コロナ前から財務脆弱な中小企業、デフォルト率高まる傾向=日銀リポート

経済・ビジネス

日銀は21日、日本の金融システムは全体として安定性を維持していると総括した。写真は、日銀本店で会見する黒田総裁。2020年1月21日に撮影。(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
日銀は21日、日本の金融システムは全体として安定性を維持していると総括した。写真は、日銀本店で会見する黒田総裁。2020年1月21日に撮影。(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 21日 ロイター] - 日銀は21日に公表した「金融システムリポート」で、新型コロナウイルス感染症が中小企業の財務状況に与える影響を分析した。コロナ以前から財務基盤が脆弱(ぜいじゃく)だった企業ほど、2023年度時点でのデフォルト率が高くなる傾向が分かった。

ここでのデフォルト率は、先⾏き1年以内に、要管理先以下へのランクダウン、3か⽉以上延滞、信⽤保証協会による代位弁済のいずれかに新たに該当する確率と定義している。

日銀は、約88万社の個社データを用い、感染症が中⼩企業のデフォルト率に与える影響について23年度までの財務状況をシミュレーションした。資金繰り支援策として導入された実質無利⼦融資は当初、元本返済・利払いが⽣じないため、21─22年度のデフォルト率は抑えられるが、実質無利⼦融資の利払い負担が表れる23年度に幾分上昇する。

分析では、コロナ感染症前から財務基盤が脆弱だった企業ほど、20年度のデフォルト率の低下幅が大きくなっていることも分かった。大規模な支援策を背景に積極的な資金調達が行われ、借り入れた資金を手元資金として保有し続けているとみられる。もっとも、そうした企業は収益回復ペースの想定が緩やかであることから23年度時点でデフォルト率は高くなる傾向という。

日銀は、この分析結果をもとに、今後の景気の回復動向次第では、感染症の影響が大きい企業や、従前から財務基盤が弱かった企業への貸し出しに悪影響が及ぶリスクがあることを示唆した、としている。

金融システムの総括判断では、新型コロナウイルス感染症が引き続き国内外の経済・金融面に大きな影響を及ぼしているものの、全体として安定性を維持していると指摘。金融機関の経営体力が総じて充実している下で政策対応が効果をあげており、金融仲介機能は円滑に発揮されているとした。

先行きについては、感染症の再拡⼤や⽶国⻑期⾦利上昇に伴う国際⾦融市場と新興国経済の調整などの状況を想定しても、日本の金融システムは「相応の頑健性を備えている」とした。ただ、国際金融市場が大幅かつ急速に調整する場合には、金融機関の経営体力が低下して金融仲介機能の円滑な発揮が妨げられ、実体経済の一段の下押し圧力として作用するリスクがあるとした。

特に注意すべきリスクとして、1)信⽤コストの上昇、2)有価証券投資関連損益の悪化、3)ドルを中⼼とする外貨資⾦市場のタイト化に伴う外貨調達の不安定化──をあげた。

(杉山健太郎 和田崇彦 編集:田中志保)

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