JAL、「守りと攻め」の3000億円調達、コロナ長期化対応と成長投資

9月10日、日本航空は3000億円程度の資金調達の詳細を発表した。北海道・新千歳空港で5月撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)
9月10日、日本航空は3000億円程度の資金調達の詳細を発表した。北海道・新千歳空港で5月撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

[東京 10日 ロイター] - 日本航空(JAL)は10日、総額約3000億円を調達すると正式発表した。劣後ローンで最大2000億円を調達し、劣後債1000億円程度を発行する。旅客需要の低迷が続く中、新型コロナウイルス感染拡大の影響長期化に備えるほか、成長投資や有利子負債の返済資金などにも充てる。

世界的に脱炭素化が進む中、環境投資も必要で、国際線の主要路線での退役機の後継として、二酸化炭素の排出量を大幅に削減できるエアバスA350─1000型機の航空機を導入する。国内線のレベニューマネジメントシステム刷新などの投資にも充当する。

<守りと攻めのファイナンス>

JALの木藤祐一郎・財務部長は、今回の資金調達の狙いについて「手元流動性の確保、さらなる影響長期化への備えという守りだけではなく、将来のポストコロナを見据えた成長投資、長期の投資資金を確保するための攻めのファイナンス」と説明した。

今回の資金調達は、格付評価で調達額の50%が資本として認められる。JALの自己資本比率は6月末時点で42.4%で、ANAホールディングスの26.6%など他の航空会社に比べて高い水準にある。木藤氏は「コロナの影響がどこまで及ぶか正直わからず、最悪の事態を想定した」と述べ、「楽観論では行きたくない。想定外だったと嘆くことはしたくない」と話した。

同社は昨年11月に公募増資などで約1800億円を調達し、新規に1億株発行して約3割の希薄化を招いた。今回は希薄化しない資金調達の手段として、一部が資本とみなされる劣後ローンと劣後債を組み合わせた。木藤氏は「しっかり成長を果たし、株主配当を増やしたい」と述べた。

キャッシュバーン(現金燃焼)については、4─6月期は1カ月約100─150億円と前年同期(450─500億円)から改善してきているが、7─9月期(目標は50億円)は現状、想定を下回って推移しているもようだ。

木藤氏は足元のキャッシュバーンの実額に関しての言及は控えたが、国内線は緊急事態宣言の延長などで「想定より厳しい」とする一方、貨物は想定以上に好調で、コスト削減も進んでいるという。目標達成は「簡単ではないが、9月末までまだ3週間程度ある。様子を見たい」と話した。

コミットメントライン(融資枠)3000億円分は「最後のセーフティネットとして未使用のまま保持したい」とした。2022年3月期の業績予想は現時点でも未定とした。

劣後ローン2000億円は三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行と日本政策投資銀行(DBJ)の4行から調達する。劣後債は、みずほ証券と三菱UFJモルガン・スタンレー証券、大和証券、BofA証券、SMBC日興証券の5社が主幹事を務める。

DBJは、JALの成長施策はポストコロナ時代を見据えた競争力の強化につながり、国内各地の乗り継ぎ需要拡大など地域経済活性化にもなるとして評価。「新型コロナリバイバル成長基盤強化ファンド」を活用する。

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