再送現在の円安は経済にプラス、実質実効レートに基準ない=日銀総裁

経済・ビジネス

10月28日、日銀の黒田東彦総裁は、金融政策決定会合後の記者会見で、外為市場で進んできた円安について、現時点で日本経済にマイナスにはならないとの見方を示した。2017年撮影(2021年 ロイター/Thomas White/Illustration)
10月28日、日銀の黒田東彦総裁は、金融政策決定会合後の記者会見で、外為市場で進んできた円安について、現時点で日本経済にマイナスにはならないとの見方を示した。2017年撮影(2021年 ロイター/Thomas White/Illustration)

(本文1段落目の脱字を補って再送します)

[東京 28日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は28日、金融政策決定会合後の記者会見で、現在の為替相場を「若干の円安」と表現し、総合的に見て現在の水準は日本経済にとってプラスになっているとの認識を示した。円の実質実効レートは、2015年6月に自身がけん制したときと同水準になっているが「具体的なノルム(基準)があるわけではない」とし、実質実効レートと名目レートはかなりかけ離れたものだと語った。

<悪い円安ではない>

外為市場では円安が進展。ドル/円は9月下旬の109円後半から1カ月間で一時114円半ばまで上昇した。黒田総裁は、為替相場の水準や短期的な動きにコメントは差し控えるとしたが、一般論として、為替レートの経済への波及経路は若干変化してきているのは事実だ、と述べた。

円安は原材料輸入比率が高い内需型企業の収益や家計の実質所得に対して押し下げ圧力になる一方、グローバル展開する企業の収益を押し上げ、賃上げや設備投資を積極化しやすくさせる効果があると指摘。その上で「現時点で若干の円安だが、これが『悪い円安』とか日本経済にとってマイナスになるということはない」と語った。いまの円安水準が「日本経済に総合的にプラスであることは確実だ」とも述べた。

黒田総裁は、為替は経済・金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが最も重要であり、現時点でもそれは変わっていないと述べた。

国際決済銀行によると、9月時点の円の実質実効レートは70.43。2015年6月に黒田総裁が「ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れるということはなかなかありそうにない」とけん制したときと同水準になっている。

黒田総裁は「実質実効為替レートの水準について、具体的なノルム(基準)があるわけではない」と述べた。実質実効為替レートは、名目レートとかなりかけ離れた話であり、事後的な経済分析に意味があるとしても、「政策的な議論にとって意味があるとは思っていない」と強調した。

世界的な物価上昇率の高まりについては、基本的には経済活動再開に供給が追い付いていないことが要因と述べた。その上で、日本では海外で懸念されているようなインフレ高進のリスクは極めて限定的との見方を示した。

<金融システムリスク、警戒感が後退>

同日公表された展望リポートでは、経済のリスク要因から「金融システムの状況」が削除された。黒田総裁は会見で、日本の金融システムについて、先行き感染症の再拡大や海外の長期金利が上昇しても「相応の頑健性を備えている」と指摘。企業の資金繰りについては政府・日銀の支援策が功を奏し、倒産や失業も増えていないとし、金融システムのリスクについて「発生可能性の高いリスクとして特にメンションする必要はないと判断した」と説明した。

来年3月までの新型コロナ特別プログラムについて、期限を再延長するか終了するかは現時点でまだ何も決めていないと述べ、感染症や企業金融の状況を踏まえて適切に判断するとした。

(杉山健太郎、和田崇彦 編集:青山敦子)

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