日銀が国債オペ「総動員」、2兆円超を通告 金利低下でも円高に

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3月30日、日銀は2兆円を超える国債買い入れオペを「総動員」して金利上昇を止めに動いた。写真は都内で2020年5月撮影(2022年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
3月30日、日銀は2兆円を超える国債買い入れオペを「総動員」して金利上昇を止めに動いた。写真は都内で2020年5月撮影(2022年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 30日 ロイター] - 日銀は30日、2兆円を超える国債買い入れオペを「総動員」して金利上昇を止めに動いた。この日予定されていたオペの買い入れ予定額を増額したほか、予定になかった国債も午前と午後に臨時購入。連続指し値オペ(2日目)も実施した。超長期債中心に円金利は低下したが、ドル/円は予想外の円高進行となった。

日銀は午前、予定していた3─5年や5─10年の国債買い入れオペのオファー(買い入れ予定)額を増額したほか、予定になかった超長期債対象の臨時のオペも通告した。さらに午後にも臨時オペを通告し、長期・超長期債を買い入れた。指し値オペを除き計2兆2850億円(物価連動債含む)のオファーとなった。

連続指し値オペを含む指し値オペの実施で、日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策のターゲットである10年債金利は許容上限の0.25%で上昇が止まったが、中期債や超長期債の金利は前日まで上昇を継続。10年以外の金利が上昇することで、10年にも金利上昇圧力がかかり続ける可能性があった。

日銀金融市場局は30日、「イールドカーブ全体に強い上昇圧力が生じ、長期金利が変動幅の上限を超える恐れがあることなどを踏まえ、一昨日に公表した連続指し値オペの実施とともに、10年物国債金利の操作目標をゼロ%程度とする金融市場調節方針をしっかり実現するよう公表した」とコメントした。

オペを受けて円金利は超長期債を中心に大きく低下。20年債は一時前日比8.5bp低下の0.730%、30年債も同10.0bp低下の0.970%、40年債は一時同8.0bp低下の1.055%となった。新発10年国債利回り(長期金利)も同3.0bp低下の0.215%まで水準を下げた。

市場では「超長期債の臨時オペはサプライズだった。日銀が本格的にイールドカーブを押し下げる動きをみせてきたことで、金利スティープ化に応じたポジションをとっていた投資家にとっては絶好の利益確定タイミングとなった」(野村証券のチーフ金利ストラテジスト、中島武信氏)との声が出ていた。

インフレ高進を背景に海外金利が再び上昇すれば、円金利にも上昇圧力が高まる可能性があるが、日銀は朝方に発表したオペ発表文の中で「今後も市場の動向などを踏まえつつ、必要に応じオファー日程の追加およびオファー金額の増額を実施する」としている。

JPモルガン証券の債券調査部長、山脇貴史氏は、あす31日午後5時に日銀が発表する4─6月期の国債買い入れ予定で、1回あたりのオファー額や回数が増額される可能性があるとみている。「2022年度に日銀の保有国債は64兆円程度が償還を迎える。オペをある程度増やしても金融正常化に支障は出ない」という。

市場の反応で意外感があったのは、円高が進んだことだ。ドル/円は一時、121円前半まで水準を下げ、前日の東京終盤から約2円近い下落となった。日銀がオペ増額などで金利上昇抑制に動けば、金融緩和姿勢が強調され円安材料になるとの予想が出ていたが、逆に円高方向での反応となった。

米長期金利の低下や逆イールド化などドル安材料もあったが、市場では「日銀の動きと円売りを組み合わせていたのは投機的な売買で、その一部が巻き戻されたようだ」(外資系証券)との見方が出ていた。

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