「核の不使用継続と秩序維持」のため日米首脳は行動を:会談に向け「緊急提言」―笹川平和財団の研究会

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2023年の広島G7サミットで発出された、核軍縮に焦点を当てた「広島ビジョン」。これを一過性の声明に終わらせてはならないと、日本のシンクタンクが日米首脳会談を前に「緊急提言」を発表した。

東京のシンクタンク・笹川平和財団の「新たな核の軍備管理・軍縮構想研究会」は9日、岸田文雄首相とバイデン米大統領による日米首脳会談(10日)に向け、両首脳が「核の不使用継続」の重要性を再確認し、宣言すべきだなどとする「緊急提言」をまとめ、発表した。

具体的には、(1)日米首脳会談の場で、両首脳は「核の不使用継続」の重要性を再確認し、すべての核保有国と「核の傘」の中にある国がこの理念を共有すべきだと宣言する(2)日本は「核の不使用継続と核秩序の維持」に向けて、首脳外交を積極的に展開する(3)米中間に存在しているであろう核戦略面での誤解、誤算を解消し、将来的な核軍備管理交渉につなげるため、日本政府はこの地域の関係諸国と核問題に特化した「トラック2対話」を促進する──などを提唱している。

同研究会は鈴木達治郎・長崎大学核兵器廃絶センター副センター長を座長に、安全保障の専門家や研究者、ジャーナリストら委員9人で構成。ウクライナ侵攻に伴うロシアの核威嚇や北朝鮮の核・ミサイル開発の活発化、中国の急速な軍備増強などの国際環境の変化を背景に、2023年5月に発足し、調査・研究を重ねてきた。

東京で記者会見した鈴木座長は、現状認識について「核使用のリスクはキューバ危機(1962年)以降、最も高まっているとの見方が専門家の中に多い。日本が位置する北東アジアでも従来以上のレベルにある」と指摘。核拡散防止条約(NPT)や米ロ間の取り決めなどを基軸とした世界の核秩序が「壊れかかっている」中、「現下の核リスクを管理した上で、核の不使用継続や軍縮につなげる具体的な方策については議論が深まっていない」との危機感を示した。

その上で、まずは核保有国や主要国間で、この問題に対する「首脳レベルでの対話」が重要だと強調。日本政府はさらなる外交努力を重ねるべきだと訴えた。

バナー写真:記者会見する鈴木達治郎・長崎大学核兵器廃絶センター副センター長=2024年4月9日、東京・虎ノ門(撮影:nippon.com)

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