ペットになった元実験犬「しょうゆ」、獣医大生が譲渡願い出る【動画】

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北海道内のドッグランで、雌のビーグル犬が弾むように走っていた。犬の名前は「しょうゆ」。10歳のしょうゆはこの春まで、獣医大学で学生が麻酔や身体検査などを練習する実習用に使われていた元実験犬。高齢なので別の実験に使われる予定だったが、世話係だった女子学生の強い希望でペットとして譲渡されたのだった。

しょうゆの飼い主は酪農学園大(北海道江別市)獣医学類6年生の三宅史さん(23)。三宅さんは4年の時からしょうゆのえさやり、糞尿の始末、シャンプーなどを行ってきた。

以前から実習犬が高齢になったら、研究用に実験に使われ安楽死処分されるとは聞いていたが、今年3月にしょうゆが実験に使用されることを知った。「ショックでしたが、自分には何もできないとも思い、せめて毎日散歩に連れ出してやろうと思いました」。しかし翌日散歩でうれしそうに走っている姿を見て「こんなに元気なのにかわいそう。『私にできることは何でもやらなければ』という気持ちになり」、勇気を出して大学に引き取りを願い出た。

しかし、当時しょうゆは犬の病気の実験に使う1匹として、学内の教員らで構成する動物実験委員会で実験計画が審査中だった。実験委の委員長である大杉剛生教授は「間もなく承認される予定だったから譲渡は難しかった」と振り返る。その中で委員の一人の高橋優子准教授(獣医倫理学)が「自分が世話をしてきた犬には感情的なつながりができてしまう。学生が譲渡を申し出ているのに実験に使うのは疑問がある」などと再考を求めた。

そこで実験委は実験責任者の教員と実験データへの影響などを検討した上で、1匹減らすことを決めた。大杉教授は「高橋准教授の意見、動物福祉など総合的に勘案しました」とする。

三宅さんの実家を10月に訪ねた。しょうゆは、史さんと母親の望さんのそばでごろんとお腹を見せて甘えていた。「お手」「お座り」も覚えた。望さんは「しょうゆは褒められたり、しかられたりしたことがなかったみたいで、何をしてもぽかんとしていました。でも、褒められる喜びを知ってからはいろんなことを覚えましたよ」と目を細めた。近所のドッグランで地面や草の匂いをかいだり、史さんめがけて走ってきたりするしょうゆ。「両親はしょうゆを本当に大事にしてくれるので感謝しています」と三宅さんは話している。

【時事通信文化特信部 森映子】