安倍首相、「2島先行」へかじ=日ソ共同宣言手掛かり-ロシアと立場に隔たり

政治・外交

安倍晋三首相は14日のプーチン・ロシア大統領との首脳会談で、1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結交渉を加速させることで合意した。歯舞、色丹2島引き渡しを明記した共同宣言を軸に据え、「2島先行返還」に事実上、かじを切った形だ。プーチン氏とのわずかな接点を手掛かりに、北方領土交渉の進展を狙うが、ロシアとの立場の隔たりは依然大きく、首相の思惑通りに進むかは不透明だ。

「2島は確実に取り戻す、ということだ」。政府関係者は15日、両首脳の合意について、こう解説した。

日ソ共同宣言は、国会と旧ソ連の議会で批准されており、ソ連を継承したロシアにも法的拘束力が及ぶことはプーチン氏も認めている。平和条約締結後に「歯舞群島、色丹島を日本に引き渡す」と明記する一方、国後、択捉両島についての記述はない。今回の合意について、政界では2島先行返還との受け止めが大勢だ。

日本政府の最終目標はあくまで4島返還。菅義偉官房長官は15日の記者会見で、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの方針を明記した1993年の東京宣言の有効性に関し、「14日の首脳会談で、そのことが変更されることはない」と断言した。

だが、プーチン氏がたびたび日ソ共同宣言に言及するのは、歯舞、色丹返還が最大限の譲歩という姿勢の表れとの見方が日本政府内では根強い。政府高官は「択捉、国後にも人が住んでいる。返すわけがない」との見方を示した。仮に2島返還で合意した場合、ロシア側が「北方領土問題は決着した」と主張し、それ以上の領土交渉を拒む可能性は高い。

そもそも2島返還すら容易でないと悲観的に見る向きもある。プーチン氏は「どちらの主権下に置かれるかは(共同宣言に)書かれていない」と指摘してきており、15日には2島の主権が今後の交渉対象になるとの認識を示した。ロシアは第2次世界大戦の結果として、4島の主権を獲得したとの立場で、日本への「返還」とは認めていない。

さらに交渉を複雑にするのが米国の存在だ。プーチン氏は返還後に在日米軍基地が置かれることを警戒している。首相は9月に民放番組で「安全保障上の問題についても議論しなければいけない。われわれはとうとう、そこに入ってきている」と語っているが、交渉過程で米ロの板挟みになる恐れは否定できない。

首相はプーチン氏との会談後、「私と大統領の手で必ずや終止符を打つという強い意志を完全に共有した」と力説。自民党総裁としての任期が切れる2021年9月までに平和条約を締結するため、リスクをいとわないとの決意をにじませた。11月末からアルゼンチンで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議の機会や年明けの訪ロで交渉を促進する方針だ。

これに対し、「4島返還から、ぶれてはならない」(自民党の閣僚経験者)とくぎを刺す声は与野党を問わず上がっている。首相は「戦後外交の総決算」に向け、世論にらみの難しいかじ取りを迫られる。

[Copyright The Jiji Press, Ltd.]

時事通信ニュース 外交 ロシア