日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は2月25日、木戸季市(すえいち)事務局長が「怒りをもってロシアのウクライナ侵攻に抗議する」との談話を発表。その中で、「被爆者として許せないことは、プーチン大統領が核兵器国であることを誇示し、核兵器で威嚇していることです」と非難。「ロシアの行為は、広島・長崎を繰り返し『ふたたび被爆者をつくる』ことそのものです」と訴えた。

広島、長崎の被爆者団体はそれぞれ、ロシア大使館に抗議文を送付。原水爆禁止広島県協議会は「核兵器の使用は国際法違反、そして人類全体の否定です」とし、核を使用するという脅しをかけることも明確な国際法違反であると指摘した。

長崎市の田上富久市長は28日、プーチン大統領の「特別警戒態勢引き上げ」命令を受けて、広島市の松井一実市長と連名で、抗議文を提出したことを明らかにした。抗議文では、ロシアのウクライナ侵攻と核兵器の使用を示唆した一連の行為について「『世界中の誰にも二度と同じ体験をさせてはならない』と懸命に訴えてきた被爆者の切なる思いを踏みにじるものであり、被爆地広島、長崎は強い憤りを感じている」と指摘。「地球上に、広島、長崎に続く、第三の戦争被爆地を生むことは絶対にあってはならない」と訴えている。

また、広島市議会は「平和的解決を求める」決議を、長崎市議会は「核の威力を背景としたウクライナへの侵略に強く抗議する」決議を、それぞれ3月1日までに可決した。

広島市の平和記念公園、長崎市の平和公園ではロシアのウクライナ侵攻から連日、抗議の座り込みや平和を祈る集いなどが続いている。1日には広島県内に住むウクライナ出身者たちが原爆ドーム前に集まり、プーチン大統領を非難する抗議行動を展開した。

バナー写真:原爆ドーム前でロシアの侵攻に抗議する広島在住のウクライナ人ら=2022年3月1日、広島市(共同)

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