アングル:アップルとフォード、半導体不足の影響で明暗くっきり

米アップルは28日、スマートフォン「iPhone」とパソコン「Mac」の販売増加を支えに第2・四半期(1-3月)利益が倍増したと発表し、世界的な半導体不足の影響が極めて小さかったことが分かった。写真は2020年9月、米ミシガン州ディアボーンで撮影(2021年 ロイター/Rebecca Cook)
米アップルは28日、スマートフォン「iPhone」とパソコン「Mac」の販売増加を支えに第2・四半期(1-3月)利益が倍増したと発表し、世界的な半導体不足の影響が極めて小さかったことが分かった。写真は2020年9月、米ミシガン州ディアボーンで撮影(2021年 ロイター/Rebecca Cook)

[サンフランシスコ 29日 ロイター] - 米アップルは28日、スマートフォン「iPhone」とパソコン「Mac」の販売増加を支えに第2・四半期(1-3月)利益が倍増したと発表し、世界的な半導体不足の影響が極めて小さかったことが分かった。

一方、同じ日に米フォード・モーターは、半導体不足が原因で自動車を最大でも予定の半分しか生産できないと明らかにした。

この対照的な状況は、長期的な半導体の生産サイクルに慣れきっているハイテク関連セクターの大半の有力企業が、どれほど巧みに半導体不足による大きな混乱を回避できたかを物語っている。

これに対し、さまざまな部品生産の変更や増産により機動的に対応できる「ジャストインタイム」方式の生産ラインを採用している自動車メーカーやサプライヤーは、混乱に巻き込まれた。

アップルも、第3・四半期(4-6月)は、一部の旧型半導体の供給が制限されるために売上高が30億─40億ドル下押しされるとの見通しを示した。だが、リフィニティブがまとめた4─6月の売上高全体の予想(689億4000万ドル)からすれば、ほんの数%に過ぎない。

大手自動車メーカーでは、ドイツのダイムラーも先週、半導体不足が来年まで持ち越されると警告している。

フォードのファーリー最高経営責任者(CEO)は同社が半導体不足に陥った原因として、3月に茨城県ひたちなか市のルネサスエレクトロニクスで起きた工場火災を特定視した。

しかし、フォードや他の自動車メーカーが抱える問題の一部は、自分たちの意思決定に起因する。つまり多くのメーカーは1年前、新型コロナウイルスのパンデミック発生に伴って半導体の発注を削減し、その後に需要が想定より急速かつ力強く回復したため、慌てふためく羽目になったのだ。

ファーリー氏は28日、フォードは問題解決に向けて「1日24時間、週7日」の態勢で努力しているものの、今後何度か切所が訪れ、来年にかけて半導体不足が続いてしまう恐れがあるとの厳しい見通しを示した。

では、サプライチェーン(供給網)運営の手際に定評があり、他の企業より価格交渉力も強いアップルは、どんな状況にあるのか──。

クックCEOは28日の投資家との電話会議で、供給バッファーを駆使することなどで、今のところ需要急増への対応でトラブルを避けられていると説明した。

それでもクック氏は、第3・四半期にはより古い世代の半導体調達の難しさにアップルも見舞われると予想し、他の業界でもこうした半導体が使用されていると指摘。同氏は自動車メーカーを「名指し」はしなかったが、自動車部品の多くはこの「より旧式」の半導体に依拠している。

アップルが主に悪影響を受けると想定しているのは、在宅勤務の普及で売れ行きが好調なタブレット端末「iPad」と、「Mac」の生産ライン。ただし、これらの売上高は、アップルの収益源であるiPhoneと比較すれば非常に小さい。逆にフォードは、最も収益性の高いピックアップトラック「F-150」の生産停止に直面している。

半導体不足が起こす逆風の強さがセクターごとに均一でないことは、携帯端末用半導体を供給する米クアルコムが28日発表した業績からも読み取れる。同社によると、スマホ向けプロセッサーと第5世代(5G)移動通信システム向け製品の強い需要が、収益を押し上げたという。

スマホ向けプロセッサーは、自動車用半導体ほどは生産不足に陥っていない。半導体メーカーが近年多額の投資をしている「より先進的な」製造技術で作られているからだ。

もっともスマホ製造にはそうした先進的なプロセッサーだけでなく、旧型半導体も欠かせない。このため例えば、韓国のサムスン電子は4─6月のスマホ売上高が、半導体不足で打撃を受けると予想している。

半導体メーカーは、万が一最先端の半導体に供給制約局面が到来した場合に備えた手も打っている。米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は27日、年間売上高見通しを引き上げるとともに、スーCEOは新たな目標達成に必要な部品調達に問題はないと自信を表明した。

スー氏は、半導体パッケージ基板(サブストレート)の不足に対応するため、AMDはサプライヤーの生産能力増強に投資をしてきたと強調。ロイターのインタビューで「われわれはサプライヤーの事業のより大きな部分を構成しており、われわれが必要とする生産能力をパートナーが獲得するのを支援する機会に目を向け続けている。昨年、具体的な取り組みを開始し、今後も続けていく」と述べた。

(Jonathan Weber記者、Stephen Nellis記者)

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