日銀点検を読む:ETF購入、平時と危機時の違い明確化か=クレディS・白川氏

経済・ビジネス

2月19日、クレディ・スイス証券の白川浩道副会長兼チーフエコノミストは、日銀の政策点検について、声明文の上場投資信託(ETF)の買い入れ方針を年間約6兆円ペースに戻すと同時に、景気情勢によっては買わない可能性もあるといった文言を盛り込むと予想する。2020年5月、日銀本店外で撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
2月19日、クレディ・スイス証券の白川浩道副会長兼チーフエコノミストは、日銀の政策点検について、声明文の上場投資信託(ETF)の買い入れ方針を年間約6兆円ペースに戻すと同時に、景気情勢によっては買わない可能性もあるといった文言を盛り込むと予想する。2020年5月、日銀本店外で撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 19日 ロイター] - クレディ・スイス証券の白川浩道副会長兼チーフエコノミストは、日銀の政策点検について、声明文の上場投資信託(ETF)の買い入れ方針を年間約6兆円ペースに戻すと同時に、景気情勢によっては買わない可能性もあるといった文言を盛り込むと予想する。資産買い入れが平時と危機時で異なるものになることを明確化し、めりはりをつけた運営を行えるようにするとの見方も示した。

日銀は現行の声明文では、ETFの年間買い入れペースを上限12兆円とし、脚注に原則約6兆円と表記している。上限12兆円はコロナ下の時限措置として決めたが、日経平均株価が3万円台に乗るような株高局面の中、積極的な買い入れ姿勢を示したままでいいのかと市場で議論になっている。

白川氏は、3月の政策点検では、声明文本文の「上限12兆円」を脚注に落とすとともに、脚注の「原則約6兆円」を本文に上げて数値目標を入れ替えることがあり得るとみる。数値目標を完全に取り払ってしまうと市場にインパクトを与え、株価急落を招く恐れがあるためだ。

一方、本文と脚注の数字を入れ替えただけでは、残った「原則約6兆円」という数字が独り歩きし、日銀がこの先も市場動向に関係なく買い続けるのだとも受け止められかねない。これは株価を大きく押し上げる可能性もあるため、「景気情勢が平時に戻っていく過程では買い入れ規模の縮小も視野に入れている、あるいは6兆円は必ずしも買わないというニュアンスの文言を盛り込むのではないか」と予想した。

白川氏は、ETFなどの資産買い入れについては「細かいことを書けば書くほど後々苦しくなる」と指摘。「平時と危機時の対応が異なるという大きな方針を示した上で、平時は市場の価格形成がゆがまないように配慮する、ただし、再び危機が起きれば積極的にやるということだけを表明してめりはりをつけるのも一つの手だ」と述べた。

<海外投資家、点検にはニュートラル>

海外投資家が日銀の政策点検をどのようにみているかについて、白川氏は「それほど詰めて考えている人はいないようだ。関心はなくはないが、何かビッグイベントになると思っておらず、基本はニュートラルなスタンスだ」と語った。

2016年にマイナス金利政策やイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作付き量的・質的金融緩和)が導入された時を振り返ると、市場全体の反応に定まったものはなかったという。海外投資家についても「事前に日本株への投資を外そうという人はいないし、一方で緩和の姿勢が確認されるからさらに強気になっていいとも思っておらず、出てから考えるというのが基本。何かにベットして(賭けて)動けるほどのものではない」と述べた。

<物価上昇の可能性>

白川氏は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って経済は落ち込んだものの、リーマン・ショック後と比べると回復までの時間軸は短いとみている。

「去年の7─9月期、10─12月期の国内総生産(GDP)をみると回復ペースは早く、緊急事態宣言が発令された1─3月期についても、意外に人出は減っていない。リーマン後の回復は4、5年かかったが、今回は1、2年で終わるかもしれない」との見方だ。

当然、リーマン後に比べるとインフレ圧力が上がってくるタイミングも早く、「来年あたりは結構インフレ率が高くなり、(コアCPIは)1%を超えてくるかもしれない」と指摘した。

インタビューは18日、オンライン形式で行った。

(杉山健太郎、木原麗花 編集:田中志保)

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