インタビュー:自動車減産の影響軽微、海外事業は上振れ=日鉄副社長

日本製鉄の森高弘副社長は、世界的な半導体不足などで自動車メーカーの減産が相次いでいるものの、鋼材需要への影響は想定内との認識を示した。写真は同社のロゴ。都内で2019年3月撮影(2021年 ロイター/Yuka Obayashi)
日本製鉄の森高弘副社長は、世界的な半導体不足などで自動車メーカーの減産が相次いでいるものの、鋼材需要への影響は想定内との認識を示した。写真は同社のロゴ。都内で2019年3月撮影(2021年 ロイター/Yuka Obayashi)

[東京 31日 ロイター] - 日本製鉄の森高弘副社長は、世界的な半導体不足などで自動車メーカーの減産が相次いでいるものの、鋼材需要への影響は想定内との認識を示した。海外事業は活況な市況に支えられ、従来計画に比べて上振れて推移していることも明らかにした。ロイターとのインタビューで語った。

トヨタ自動車が9月の世界生産を計画から4割減らす方針を発表するなど、鋼材の大口供給先である日本の自動車メーカーの間で工場を一時的に止める動きが広がっている。半導体不足に加え、東南アジアで新型コロナウイルスの感染が拡大し、部品の調達が滞っているためで、森副社長は「数量面への影響は確かにある」と語った。

一方で森副社長は、「想定と大きく乖離(かいり)しているわけではない」とも説明。「想定を逸脱して下方に行っているということはない」と述べ、過去最高益を見込む今年度業績への影響は軽微との認識を示した。トヨタは下期に生産を挽回し、年間計画は変更しておらず、森副社長は「多分そうなると思う」と述べた。

海外事業については、出てきたばかりの7―8月の実績を踏まえ、「想定していたよりも良い状況にある」とした。例えば、7月以降、米国の熱延コイル市況はピークアウトするとみていたが、現状は2000ドルを超えてなお上伸している。

一時230ドルまで上昇した原料の鉄鉱石の価格は、中国の粗鋼減産方針を受けて100ドル近く下落した。「多少揺り戻しがあって140―150ドルに戻ることはあっても、200ドルを超えるようなことにはならないと思う」との見通しを示した。

原料炭は高止まりしているものの、鉄鉱石価格の下落、海外鋼材市況の上昇があり「決算数字そのものはアップサイドだとみている」と語った。

このほか森副社長は、トヨタとの間で値上げで決着したと報じられている大口供給先との価格交渉について、一定の進捗が見られていることを明らかにした。海外市況と納入価格に開きがあり、速やかに条件が折り合わない場合は安定供給を保証できなくなる可能性を示唆しながら強い姿勢で臨んだという。森副社長は「理解は深まっている」と語った。

報道によると、下期(10―3月)にトヨタが部品会社に卸す鋼材価格は、上期(4―9月)比1トンあたり2万円引き上げる。その前提となる日本製鉄とトヨタの価格交渉も引き上げで合意したという。

日本製鉄は8月3日の決算発表で、22年3月期(国際会計基準)の連結純利益予想を2400億円から3700億円(前期は324億円の赤字)に上方修正した。鋼材価格の改善やインドや北米などの海外グループ会社の損益好転が寄与している。

本業のもうけを示す事業利益も4500億円から6000億円(前期は1100億円)へと、前期比約5.5倍に引き上げた。事業利益や純利益は、2014年度に記録した経営統合後の最高益を更新する。

*インタビューは25日に実施した。

(清水律子、大林優香)

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