コロナ後の金融・財政:日銀の金融政策正常化、米利上げが好機=木内・元日銀審議委員

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6月11日 野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト木内登英氏(元日銀審議委員)はロイターとのインタビューで、米連邦準備理事会(FRB)の利上げは日銀が金融政策を正常化する好機との見方を示した。同じ局面で日銀が動けば、円高を誘発する可能性が低いと語った。写真は木内氏。2020年12月、東京で撮影(2021年 時事通信)
6月11日 野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト木内登英氏(元日銀審議委員)はロイターとのインタビューで、米連邦準備理事会(FRB)の利上げは日銀が金融政策を正常化する好機との見方を示した。同じ局面で日銀が動けば、円高を誘発する可能性が低いと語った。写真は木内氏。2020年12月、東京で撮影(2021年 時事通信)

[東京 11日 ロイター] - 野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト木内登英氏(元日銀審議委員)はロイターとのインタビューで、米連邦準備理事会(FRB)の利上げは日銀が金融政策を正常化する好機との見方を示した。同じ局面で日銀が動けば、円高を誘発する可能性が低いと語った。

木内氏はFRBが2015年に政策金利の引き上げを開始したことに言及し、日銀内では追随して正常化に動かなかったことを「後悔する向きもあるのではないか」と推察。「FRBの利上げが見えてくる中であれば、日銀は円高リスクをあまり懸念せず正常化に進めるかもしれない」と語った。

3月の政策点検などを通じ、日銀はすでに事実上資産買い入れペースを落としているため、FRBに比べ利上げまでのステップは少なくなるとも指摘。その上で「次の一手は利上げだろう。まずはマイナス金利の解除が有力な選択肢となるだろう」と述べた。

木内氏はかねてより、日銀がイールドカーブ・コントロール(YCC)の弊害に対処する措置の選択肢として、現行10年に設定している長期金利ターゲットの短期化を挙げている。しかし、そうした措置は「黒田(東彦)総裁在任中可能かもしれないが、正式な正常化プロセスではない」とみている。

FRBが2023年に利上げするとすれば、同年4月の黒田総裁の任期切れと重なり、日銀は新総裁下で正常化を進める可能性があると指摘。その際は「長期金利のターゲットは撤廃し、短期金利ターゲットを引き上げていくのではないか」と述べた。

ロイターが6月に行った調査によると、FRBは今年8月か9月に量的緩和(QE)の縮小(テーパリング)に向けた計画を発表する可能性が高いと予想されている。資産購入の縮小を実際に開始するのは来年初めとみられている。 利上げについては、フェデラル・ファンド金利先物市場が先月末の時点で2023年1─3月期までに利上げ開始を織り込んでいる。[nL3N2NI2TE ]

    <物価目標の位置付け>

日銀が掲げる2%物価目標については、マイナス金利政策を解除する前に、より長期的なターゲットだと位置づけを修正する可能性があると予想。「非常に長い期間で達成する目標であり、足元の金融政策はそれに縛られない」と柔軟化させる可能性があるとした。

ゼロ近傍で推移している現在の物価については、経済の実力を映した安定した状態で「それが物価目標の水準であるべきだと思う」とした。「非常に小さいプラスというぐらい。レンジでいえばゼロから1%、ピンポイントなら0.5%ぐらいが妥当なのではないか」との認識を示した。

同氏は、中央銀行の役目は物価を安定させることだが、妥当な物価安定の水準は経済そのものに備わっているものと指摘。企業や働いている人の努力、政府の政策、少子化対策などで経済が高まった結果として物価は上がるものであり「金融政策で目標値を達成しようということ自体、無理なのだと思う」と述べた。

*インタビューは6月11日までに実施しました。

金子かおり、木原麗花

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