IMF、世界経済成長見通し引き下げ 供給制約やインフレ圧力

国際通貨基金(IMF)は12日、最新の世界経済見通し(WEO)を発表し、米国、中国、日本など主要国の成長率予想を引き下げた。2018年9月撮影(2021年 ロイター/Yuri Gripas)
国際通貨基金(IMF)は12日、最新の世界経済見通し(WEO)を発表し、米国、中国、日本など主要国の成長率予想を引き下げた。2018年9月撮影(2021年 ロイター/Yuri Gripas)

[ワシントン 12日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は12日、最新の世界経済見通し(WEO)を発表、供給網の混乱と物価上昇圧力が新型コロナウイルス危機からの回復を阻害しているとして、米国、中国、日本など主要国の成長率予想を引き下げた。

2021年の世界経済の成長率予想は5.9%と7月時点の6.0%から下方修正した。22年は4.9%に据え置いた。

IMFは「この小幅な引き下げは一部の国の大幅な下方修正を隠す形になっている」と指摘した。

「低所得国グループの見通しは新型コロナ感染状況の悪化によりかなり暗くなった。先進国グループは供給網の混乱などのため短期的な見通しが厳しくなった」と説明した。

世界の製造業は、半導体などの主要部品の不足、港の混雑や貨物コンテナの不足、労働力不足などにより打撃を受けている。

また需要と供給のミスマッチで物価が上昇している。IMFはインフレ率が来年には新型コロナ流行前の水準に戻ると予想しているが、供給障害が続けばインフレ期待が上昇するリスクがあるとしている。

IMFのチーフエコノミスト、ギタ・ゴピナス氏は、持続的なインフレ上昇を巡る懸念が強まっているとし、「先例のない回復局面において、インフレ期待が高まるリスクが一層鮮明となれば、中銀は迅速に行動できるよう用意を整えておく必要がある」と述べた。

さらに、賃金上昇が特定のセクターから広範囲に拡大する兆候や、住宅価格の上昇がインフレ期待を不安定化を招いているかどうかなどを金融政策担当者は「特に注視」する必要があると強調した。

同時に、基調的な需要は堅調で、サプライサイド(供給側)が主な問題と指摘し、70年代型の「スタグフレーション」と比較する向きをけん制した。

<米国は成長鈍化>

こうした影響を最も受けているのが米国でIMFは2021年の成長率を6.0%と前回予想の7.0%から引き下げた。

バイデン米大統領が提唱する4兆ドルの歳出計画を議会が承認することを前提としている。歳出規模が大きく減額されれば、米国と主要貿易相手国の成長見通しが押し下げられるとして一段の下方修正もあり得ると指摘した。

ドイツは0.5%ポイント引き下げ3.1%、日本は0.4ポイント引き下げ2.4%とした。

英国は6.8%と0.2ポイントの下方修正にとどめた。主要7カ国(G7)では最も高い成長を見込む。

中国は公共投資が予想以上に縮小されたとして、今年の予想を8.0%と0.1ポイント引き下げた。

インドは9.5%に据え置いたが、他のアジア新興は新型コロナの感染状況の悪化を理由に下方修正した。インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、シンガポールの東南アジア諸国連合主要5カ国(ASEAN5)は1.4ポイント引き下げた。

一方、サウジアラビアやナイジェリアなどの資源輸出国は原油や商品価格の上昇により小幅な上方修正となった。

<ワクチンによる分断>

WEOでは新型コロナワクチン接種の「深刻な分断」で、成長見通しに危険な差が生じていると警告。低所得国は人口の96%がワクチン未接種で成長率の低下が長期化、貧困が拡大し、インフレ期待を抑制できなくなるとの認識を示した。

「新型コロナ以前の推計と比較して、2021年は約6500万─7500万人が新たに極貧状態に陥るとみられる」とし、低所得国は新型コロナに対処し流行以前の成長軌道に戻るために追加で約2500億ドルが必要と訴えた。

これらの国々の来年の国内総生産(GDP)は合計で新型コロナ禍前の水準を6.7%下回る一方で、先進国のGDPは同水準を1%上回るとした。

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