天草を「イルカの聖地」に=研究・観光振興でラボ設立-東京から移住の女性・熊本

社会

熊本県天草市の通詞島沖には200頭近いミナミバンドウイルカが生息しているとされ、遭遇率が高いイルカウオッチングが人気だ。東京都出身の看護師高崎ひろみさん(40)は天草のイルカに魅せられて移住。生態研究や観光振興の拠点にしようと今夏、島内に「天草イルカラボ」を設立した。「世界にアピールできる『イルカの聖地天草』を創造したい」と意気込む。

「物心ついたころからイルカが好きだった」。高崎さんは、高校時代には米フロリダ州のイルカ保護・飼育施設「ドルフィン・リサーチ・センター」のプログラムを受講し生態などを学んだ。伊豆諸島、バハマ、ハワイなど国内外でイルカを見てきたが、周囲約4キロ、人口約550人の小さな漁業の島、通詞島を2015年に訪れ、衝撃を受けた。「通詞島のイルカウオッチングではほぼ毎回、出航後すぐ野生の群れに会える。こんな場所は世界的にもない」。昨年、同島に移住した。

イルカウオッチングのガイドの傍ら、今年7月にウオッチング業者やIT専門家など7人を集めラボを設立した。「持続可能なドルフィンレジャーの実現」を目指している。

同島沖のイルカウオッチング客は年約8万人に上るが、高崎さんはただイルカを見るだけの現在のスタイルを「魅力を生かし切れていない」と考える。「乗船前にイルカの生態をレクチャーしたり、周囲の島を巡るツアーと組み合わせたりすればリピーター客増加につながる」

ラボではまず通年の個体識別調査を行い、正確な生息数や増減を確認する。通常は撮影した写真で背びれの形から各個体を判別するが、船に設置したカメラで動画撮影し自動的に識別するソフトウエアの導入なども検討している。

ウオッチングでは、イルカに接近する距離など明確な取り決めがない。10隻もの船が群れを追うこともあり、ネット上には「イルカがかわいそう」といった声もある。このため、ラボでの研究成果を反映させ説得力を持たせた業者向けガイドラインの作成やガイド養成も計画する。

高崎さんは「通詞島は素潜り漁が中心で、漁師はイルカを邪魔者とせずに共生を維持してきた。ラボを通じて、自然と人間が共存する特別な場所、天草を世界に発信していきたい」と夢を膨らませる。

熊本県天草市の通詞島沖に生息するミナミバンドウイルカ(天草イルカラボ提供)

イルカウオッチングでガイドをする「天草イルカラボ」を設立した高崎ひろみさん=7月29日、熊本県天草市

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