繰り返す人種差別の歴史=米、トランプ政権下で分断加速-強制収容の日系人が警鐘

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【ワシントン時事】米政府が第2次大戦中の日系人強制収容の過ちを認め、公式に謝罪した「市民の自由法」成立から10日で30年。日本人の血を引くという理由だけで「敵性外国人」のレッテルを貼られ、仕事や財産を奪われた日系人。その差別の歴史は、トランプ政権下で繰り返されつつある。「二度とないように」。元収容者の切実な願いは、人種・民族の分断が加速する米社会にむなしく響く。

◇有刺鉄線からの解放

対向車のほとんどない一本道の両脇には、見渡す限りトウモロコシが青々とした葉を茂らせていた。米東部ニュージャージー州にある人口約4万6000人の町シーブルック。「今も多くの日系人が暮らしているんですよ」。日系3世のスタンリー・カネシキさん(82)は笑顔を見せる。

大戦末期、徴兵で働き手を失ったシーブルックの野菜加工工場は、日系人の元収容者を積極的に採用した。日系人約2300人が新たな生活を求めて移住。欧州や中南米からも多くの移民が集まった。

1日12時間労働で、時給は35~50セント。「風呂やトイレは共用で、居住環境は収容所と大差なかった」とカネシキさん。それでも「有刺鉄線の囲いから解放された自由は何物にも代え難かった」と振り返る。

◇強まる移民規制

レーガン元大統領は1988年、市民の自由法に署名し、日系人の強制収容を「重大な過ち」と認めて謝罪。生存している元収容者に各2万ドルの補償金を支払った。

それから30年、米社会における強制収容の記憶は薄れつつある。トランプ大統領は一部イスラム圏の国民の入国を禁止。アフリカや中米諸国を「便所のような国」と侮蔑し、さらなる移民規制を模索する。こうした風潮は社会にも拡散し、ヘイトクライム(憎悪犯罪)は増加の一途をたどる。

日系3世のアイリーン・カネシキさん(78)は「日本に対する恐怖から日系人を一律に敵対視し、権利を剥奪した戦争中と同じだ」と指摘。「米国は移民で成り立つ国。シーブルックはその良い例だ」と語る。

◇政権の無関心

トランプ政権は2019会計年度予算教書で、日系人収容所跡地と米先住民墓地の保存事業に交付される補助金を廃止した。さらに、国定史跡の見直し・縮小も進める。

2015年に国定史跡に指定されたハワイ・オアフ島のホノウリウリ強制収容所も、将来の見直し対象になる可能性は否定できない。日系4世のハナブサ下院議員(民主党)は補助金廃止を「政権の宗教・人種差別に対する無関心さの表れだ」と批判する。

首都ワシントンの連邦議会議事堂近くの公園には、2羽の鶴が自由を求め、体に巻き付いた有刺鉄線から脱しようともがく様子を表現した高さ約4メートルの銅像がある。日系人収容の歴史を伝える記念碑だ。

日系の故ダニエル・イノウエ元上院議員の言葉も刻まれている。「いかなる人々に対しても二度と起きてはならぬことの教訓として引き継いでいかなければならない」。

第2次大戦中、米ハワイ州オアフ島にあったホノウリウリ強制収容所の跡地。同収容所は2015年に国定史跡に指定された=17年8月

米日系人強制収容所について語るスタンリー・カネシキさん(右)とアイリーン・カネシキさん=2日、東部ニュージャージー州シーブルック

2000年に除幕された第2次大戦中の米日系人強制収容所の歴史を伝える記念碑=8日、ワシントン

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