焦点:一転して強めの国内生産予測、供給制約で年内回復なお不透明

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経済産業省が29日に発表した10─11月の生産見通しは、5四半期ぶりに前期比マイナスとなった7─9月期から一転し、強めの予想となった。写真は横浜で2017年1月撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
経済産業省が29日に発表した10─11月の生産見通しは、5四半期ぶりに前期比マイナスとなった7─9月期から一転し、強めの予想となった。写真は横浜で2017年1月撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 29日 ロイター] - 経済産業省が29日に発表した10─11月の生産見通しは、5四半期ぶりに前期比マイナスとなった7─9月期から一転し、強めの予想となった。重しとなっている自動車の部品不足は最悪期を脱したとの声が出る一方、供給制約を理由に業績見通しを下方修正する企業も相次いでおり、10―12月期のプラス回復には不透明感も漂う。

主要企業の生産計画から算出する生産予測指数は、10月が前月比6.4%の上昇、11月は5.7%の上昇だった。このうち、自動車を含む輸送機械は10月に17.9%、11月は35.0%それぞれ急回復すると想定している。

国内の自動車メーカー8社が28日に発表した9月の世界生産は、トヨタやホンダ、日産自動車を含め7社が前年実績を割り込んだ。新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な東南アジアで部品や部材の工場が停止し、減産に追い込まれたためだが、最大手のトヨタはこの先減産幅の縮小を見込んでいる。部品の調達のめどがつきつつあるとして、12月からは挽回生産に入る方向で調整しており、トヨタ幹部は「一番悪い時期は脱した」としている。

その一方で、部品や部材のサプライチェーン(供給)の制約を理由に、今年度の業績見通しを引き下げる製造企業も相次いでいる。日立製作所は27日、取引先である自動車メーカーの減産を受けて2022年3月期の連結営業利益見通しを小幅に下方修正した。会見した河村芳彦最高財務責任者(CFO)は、「第2・四半期より第3・四半期に(半導体不足の影響が)より強く出ると見ている」と語った。

キヤノンは部品不足に加え、原油高が樹脂製品の調達コストを押し上げているとして、ファナックは需要は旺盛としながらも部品不足で先行きが不透明だとして業績予想を引き下げた。

「10、11月の予測指数通りなら12月が前月比14%程度のマイナスとなっても前期比プラスを維持できる計算になるが、予測値は下振れする傾向が強い」と、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎・経済調査部長は言う。今回の調査は10日に集計され、その後の企業の生産計画を十分に反映できていない。斎藤氏は「10―12月期の生産が前期比プラスになるかは微妙な状況」とみている。

SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは「方向性としては10月、11月、12月と前月比でプラスが続き、かつ12月のプラス幅は11月より高くなる」とのシナリオを基本線に描く。

もっともその勢いは鈍く「9月速報値が予想を下回ったことから発射台が下がり、10―12月の生産はほぼゼロ近傍か、若干のプラスだろう。部品調達の影響が残ればマイナス圏にとどまる可能性もあり得る」と、丸山氏は言う。

(山口貴也、金子かおり 編集:久保信博)

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