景気判断、5地域引き下げ 自動車部品の供給制約が影=日銀報告

経済・ビジネス

日銀は7日に公表した地域経済報告(さくらリポート)で全9地域中、東北・東海・近畿・中国・九州沖縄の5地域の景気判断を引き下げた。写真は都内で昨年6月撮影(2021年 ロイター/ISSEI KATO)
日銀は7日に公表した地域経済報告(さくらリポート)で全9地域中、東北・東海・近畿・中国・九州沖縄の5地域の景気判断を引き下げた。写真は都内で昨年6月撮影(2021年 ロイター/ISSEI KATO)

[東京 7日 ロイター] - 日銀は7日に公表した地域経済報告(さくらリポート)で全9地域中、東北・東海・近畿・中国・九州沖縄の5地域の景気判断を引き下げた。夏場の感染拡大に加え、東南アジアからの自動車部品の供給制約に伴う一部の減産の影響が出た。

景気判断の5地域引き下げは2020年7月以来。支店長会議後に記者会見に臨んだ支店長からは、自動車の需要自体は衰えていないものの、供給制約の解消時期は見通しにくいとの声が相次いだ。

<挽回生産の時期に不透明感>

需要項目別で、生産は東北・東海・中国・九州沖縄の4地域で判断を引き下げた。自動車部品の供給制約が影を落とし、自動車の比率が低い四国は電気機械や生産用機械の堅調推移で判断引き上げとなった。

林新一郎名古屋支店長は、東南アジアの感染状況は峠を越え、部品工場も稼働を再開しているが「不確実性はきわめて高い」と指摘。「自動車部品の供給改善も相応の時間を要するのではないか。東南アジアはワクチン接種率が低く、油断は禁物だ」と警戒感を示した。

一方、冨田淳福岡支店長は、九州の自動車関連企業は人員を含めて供給回復後の増産に備えているとの見方を示した。「供給制約の問題が解消してくれば、九州における自動車生産は比較的速やかに回復していけるのではないか」と語った。

中国の電力不足の影響については「具体的に支障が出ているという話はなく、リスク要因と認識している」(林名古屋支店長)という。

自動車減産の影響が広がる一方で、グローバルなIT需要の恩恵を受けている企業も多い。企業からは「海外からのPC・データセンター用部品の需要は引き続き堅調でフル生産の状態が継続している。先行きについても、当面は高水準の輸出・生産が続く見通し」(名古屋、電子部品・デバイス)との指摘が出ていた。

高口博英大阪支店長(理事)は輸出について、半導体不足や東南アジアからの供給制約の影響が徐々に広がりつつある半面、IT関連財は増加を続け、世界的な設備投資の持ち直しや北米の旺盛な住宅需要を背景に一般機械も増加している、とした。「全体として増加基調に変化はない」との見方を示した。

<個人消費、持ち直しに期待>

個人消費は、東北・東海・近畿・中国・四国の5地域で判断を引き下げた。新型コロナウイルス感染症の影響で引き続き厳しい状況が続いているものの、企業からは前向きなコメントも出ていた。「ワクチン接種済みの人向けに飲食代金を割り引くサービスを開始したところ、ワクチン接種を終えた客の利用が徐々に増えている」(金沢、飲食)という。

高口大阪支店長は9月後半に新規感染者数が減少し、緊急事態宣言も解除されたことから、先行きは感染拡大の警戒感は残りつつも個人消費は緩やかに持ち直していく、との見方を示した。ワクチン接種の一段の進展や、接種証明・陰性証明書を活用した行動制限の緩和策、治療薬の開発などが下支えになるとみている。

(和田崇彦、杉山健太郎)

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