インタビュー:再エネ開発目標の達成、「30年度まで」に前倒し=東電RP社長

清水律子 大林優香

[東京 8日 ロイター] - 東京電力グループの再生可能エネルギー発電事業を担う東京電力リニューアブルパワー(東京都千代田区)の文挾誠一社長は、日本政府による温室効果ガス削減目標引き上げを受けて、再生可能エネルギー600―700万キロワット(kW)の新規開発目標の達成時期を「2030年度まで」に前倒しすることを明らかにした。これに伴い、純利益1000億円も30年度までに達成する、とした。

ロイターのインタビューで述べた。

同社はこれまで、30年代前半までに600―700万kWの再エネの新規開発と、純利益1000億円規模を目指すとしていた。しかし、政府が30年度の温室効果ガス削減目標を46%に引き上げたため、同社も再エネ開発を加速させる。

<1兆円規模の再エネ投資>

こうした目標達成に向けて、文挾社長は「相当な資金が必要になる。再エネ開発目標を前倒ししたため、30年までに1兆円規模の再エネ向け投資が必要になる」と述べた。例えば、力を入れる洋上風力を1カ所手掛ける場合、半分の資金負担としても1000億円規模になるという。

同社は、9日に初めて300億円のグリーンボンド(3年債)を発行する予定にしており「グリーンボンド発行は一つの大きな武器となる」と指摘。さらには、銀行借り入れやプロジェクトファイナンスなど「その時々で何が一番ベターかを検討する」とした。

<洋上風力、日本のポテンシャルは「浮体式」>

再エネ開発で中心となるのは洋上風力発電。文挾社長は「20年代半ばまでには浮体式の技術や知見を習得しておきたい」と述べた。洋上風力は欧州が先行しているが、遠浅なので浮体式の技術は遅れていると指摘。「日本の海は遠浅ではないため、浮体式の方がポテンシャルは高い。20年代後半以降に、国内浮体式の実現を目指す」と述べた。

浮体式にはまだ、デファクトスタンダードはないという。同社は、現在ノルウェーで共同実施している「テトラ・スパー型」浮体式洋上風力発電の実証プロジェクトに参画しており「2―3年かけて、いろいろな知見をここで蓄積したい」と述べた。

一方、陸上風力発電については「適地がそれほどなく、大規模にはできない。われわれはそういうところにはいかない」とした。

現在、パブリックコメント(意見募集)を募っている第6次エネルギー基本計画(案)では、30年の再エネの割合を36―38%に引き上げている。

文挾社長は、洋上風力には時間がかかること、太陽光発電を相当量入れなければならないことを挙げ「コストダウンやサプライチェーンの整備など国のサポートを受けて進むなら達成できるかもしれないが、このままでは相当チャレンジングだと思う」と述べ、税制や補助金などの国による施策が必要だと指摘した。

東京電力リニューアブルパワーは、再生可能エネルギー専業会社。20年4月に事業を開始した。

*インタビューは6日に実施しました。

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