焦点:7―9月生産に下振れリスク、減産懸念拭えず GDP回復に影

8月31日、    自動車や機械、鉄鋼など主要工業品の7―9月期鉱工業生産は、供給制約に伴う自動車大手の減産などで下振れリスクを伴いそうだ。京浜工業地帯で2016年2月撮影(2021年 ロイター/Toru Hanai)
8月31日、 自動車や機械、鉄鋼など主要工業品の7―9月期鉱工業生産は、供給制約に伴う自動車大手の減産などで下振れリスクを伴いそうだ。京浜工業地帯で2016年2月撮影(2021年 ロイター/Toru Hanai)

金子かおり 山口貴也

[東京 31日 ロイター] - 自動車や機械、鉄鋼など主要工業品の7―9月期鉱工業生産は、供給制約に伴う自動車大手の減産などで下振れリスクを伴いそうだ。この日公表された予測指数は計画を反映しきれておらず、5四半期ぶりに前期比マイナスとなる懸念は拭えない。減産の影響は国内総生産(GDP)の年内回復シナリオにも影を落としそうだ。

経済産業省が31日発表した7月の鉱工業生産指数速報値は98.1となり、前月比1.5%下がった。低下は2カ月ぶり。15業種のうち自動車工業や電気・情報通信機械工業などの9業種が低下し、全体の指数を押し下げた。

    主要企業の生産計画から算出する生産予測指数は8月が前月比3.4%の上昇、9月は1.0%の上昇となった。このうち、自動車を含む輸送機械工業は8月に7.3%の低下を見込むが、9月は3.1%の上昇に転じる想定だ。

<織り込みきれない減産計画>

もっとも今回の生産指数は8月上旬に集計され、8月、9月の見通しについて「自動車大手の減産計画を十分に反映しきれていない」と、経産省幹部の1人は言う。

    トヨタ自動車は19日に9月の世界生産を4割程度減らす方針を明らかにした。減産規模は36万台となり、日本国内では14万台と想定する。翌20日には、傘下のダイハツ工業が国内完成車工場4拠点の生産ラインの一部で8月下旬から9月にかけて稼働停止日を設けると発表。最長17日間に及ぶ停止期間中の減産規模は計3─4万台程度となる。

向こう2カ月の生産予測では、半導体やフラットパネル製造装置などの生産用機械や化学、電子デバイスのプラスが想定される。だが、自動車の減産を補いきれるかは不透明で「7―9月期の生産は前期比マイナスになる可能性がある」と、SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは言う。

直近では、中国・上海浦東国際空港職員のコロナウイルス感染で自動車部品を運ぶ貨物便に運休が出るなどし、マツダが本社工場と防府工場の操業を一時見合せた。こうした事例が続けば「8、9月の生産は厳しい局面に入りかねない。公表された予測以上に下振れする懸念もある」(別の関係者)との声が、政府内にはある。

   <再びマイナス成長も>

    減産の影響は、輸出の減少を通じてGDPの外需寄与に波及しそうだ。みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは「供給制約で自動車の輸出にブレーキがかかるうえ、海外からのワクチン購入なども予想され、7―9月期も外需の大幅なプラス寄与は見込めない」と指摘する。

    海外経済の回復を受けて4―6月期の輸出は前期比2.9%のプラスだったが、輸入が同5.1%のプラスとなった影響でGDP全体に占める外需の寄与度はマイナス0.3%となった。外需は1―3月期も0.2%のマイナス寄与で、7―9月期もマイナスなら3四半期連続となる。

7―9月期GDPについて、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは年率2.5%のプラス成長を見込んでいたが、「先の緊急事態宣言の対象地域拡大と自動車生産の減少で現時点の予想は、ほぼゼロに近い」と話す。

今後、政府が9月12日を期限とする緊急事態宣言を延長すれば「成長率は2四半期ぶりにマイナスとなる」と木内氏はみている。

(金子かおり、山口貴也 編集:久保信博)

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