商品市況上昇の影響議論、価格転嫁の動きに注目=9月日銀議事要旨

経済・ビジネス

11月2日、日銀の9月の金融政策決定会合では、何人かの委員が半導体不足や東南アジアでの新型コロナウイルス感染拡大に伴う供給網の障害が世界的な生産・貿易活動の下押し要因になっているとの認識を示した。写真は日銀本店。2020年5月22日、東京で撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
11月2日、日銀の9月の金融政策決定会合では、何人かの委員が半導体不足や東南アジアでの新型コロナウイルス感染拡大に伴う供給網の障害が世界的な生産・貿易活動の下押し要因になっているとの認識を示した。写真は日銀本店。2020年5月22日、東京で撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 2日 ロイター] - 日銀の9月の金融政策決定会合では、エネルギーや原材料の価格上昇が物価や実体経済に与える影響などが議論された。委員の1人は、企業がコスト増加分を製品価格に転嫁できなければ設備投資や人件費の抑制につながり、所得の増えない家計が消費を抑制することになるため、持続的な物価上昇の実現にはそうした悪循環を変化させていく必要があると指摘した。

国内の足元の物価動向については、何人かの委員が経済活動の落ち込みに比べると基調は底堅いと評価。消費者物価の前年比の先行きは、エネルギー価格などの上昇を反映して小幅のプラスに転じていくと委員の見方が一致した。

委員の1人は、今後の需要回復によって企業の価格設定スタンスや家計の値上げ許容度がどのように変化していくかに注目していると述べた。別の委員は、消費者物価の前年比は一時的要因もありプラスに転じる公算が大きいものの、需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると「物価安定の目標の達成は難しい」と指摘した。

物価の先行きについて、ある委員は、現時点で原材料コスト上昇の消費者物価への波及は限定的だが、需給ギャップが改善すればそうした動き強まっていくとの見方を示した。ある委員は、ペントアップ需要が顕在化する局面でモノからサービスへの需要のシフトが生じるが、サービス価格は需要への感応度が相対的に低く、個人消費の回復ほどには物価上昇率が高まらない可能性があると述べた。

<供給制約が生産・貿易活動を下押し>

何人かの委員は、半導体不足や東南アジアの新型コロナウイルス感染拡大に伴う供給網の障害が世界的な生産・貿易活動の下押し要因になっているとの認識を示した。海外経済の先行きは総じてみれば回復を続けるとの見方で一致したが、供給面の制約や不動産セクターを中心とする中国経済の動向、商品市況の変動などが引き続きリスク要因になり得るとの指摘が出ていた。

国内景気については、1人の委員が、供給面の制約が輸出・生産面に影響を与えているものの設備投資は底堅く推移していると指摘。今後、感染症の影響が収束していけば、所得から支出への前向きな循環メカニズム強まる下で経済はさらに成長続けると委員の見方は一致した。

企業の資金繰りは、対面型サービスなど一部セクターで厳しい状態にあるものの、感染症流行直後に急拡大した予備的な資金需要は落ち着いているとの声が出た。委員の1人は、感染症の経済への影響が和らいでいけば特別プログラムは縮小させるべきだが、十分に慎重な判断が必要であると指摘した。

また、ある委員は、今後、感染症下で積み上がった企業債務の返済が金融機関の想定通りに進むかについて注視する必要があると述べた。

日銀は同会合で現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和政策の継続を賛成多数で決定。気候変動対応オペの詳細も全員一致で決めた。国内景気について「基調としては持ち直している」との認識を維持した一方、輸出や生産の文言を「一部に供給制約の影響を受けつつも、増加を続けている」に修正した。

(杉山健太郎 編集:田中志保)

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