アングル:日銀のETF買い、市場では「新法則」探る謎解き盛ん

日銀のETFの買い入れを巡って、株式市場では新たな「法則」を巡る謎解き議論が活発化している。車2017年6月、都内で撮影(2021年 ロイター/Toru Hanai)
日銀のETFの買い入れを巡って、株式市場では新たな「法則」を巡る謎解き議論が活発化している。車2017年6月、都内で撮影(2021年 ロイター/Toru Hanai)

平田紀之

[東京 22日 ロイター] - 日銀の上場投資信託(ETF)の買い入れを巡って、株式市場では新たな「法則」を巡る謎解き議論が活発化している。株価が大幅続落した局面で、20日には買い出動せず、21日は買いに動いたことが市場の思惑を刺激している。引き続きTOPIXの前場下落率が注目されるが、杓子定規な運用は難しいとの指摘も出ている。

<市場では「2.0%以上」の思惑>

20日の東京株式市場でTOPIXは前場に1.25%下落したが、日銀はETF買いを見送った。TOPIXの前場の下落率を1%を超えても日銀がETF買い入れを見送るのは、2016年7月に買い入れ方針を年間約6兆円ペースに拡大して以降初めて。

一方、下落率が2.17%だった21日は701億円(通常型)を購入した。これを受けて、日銀がETF買いを発動する要件について「下落率で1.5%か2.0%か。少なくとも2.0%なら買うということだ」と、ある国内証券の関係者は見立てを示す。

日銀はETF買い入れの要件を明らかにしていない。ただ、市場では、前場のTOPIXの前日終値に比べた下落率を基準とする見方は根強い。市場では、日銀はETF買い入れに際しTOPIXのトレンドからのかい離率やVIX指数(恐怖指数)、日経VI指数なども考慮しているとの見方もあるが「実際の買い発動は、下落率の基準に概ね整合してきた」(同)との受け止めがもっぱらだ。

日銀は3月の金融政策決定会合で、年間6兆円程度としてきたETF購入の目安を撤廃する一方で12兆円程度の上限を維持し、「必要に応じて買い入れを行う」と表明した。21日の買い入れは、新たな方針が適用されて以降で初めての購入となった。

きりのいい0.5%刻みで「TOPIXの下落率1.5%か2.0%」と新たな「基準」探しが始まっているが、「2日連続の大幅下落」などの要件が必要との見方もある。「今後の動向を踏まえて共通認識が収斂していく」(別の国内証券)と、市場では次の日銀の出方を見守っている。

<杓子定規な運用「しにくい」との指摘も>

日銀内では21日、緊急事態宣言の再発令が迫っていることや2日連続の株安で地合いが悪化していることへの懸念が出ていた。日銀は政策点検を通じて、ETFは市場が大きく不安定化した場合の大規模な買い入れが効果的との結果が得られたと公表しており、市場では、これに則した措置との受け止めもある。

22日の東京市場では、米株高を受けて日本株も大幅反発した。前日の日銀によるETF買いも「投資家の安心感を誘った」(雨宮総研の雨宮京子代表)と、一定の効果を評価する声が聞かれた。

一方、日銀のETF保有残高が膨らんでいるほか、市場の価格形成をゆがめることなどの副作用への懸念は根強く、SMBC日興証券の伊藤桂一チーフクオンツアナリストは、新しい方針の下では「杓子定規的な運用はしにくいのではないか」と話す。ニッセイ基礎研究所の井出真吾上席研究員は、日銀がETF買いを行わなくても、株価が下がればしっかり押し目買いは入るとし「むしろ、(日銀のETF買いが)押し目を待つ投資家の機会を奪いかねない面にも気配りが必要」と指摘する。

市場が日銀のETF購入基準にばかりに目を向け、その思惑によるトレードを強めれば、市場自身がマーケットをゆがめるおそれもある。

(平田紀之 取材協力:杉山健太郎 編集:伊賀大記)

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